生活魔法は万能です

浜柔

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349 再戦

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 打ち合わせを終え、ルキアスとネナイトはボスに再挑戦だ。今度は『傘』に乗るのはルキアスだけで、ネナイトは歩いて部屋に入る。一〇歩ばかり入った所でボスが動き出した。

「やべっ!」

 ネナイトが床ギリギリを飛んでいたルキアスの『傘』に慌てて乗り込み、ルキアスが急いで『傘』を上昇させる。その直ぐ下を転がるボスが通過した。ボスは勢い余って部屋から飛び出ないようにか、緩く弧を描いて転がっていた。もしも真っ直ぐ襲って来ていれば回避が間に合わなかった可能性すらある。

「危な! 殆ど余裕が無かったよ」
「ボスの反応も早すぎた。いつもより早かったぞ」
「でもこれで一安心だね」
「ああ。ルキアス打ち合わせ通り頼むぜ」
「うん」

 ルキアスは銃を取り出した。ちょっとした検証のため、床に足を付けずに部屋に入ったルキアスが先に攻撃を仕掛けてみる。
 ボスは空を飛ぶルキアス達を攻撃する手段を持たないからか、動かなくなっている。そのボスに狙いを付け、引き金を引く。
 額に命中。ところが弾丸はキンと甲高い音を残して床を点々と転がった。

「あれ?」

 続けて二射目、三射目を胸に撃ち込むが結果は同じだ。

「いつもはめり込んでたのに……」

 いつものボス戦では角度の都合かで幾らか弾かれながらも大半はボスの身体にめり込むのだ。甲高い音もしない。今回は明らかに特殊な成り行きであった。

「次は俺だ」

 ネナイトが小手試し程度の魔法を放つ。命中した魔法はボスに幾らかのダメージを与えた。

「デナンの読み通りだったって訳だ」

 デナンはボス部屋に入る際に床に足を付けるか付けないかが攻撃の通る通らないのスイッチになっていると予想した。
 こう予想したのは攻撃を仕掛けるのを部屋に入ってからにしているそもそもの理由を思い出したからだ。部屋の外からでは幾ら強力な魔法や弓矢で攻撃しても全くダメージを与えられないのだ。

「こんなの、もしもぼく一人で挑戦してたら全く倒せないまま弾丸を無駄にするだけだったよ」

 『傘』に術者本人であるルキアスが乗るのには微妙な位置調整をしながらになるので、今以て尚それなりに時間が掛かる。ボス部屋に入ってから乗ろうとしても『傘』に乗れないまま逃げ出す羽目になるかも知れない。むしろ逃げられればマシな方だと考えると、もし一人で挑戦していたら『傘』に乗って入った筈だ。すると全く攻撃が通らないことになる。
 最初に予想したよりも難物だったことに溜め息を吐きたくなるルキアスだ。
 それはそれとして、検証は終わったので仕留めに行く。

「部屋をぐるっと回って、合図したら止めてくれ」

 ルキアスはネナイトの指示に従って『傘』を動かす。魔法も『傘』の真下には撃てないので、間合いを取るために必要なのだ。
 ネナイトが弱い魔法を放ってボスを誘き寄せ、次の魔法の準備をする。
 転がりながら『傘』を追っていたボスが止まるのを見計らい、ネナイトが壁に当たらないよう前方に集中しているルキアスの肩を叩く。ルキアスが直ぐに『傘』を止め、ネナイトが準備していた魔法を放つ。
 爆音。そして爆風。ボスは骸に変わった。
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