生活魔法は万能です

浜柔

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557 パンパン

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 ルキアスは探索を休み、自室でアダマントを『捏ね』る。
 フヨヨンも探索を休んで工房の準備と設計図の作図だ。一部のパーツは事前に試作する。試作の結果は銃本体の設計に反映させ、また一部のパーツは再試作する。
 この試作品は出来が良ければそのまま実機へと組み込まれる。アダマントでなくても良いパーツであればこれが可能なのだ。例えばマズルブレーキ。これは鋼鉄でも耐えられる。グリップに至っては握りやすさを考慮したなら木製となる。
 メイナーダはルキアスが自室に残るならと探索を休む。リザード先生肉もまだまだ残っているので夕食に向けた料理もする予定だ。
 すると残るのはタイラク、ザネク、シャルウィの三人。シャルウィが「三人だけだからまたお休みにする?」と提案したものの、ルキアスの作業が一週間程度掛かると判ると、タイラクが「幾ら何でも退屈だ」と言うので、結局三人で探索することとなった。

「ちょっと待って! 速すぎて魔石を拾いきれないから!」

 シャルウィはさくさく魔物を倒しながら前に進むタイラクとザネクに向けて悲鳴を上げた。

「魔石のある辺りを斬ってるんだから、取り易いだろ?」
「そこもあれよ! 真っ二つにしないで欲しいんだけど!」

 今進んでいる階層に出る魔物は大きさが人とそう変わらず、剣の刃渡りを十分に生かせば両断可能だ。タイラクは元より、剣を新調したザネクも意識するまでもなく一振りで魔物を両断してしまう。
 しかしこの時に切る位置、切る方向までは揃えられない。縦の場合もあれば横の場合もあり、斜めの場合もある。両断されたどちらに魔石が含まれるかはその時次第だし、魔石が床に落ちてしまうこともある。これでは原形を保っている時のような「大体ここ」と言う決め打ちで探ることができない。
 厄介なのは内臓と血。魔物はダンジョンの魔力で生きていて何も食べないのだが、肉体の構造は食物を食べて生きている動物と変わりがない。類似の動物が居ない魔物でも同様だ。この内臓や血がぶち撒かれた中に魔石が紛れれば探すのに手間取ってしまう。

「それでも毎度切りながら魔石を探すより楽じゃないか?」
「それがね! この棒、試してみたら切れるのよ。それはもうスパッと!」

 シャルウィはルキアスに『捏ね』て貰った箸のような棒を掲げて見せる。ザネクの剣が鈍器のような風情でありながら切れ味抜群ならもしかしてこれもと試してみれば、切れたと言う。

「「マジ?」」

 タイラクとザネクの声は揃った。
 ただそんな話はしたものの、シャルウィが最も辛いのは座ったり立ったりを繰り返さなければならないことだった。
 延々スクワットをするようなものだから脚がパンパンである。
 あまりに辛そうな様子を見せるようになったため、タイラクとザネクは少しペースを落とした。
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