失声の歌

涼雅

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目覚めの悪い朝

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不意に目が覚める

頭がズキズキと痛いのは、泣いたせいだろう

雨に濡れたまま寝たせいもあるかもしれない

心地よい目覚めとは程遠い朝を迎えた

昨日、どうやって家に帰ってきたのかいまいち覚えていない

手が所々切れていたり擦れているから、ふらふらしながら森をぬけたのだろう

髪はまだ、しっとりと雨に濡れていた

ゆっくりとベッドから起き上がるけれど、立ち上がる気にはなれなくて、そのままベッドの上に座りこんだ

あんなことがあった日の翌日は休み

羊飼いは3人程度で羊を追いかけ回す様な仕事だ

羊飼い3人程度を1グループとして日によって交代交代で羊の面倒を見ている

今日は俺のグループは休みの日

だから今日はお休み。

休みの日は元々彼の元へ通っていなかったから、今日行かなくても何も不自然ではない

……早く、誤解を解いた方がいいんだろうけど。

そんなこと分かっているけど、いまの俺には言葉を伝える手段はなくて。

伝わらない言葉を伝える気にもならなくて。

いつも離さず持っていた物を捨ててしまった、拭えない虚無感に浸っていた

「……あ"ぁ………」

汚い

長らく出していなかった唯一の声

母音だけなら出せるけど、それだけでは会話はできない

前よりも歪んで聞こえる俺の声に顔を顰める

喉がヒクヒクと痙攣して、引き攣るような痛みが走った

嗚咽を出せずに、ただ息を荒く吸って吐くだけ

苦しい

頬を伝う涙はぽたりぽたり、とシーツにシミを作る

なんで泣いているんだろう

理由も分からないままひたすらに雫を流し続けた

…彼は、風邪を引いてはいないだろうか

不要な心配だと分かっていてもそう考えてしまった


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