10 / 1,627
69~77
しおりを挟む
【69.退屈は】
「魔王は普段、何をしているの?」
「何って?」
「ここのずっと居て退屈しないのかな? って」
「しないな。する事は一杯だ」
好み漫画を読み尽くそうとするだけでも10年は優に掛かる。小説やゲームもまた然りだ。
さすがの魔王でもそればかりでは飽きるので、ぼんやりお茶を飲むのも必要だ。
退屈する暇は無い。
「うみゅ……」
話を聞いたオリエの口が波打った。
【70.最初は積み木】
もう随分前のこと。魔王がその世界を見付けて最初に手にしたのはおもちゃやパズルだった。これなら説明書を読めなくても大丈夫。
しかし説明されなければ使い方が判らないものも多い。現物を見ただけの魔王独りにできる事は限られている。
積み木。
「立派なお城が出来たぞー。だから何?」
ゴムボール。
「投げて取って……、単調だ……」
ジグソーパズル。
「……1つ仕上がったらもう十分だな」
早々に飽きてしまった。
【71.ゲーム筐体】
パズルなんかの単純なものには飽きた。そこで魔王は現地人目線で町を散策中に見付けていたゲームセンターに視線を落とす。そしてゲームマシンをコピーした。これならコインを入れて、レバーやボタンを動かせば良いだけだ。
ところが。
「動かん……」
ゲームマシンがウンともスンとも言わない。電源が入っていないから当然だが、この時の魔王には判らなかった。
【72.電源】
ゲームマシンが動かなかったからと言って、魔王は一度では諦めなかった。こんなこともあろうかと今まで複雑そうなものを避けていて、今回その通りになっただけなのだ。
魔王はゲームマシンが動いている様子をつぶさに観察した。
そして発見した。何かのケーブルの先に付けられたプラグが壁のコンセントに差し込まれている。
魔王はコンセントをコピーして壁に取り付けた。電気? この時の魔王はそんなもの知らない。
「動かん……」
【73.言葉】
魔王は一念発起して異世界の言葉の勉強を始めた。人の記憶だけコピーして自分に取り込むような都合の良いことはできないため、地道な努力が必要だ。
だから外国人向けの会話教室を梯子して集中的に行った。
「こなんちゃ」
魔王は発声は諦めた。聞き取りと読書さえできればいいのだ。
しかし発声した方が単語を憶えやすいのもまた事実。
「こばんちん」
本当に憶えやすいのか不安になった。
【74.面白いの?】
苦労はあったが、魔王は異世界の言葉をマスターした。電気も使えるようになり、漫画や小説を読むのも、アニメを見たり、テレビゲームをしたりするのも思いのままだ。
「その漫画って、面白いの?」
「面白いぞ」
魔王は手許の漫画をオリエに手渡した。
しかしオリエには文字が読めない。文字が読めなければ話が解らないので面白いかどうかも判らない。
「うみゅ……」
オリエの口が波打った。
【75.落ちゲー】
魔王はテレビゲーム一式をコピーした。接続して、文字が判らなくてもできる所謂落ちゲーのカセットを差し込んで準備を整える。
「ゲームでもやってみろ」
「ええっ!?」
魔王は及び腰のオリエに一つ一つ操作方法を教える。細かいルールは動かしながら憶えれば良いと、基本だけを教えた。
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「ふぁっ!」
瞬く間にオリエの目は真剣だ。
【76.没頭】
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「ふぁっ! このっ!」
パッパラピー。
「ああっ!」
ピコピコ全裸でゲームをし続けるオリエの姿はシュールだ。
しかしここにはオリエの姿に何かを感じる者は居ない。
「飯だゾ」
「もうちょっと待って!」
「さっきも言ったゾ」
シェフも呆れ顔だ。
骸骨だから判らないけど。
【77.サンドイッチ】
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「やった!」
オリエはゲームに熱中したままだ。
「しようのない奴ダ」
シェフは厨房に戻ってサンドイッチを拵えて来たら、オリエの口に押し込んだ。
ムグモゴ、ゴクン。
口と喉だけが動いた。
シェフはまたサンドイッチをオリエの口に押し込む。
世話焼きさんだった。
