210 / 627
210 同じ場所
しおりを挟む
翌日は手始めに昨日宝箱の見付かった場所を巡回する。しかしまだ宝箱は復活していなかった。
「外れだった場所にまた来たってしょうがなくない?」
シャルウィは同じ場所に来たのを納得しがたいらしい。魔物を排除する時間、宝箱の在った場所を探る時間が無駄だと言う。
「宝箱って同じ場所にまた現れるんだよ。いつになるかはよく判らないけど」
「でも同じ場所だったら同じ物が出るんじゃないの?」
「出やすい出にくいはあっても毎回違うと思う」
第一階層から第三階層までは毎回違う品物だったことからすればこの階層も毎回違う筈だ。しかし魔法薬に限定されているらしきこの階層では違う物が出る余地が殆ど無い。
「だな。第三階層までを考えれば、ここなら最下級の魔法薬が多い筈だ」
ザネクは浅い階層は浅い階層なりの品質の品物が主になるとの推測を話した。第一階層から第三階層までの品々を魔法薬に対応させるなら最下級。だから魔法薬ばかりの第四階層の宝箱に入っているのは最下級が殆どだろう。推測なのはルキアスと二人で見た範囲でしか判断できないためだ。
「第三階層まで? 第三階層までに宝箱が在るなんて話聞いたこと無いんだけど?」
「それを言ったら第四階層だって無かったろ?」
「それはそうだけど……、でもどうして誰も知らないの? 逆にあんた達はどうして知ってるの?」
ザネクはルキアスを見た。ルキアスに「宝箱みたい」と言ったのはザネクだが、そのものに最初に気付いたのはルキアスだ。
「誰も知らないのは箱に入ってないガラクタにしか見えないものだからだと思うよ。折れた剣なんかがポツンと埋もれてるだけだから、誰かがもし見付けても落とし物か捨てられた物だと思うんじゃないかな。ぼくが気付いたのはぼくが鉄屑を集めてたからなんだ」
鉄屑を探し歩いて折れた剣などを拾った場所には二、三日の内にまた穴の空いた鍋やら単なる鉄の棒やらが転がっていた。それが何度も続けばさすがに異常に気付く。それをザネクに話した際に「宝箱みたい」と言われたことですとんと腑に落ちたのだ。
「はあ?」
シャルウィは心底意味が判らないと表情で現した。
しかし彼女が理解するまで説明するには長くなりそうだ。ルキアスの身の上から何から話す羽目にもなりかねない。今することではないだろう。
「説明してたら宝箱探しが遅れるけど大丈夫?」
「あ! 駄目よ! 早く次に行きましょう!」
シャルウィは宝箱探しを優先させた。
その甲斐あって、もしかしたらその甲斐もなく、新しく見付けた宝箱は二個だ。しかしいずれの中身も最下級の魔法薬。シャルウィはがっかり感を顔で表現した。
そんなシャルウィを見送りがてら地下一階の商店街を歩く途中、ルキアスは太股に衝撃を受けた。何度も感じた衝撃だ。
「ユア?」
「ん!」
予想通りにユアが太股にしがみついていた。ユアが居るならメイナーダも居る訳で。
「ルキアスちゃん、ちょうしはどう?」
「メイおばちゃん!?」
ルキアスが挨拶を返すより先に、シャルウィの裏返り気味の声が響いた。
「外れだった場所にまた来たってしょうがなくない?」
シャルウィは同じ場所に来たのを納得しがたいらしい。魔物を排除する時間、宝箱の在った場所を探る時間が無駄だと言う。
「宝箱って同じ場所にまた現れるんだよ。いつになるかはよく判らないけど」
「でも同じ場所だったら同じ物が出るんじゃないの?」
「出やすい出にくいはあっても毎回違うと思う」
第一階層から第三階層までは毎回違う品物だったことからすればこの階層も毎回違う筈だ。しかし魔法薬に限定されているらしきこの階層では違う物が出る余地が殆ど無い。
「だな。第三階層までを考えれば、ここなら最下級の魔法薬が多い筈だ」
ザネクは浅い階層は浅い階層なりの品質の品物が主になるとの推測を話した。第一階層から第三階層までの品々を魔法薬に対応させるなら最下級。だから魔法薬ばかりの第四階層の宝箱に入っているのは最下級が殆どだろう。推測なのはルキアスと二人で見た範囲でしか判断できないためだ。
「第三階層まで? 第三階層までに宝箱が在るなんて話聞いたこと無いんだけど?」
「それを言ったら第四階層だって無かったろ?」
「それはそうだけど……、でもどうして誰も知らないの? 逆にあんた達はどうして知ってるの?」
ザネクはルキアスを見た。ルキアスに「宝箱みたい」と言ったのはザネクだが、そのものに最初に気付いたのはルキアスだ。
「誰も知らないのは箱に入ってないガラクタにしか見えないものだからだと思うよ。折れた剣なんかがポツンと埋もれてるだけだから、誰かがもし見付けても落とし物か捨てられた物だと思うんじゃないかな。ぼくが気付いたのはぼくが鉄屑を集めてたからなんだ」
鉄屑を探し歩いて折れた剣などを拾った場所には二、三日の内にまた穴の空いた鍋やら単なる鉄の棒やらが転がっていた。それが何度も続けばさすがに異常に気付く。それをザネクに話した際に「宝箱みたい」と言われたことですとんと腑に落ちたのだ。
「はあ?」
シャルウィは心底意味が判らないと表情で現した。
しかし彼女が理解するまで説明するには長くなりそうだ。ルキアスの身の上から何から話す羽目にもなりかねない。今することではないだろう。
「説明してたら宝箱探しが遅れるけど大丈夫?」
「あ! 駄目よ! 早く次に行きましょう!」
シャルウィは宝箱探しを優先させた。
その甲斐あって、もしかしたらその甲斐もなく、新しく見付けた宝箱は二個だ。しかしいずれの中身も最下級の魔法薬。シャルウィはがっかり感を顔で表現した。
そんなシャルウィを見送りがてら地下一階の商店街を歩く途中、ルキアスは太股に衝撃を受けた。何度も感じた衝撃だ。
「ユア?」
「ん!」
予想通りにユアが太股にしがみついていた。ユアが居るならメイナーダも居る訳で。
「ルキアスちゃん、ちょうしはどう?」
「メイおばちゃん!?」
ルキアスが挨拶を返すより先に、シャルウィの裏返り気味の声が響いた。
11
お気に入りに追加
813
あなたにおすすめの小説
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。
コル
ファンタジー
大学生の藤代 良太。
彼は大学に行こうと家から出た瞬間、謎の光に包まれ、女神が居る場所へと転移していた。
そして、その女神から異世界を救ってほしいと頼まれる。
異世界物が好きな良太は二つ返事で承諾し、異世界へと転送された。
ところが、女神に転送された場所はなんと異世界の無人島だった。
その事実に絶望した良太だったが、異世界の無人島を生き抜く為に日ごろからネットで見ているサバイバル系の動画の内容を思い出しながら生活を開始する。
果たして良太は、この異世界の無人島を無事に過ごし脱出する事が出来るのか!?
※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる