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584 身動き
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「あっぶねー」
ザネクは大きく安堵の息を吐いた。だがただでさえ狭く展開した『大盾』の中。身動きできなくなってしまった。
「助かったけど、どうすんの、これ?」
「下手に『大盾』を解除したら廻りから倒れ込んで来そうだからな……」
多数の折れた石の槍が『大盾』に寄り掛かった状態で止まっている。『大盾』を解除、あるいは動かそうとして破壊されたら一斉に倒れ掛かって来そうで、迂闊に解除できない。
脱出を急がなければならなくても、近付いて来るタイラクを頼るのが最善だと思われた。
ところがそのタイラクも進むのに難儀している。石の槍を一本斬れば、それを支えにしていた別の石の槍がずり下がって前を塞ぐ。斬るのは難しくないが、一歩進むのに石の槍を何本も斬らなければならなくて時間が掛かる。
そして早くもその時間を掛けていられなくなった。
魔物が自ら生み出した石の槍を踏み潰しながら追って来る。タイラクがザネクの許に到着するより早く追い付かれそうだ。
「ルキアス君、止まってくれたまえよ!」
後方を確認していたフヨヨンが鋭く叫んだ。ルキアスは『傘』を急停止させる。
「魔物がタイラクの方に行ってしまったらしくてね、いくらタイラクでも初見であれは大変だから牽制くらいはしてあげないとなんだよ。だから、引き返してくれたまえよ」
「タイラクさんが!?」
ルキアスは『傘』の操縦に専念していて行き違ったのを見逃していた。フヨヨンはタイラクとだけ言ったが、近くにはザネクやシャルウィも居る筈で、ルキアスとしても放ってはおけない。急いで反転して『傘』を飛ばす。
そして問題の丁字路の近くまで行くと、石の槍が回廊を埋めていた。
「猶予が無いかも知れないから派手に行くよ」
フヨヨンが『収納』から指一本程度の大きさの筒のような魔道具を一〇本取り出して頭上にばらまくと、魔道具はフヨヨンの右肩から左肩まで円弧を描くように均一な間隔で宙に浮いた。
「『行け』!」
魔道具は発射の合図で一斉に『爆裂魔法』を放ち、石の槍を破砕して行く。あたかも一〇本の魔道具それぞれが意思を持っているかのように縦横に魔法を放っている。
そしてルキアスが『傘』を丁字路へと浸入させた時、魔物が牙も剥き出しにタイラクへと振り下ろそうとしていた。
ザネクは大きく安堵の息を吐いた。だがただでさえ狭く展開した『大盾』の中。身動きできなくなってしまった。
「助かったけど、どうすんの、これ?」
「下手に『大盾』を解除したら廻りから倒れ込んで来そうだからな……」
多数の折れた石の槍が『大盾』に寄り掛かった状態で止まっている。『大盾』を解除、あるいは動かそうとして破壊されたら一斉に倒れ掛かって来そうで、迂闊に解除できない。
脱出を急がなければならなくても、近付いて来るタイラクを頼るのが最善だと思われた。
ところがそのタイラクも進むのに難儀している。石の槍を一本斬れば、それを支えにしていた別の石の槍がずり下がって前を塞ぐ。斬るのは難しくないが、一歩進むのに石の槍を何本も斬らなければならなくて時間が掛かる。
そして早くもその時間を掛けていられなくなった。
魔物が自ら生み出した石の槍を踏み潰しながら追って来る。タイラクがザネクの許に到着するより早く追い付かれそうだ。
「ルキアス君、止まってくれたまえよ!」
後方を確認していたフヨヨンが鋭く叫んだ。ルキアスは『傘』を急停止させる。
「魔物がタイラクの方に行ってしまったらしくてね、いくらタイラクでも初見であれは大変だから牽制くらいはしてあげないとなんだよ。だから、引き返してくれたまえよ」
「タイラクさんが!?」
ルキアスは『傘』の操縦に専念していて行き違ったのを見逃していた。フヨヨンはタイラクとだけ言ったが、近くにはザネクやシャルウィも居る筈で、ルキアスとしても放ってはおけない。急いで反転して『傘』を飛ばす。
そして問題の丁字路の近くまで行くと、石の槍が回廊を埋めていた。
「猶予が無いかも知れないから派手に行くよ」
フヨヨンが『収納』から指一本程度の大きさの筒のような魔道具を一〇本取り出して頭上にばらまくと、魔道具はフヨヨンの右肩から左肩まで円弧を描くように均一な間隔で宙に浮いた。
「『行け』!」
魔道具は発射の合図で一斉に『爆裂魔法』を放ち、石の槍を破砕して行く。あたかも一〇本の魔道具それぞれが意思を持っているかのように縦横に魔法を放っている。
そしてルキアスが『傘』を丁字路へと浸入させた時、魔物が牙も剥き出しにタイラクへと振り下ろそうとしていた。
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