生活魔法は万能です

浜柔

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210 同じ場所

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 翌日は手始めに昨日宝箱の見付かった場所を巡回する。しかしまだ宝箱は復活していなかった。

「外れだった場所にまた来たってしょうがなくない?」

 シャルウィは同じ場所に来たのを納得しがたいらしい。魔物を排除する時間、宝箱の在った場所を探る時間が無駄だと言う。

「宝箱って同じ場所にまた現れるんだよ。いつになるかはよく判らないけど」
「でも同じ場所だったら同じ物が出るんじゃないの?」
「出やすい出にくいはあっても毎回違うと思う」

 第一階層から第三階層までは毎回違う品物だったことからすればこの階層も毎回違う筈だ。しかし魔法薬に限定されているらしきこの階層では違う物が出る余地が殆ど無い。

「だな。第三階層までを考えれば、ここなら最下級の魔法薬が多い筈だ」

 ザネクは浅い階層は浅い階層なりの品質の品物が主になるとの推測を話した。第一階層から第三階層までの品々を魔法薬に対応させるなら最下級。だから魔法薬ばかりの第四階層の宝箱に入っているのは最下級が殆どだろう。推測なのはルキアスと二人で見た範囲でしか判断できないためだ。

「第三階層まで? 第三階層までに宝箱が在るなんて話聞いたこと無いんだけど?」
「それを言ったら第四階層だって無かったろ?」
「それはそうだけど……、でもどうして誰も知らないの? 逆にあんた達はどうして知ってるの?」

 ザネクはルキアスを見た。ルキアスに「宝箱みたい」と言ったのはザネクだが、そのものに最初に気付いたのはルキアスだ。

「誰も知らないのは箱に入ってないガラクタにしか見えないものだからだと思うよ。折れた剣なんかがポツンと埋もれてるだけだから、誰かがもし見付けても落とし物か捨てられた物だと思うんじゃないかな。ぼくが気付いたのはぼくが鉄屑を集めてたからなんだ」

 鉄屑を探し歩いて折れた剣などを拾った場所には二、三日の内にまた穴の空いた鍋やら単なる鉄の棒やらが転がっていた。それが何度も続けばさすがに異常に気付く。それをザネクに話した際に「宝箱みたい」と言われたことですとんと腑に落ちたのだ。

「はあ?」

 シャルウィは心底意味が判らないと表情で現した。
 しかし彼女が理解するまで説明するには長くなりそうだ。ルキアスの身の上から何から話す羽目にもなりかねない。今することではないだろう。

「説明してたら宝箱探しが遅れるけど大丈夫?」
「あ! 駄目よ! 早く次に行きましょう!」

 シャルウィは宝箱探しを優先させた。
 その甲斐あって、もしかしたらその甲斐もなく、新しく見付けた宝箱は二個だ。しかしいずれの中身も最下級の魔法薬。シャルウィはがっかり感を顔で表現した。
 そんなシャルウィを見送りがてら地下一階の商店街を歩く途中、ルキアスは太股に衝撃を受けた。何度も感じた衝撃だ。

「ユア?」
「ん!」

 予想通りにユアが太股にしがみついていた。ユアが居るならメイナーダも居る訳で。

「ルキアスちゃん、ちょうしはどう?」
「メイおばちゃん!?」

 ルキアスが挨拶を返すより先に、シャルウィの裏返り気味の声が響いた。
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