普通を貴方へ

予定

『次、予定空いてる時ある？』

気まずくなってしまった彼から夜に連絡が来た

連絡をしてくれるのは毎回雅空さん。

もっと話したいくせに、この前のことで引け目を感じて、連絡をしていなかった

でも、もう気にしない！

そう決めたのだから。意気込むようにスマホを開いた

『明日学校行ったら休み入ります！』

そう、明日さえ行けば長期休み

びっくりするほど長い休養はこれまた驚くほど予定がない

あるとすれば、明との楽器合わせとか遊びに行くとか。

あとは、そうだね、一人暮らしだからバイトとか。

僕の予定表には明の勝手なイメージカラーの赤と、何も書いてない空白の白。

…あとは行きたくないけど行かなくてはいけないドロドロした紫色のバイト、とか。

『あ、ほんと？よかったね』

即答される文章のシンプルさがとても彼らしくて。

『休みに入ればほぼ予定空いてます』

自分で言っていてちょっと悲しくなる

でも予定がないことはいいことだ。

ゆっくりできる。

…怠けちゃうけど。

『俺の予定が空いてる日送るから、舞桜も大丈夫な日教えてくれない？』

完全に俺の都合になっちゃうけど大丈夫？と、こちらを気遣う言葉も送られてきて優しさを感じる

そういうところですよ、ほんとに。

『全然大丈夫です！』

黒い霧を振り切って頭の上で大きく丸を作る動物のスタンプを送る

すぐに付く既読の2文字は彼が几帳面な人だということがありありと伝わる

『ごめんね、ありがと

　スケジュール後で送るからよろしく』

まだ確定していない次を楽しみに出来ているのは、きっと明のお陰でもあるんだろうなぁって。

差程時間が経たないうちに雅空さんからまた連絡が来ていた

連絡が来るまでの間、今度明と合わせる歌の練習をしていたため、連絡に気がつくのが遅くなってしまった

数字が羅列されている吹き出しは、見やすいようにまとめられていた

…おぉ、運命じゃん

雅空さんから送られてきた日時はほぼ全部予定の無い日ばかりで、思わず運命を感じた

…なんだ運命感じたって。脳内お花畑かよ

ニヤけた顔からスンと真顔に治し、辛辣なツッコミを自分にしたあと、適度な間隔をあけた日時を送り返した

間隔をあけたつもりだったが、いざ文字に起こすと結構候補が多く、「あぁ、自分ってほんとに暇人なんだな」なんて思うのは本日二回目。

バイトは2つ掛け持ちでどちらも日中だから、バイトの入っている日は遊べない

くっそ…青春を謳歌したいよ…

中学、高校と部活に入っていなかったため、授業が終わった瞬間家に直行していた時代を振り返る

せめて、せめて部活に入ってたら青春を謳歌出来たのかな、なんて今更感の否めない思考回路を回す

でも、その思考も彼からの返信で直ぐにとまった

『おぉ、思ったより予定合うね』

爆発した。

文面でも分かる

雅空さんのウキウキしたような楽しみな顔が思わず脳裏を過った

自分の勝手な想像だとわかっているけれど、少しでも僕と会うことを楽しみにしてくれているのが嬉しかった

いくら前回のあの時気まずかったからと言って、彼と話したい、会いたいという気持ちが無くなる訳では無いのだ