「魔王は普段、何をしているの?」
「何って?」
「ここのずっと居て退屈しないのかな? って」
「しないな。する事は一杯だ」
好み漫画を読み尽くそうとするだけでも10年は優に掛かる。小説やゲームもまた然りだ。
さすがの魔王でもそればかりでは飽きるので、ぼんやりお茶を飲むのも必要だ。
退屈する暇は無い。
「うみゅ……」
話を聞いたオリエの口が波打った。
【70.最初は積み木】
もう随分前のこと。魔王がその世界を見付けて最初に手にしたのはおもちゃやパズルだった。これなら説明書を読めなくても大丈夫。
しかし説明されなければ使い方が判らないものも多い。現物を見ただけの魔王独りにできる事は限られている。
積み木。
「立派なお城が出来たぞー。だから何?」
ゴムボール。
「投げて取って……、単調だ……」
ジグソーパズル。
「……1つ仕上がったらもう十分だな」
早々に飽きてしまった。
【71.ゲーム筐体】
パズルなんかの単純なものには飽きた。そこで魔王は現地人目線で町を散策中に見付けていたゲームセンターに視線を落とす。そしてゲームマシンをコピーした。これならコインを入れて、レバーやボタンを動かせば良いだけだ。
ところが。
「動かん……」
ゲームマシンがウンともスンとも言わない。電源が入っていないから当然だが、この時の魔王には判らなかった。
【72.電源】
ゲームマシンが動かなかったからと言って、魔王は一度では諦めなかった。こんなこともあろうかと今まで複雑そうなものを避けていて、今回その通りになっただけなのだ。
魔王はゲームマシンが動いている様子をつぶさに観察した。
そして発見した。何かのケーブルの先に付けられたプラグが壁のコンセントに差し込まれている。
魔王はコンセントをコピーして壁に取り付けた。電気? この時の魔王はそんなもの知らない。
「動かん……」
【73.言葉】
魔王は一念発起して異世界の言葉の勉強を始めた。人の記憶だけコピーして自分に取り込むような都合の良いことはできないため、地道な努力が必要だ。
だから外国人向けの会話教室を梯子して集中的に行った。
「こなんちゃ」
魔王は発声は諦めた。聞き取りと読書さえできればいいのだ。
しかし発声した方が単語を憶えやすいのもまた事実。
「こばんちん」
本当に憶えやすいのか不安になった。
【74.面白いの?】
苦労はあったが、魔王は異世界の言葉をマスターした。電気も使えるようになり、漫画や小説を読むのも、アニメを見たり、テレビゲームをしたりするのも思いのままだ。
「その漫画って、面白いの?」
「面白いぞ」
魔王は手許の漫画をオリエに手渡した。
しかしオリエには文字が読めない。文字が読めなければ話が解らないので面白いかどうかも判らない。
「うみゅ……」
オリエの口が波打った。
【75.落ちゲー】
魔王はテレビゲーム一式をコピーした。接続して、文字が判らなくてもできる所謂落ちゲーのカセットを差し込んで準備を整える。
「ゲームでもやってみろ」
「ええっ!?」
魔王は及び腰のオリエに一つ一つ操作方法を教える。細かいルールは動かしながら憶えれば良いと、基本だけを教えた。
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「ふぁっ!」
瞬く間にオリエの目は真剣だ。
【76.没頭】
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「ふぁっ! このっ!」
パッパラピー。
「ああっ!」
ピコピコ全裸でゲームをし続けるオリエの姿はシュールだ。
しかしここにはオリエの姿に何かを感じる者は居ない。
「飯だゾ」
「もうちょっと待って!」
「さっきも言ったゾ」
シェフも呆れ顔だ。
骸骨だから判らないけど。
【77.サンドイッチ】
ピコピコピコ、ピッ! ピコピコピコ、ピャヤーン!
「やった!」
オリエはゲームに熱中したままだ。
「しようのない奴ダ」
シェフは厨房に戻ってサンドイッチを拵えて来たら、オリエの口に押し込んだ。
ムグモゴ、ゴクン。
口と喉だけが動いた。
シェフはまたサンドイッチをオリエの口に押し込む。
世話焼きさんだった。
10
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる