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自覚
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夕方を過ぎた道で路頭に彷徨う
頭おかしいおかしいおかしい
ただそれだけの言葉しか頭を回らなくてどうすることも出来ない
暫く歩いていれば徐々に冷静になっていく頭
なんてことをしてしまったんだろうか
自分の行動を自覚した瞬間、急激に血の気が引いていく指先
冷たくなって震えてしまう
色んな感情が一気に押し寄せてきて、まともな思考が出来なくなった俺。
滅多に会えないであろう彼らに八つ当たりをした。
お門違いじゃん、まじで。
帰る、なんて言ったけどどこに?
俺が出ていった家は、もう帰りたいと思える場所じゃなくて。
もう帰る場所なんて無いんだ、って自覚する
「はぁ………やっちまった…」
自分に、失望する
…他に泊めてくれる人、いないかな
深優くん達にしたことを忘れたわけじゃないけど、もうあの2人には合わせる顔がない
そう思いながら切っていたスマホの電源をつける
かじかんだ指は思うように動かなくて、ひとつのボタンを押す動作ですらままならない
やっとのことで電源ボタンを押した
その瞬間振動するスマホ
画面に映し出されたのは「深優くん」の文字
深優くんから電話がかかってきていた
出るか出ないか、どうしようか。
悩んでいるうちに自然と切れる
どこか安堵していると再びかかってくる深優くんからの電話
流石にスルーすることも出来なくて、震える指でスワイプした
「…は、はい…」
『凪津さん?!今どこや!』
まるで走っているかのような息の乱れに申し訳なる
「え、いや、別に……」
答えになってない言葉を返すと少し遠いところで華琉の声も微かに聞こえた
『迎えに行くから!』
力強い深優くんの声に息が詰まる
「っ!……いや、いいよ、ごめん他の人のとこに泊めてもらえることになったから…身勝手でごめんね」
やっぱりまだ会いたくなくて、嘘をついた
『…誰の家に、泊まるん』
怒っているような声にぴた、と喉が固まる
あ、やばい名前、出さないと
誰でもいいから、名前出さないと
焦る俺は自分の失言に気が付けない
「こうじ…」
大学時代の友人の名前を出す
『こうじさんは今家にいませんよ』
しかし華琉にそう即答される
「っ?!」
『嘘つくん、やめてもらえます?』
喉が渇いてヒリヒリする
2人とも怒ってる
それがとてつもなく怖くなって、ひっ、と声が震えた
「う、そじゃな…」
『嘘やん。凪津くん、「帰る」って言ってはったよね?』
……あ、そうだった、「帰る」って、言ったんだ
華琉に指摘されてから気が付いてももう遅い
「帰る」ばすだったのに「泊めてもらう」ことになっているのはおかしい
追い打ちをかけるように華琉は言葉を繋げた
『こうじさんは今、旅行行ってますよ』
先輩の名前を必死に探し出して口にする
「あぅ、優空さん…」
『優空さんは連絡来てないんやって』
またもや否定され、後輩の名前も口にした
「か、かず…」
『かずくんは友人達とおりますよ?』
崖に追い詰められる
俺が名前を出す度に『嘘だ』と切り捨てられる
俺が何かを言うほど自分自身を追い詰めている
なんで、なんで…?
『手当り次第、思いつく限りの人に凪津くんから連絡あったか聞いたんですよ』
心を見透かしたような華琉の言葉に泣きそうになる
『はよ、どこにおるん?』
華琉と電話口を変わった優しい深優くんの声に、また涙が頬を伝った
冷たい。
冷たい感覚が頬を伝ってアスファルトに黒い点を残した
「…わかん、ない」
飛び出したはいいものの、当てもなかったから、どこに向かうわけでもなかった
だから、いまになって周りを見渡した
いつもの、見なれた景色に、ヒュッと喉が鳴った
『なに、どしたんっ…?』
「やだ、やだやだやだやだ」
俺がいるのは明輝との2人の家の近くの道で。
習慣付けられた俺の体は、無意識のうちに『帰る』と、ここに向かっていたんだ
その事実に悲しくなって「やだ」と繰り返した
『今から行くな』
俺がどこにいるのか察したような深優くんは一言そう言うと、華琉に声をかけてこちらに向かってくるようだ
俺は、というと1秒も長くこの場所に留まりたくなくて、来た道を辿るように歩を進めた
頭おかしいおかしいおかしい
ただそれだけの言葉しか頭を回らなくてどうすることも出来ない
暫く歩いていれば徐々に冷静になっていく頭
なんてことをしてしまったんだろうか
自分の行動を自覚した瞬間、急激に血の気が引いていく指先
冷たくなって震えてしまう
色んな感情が一気に押し寄せてきて、まともな思考が出来なくなった俺。
滅多に会えないであろう彼らに八つ当たりをした。
お門違いじゃん、まじで。
帰る、なんて言ったけどどこに?
俺が出ていった家は、もう帰りたいと思える場所じゃなくて。
もう帰る場所なんて無いんだ、って自覚する
「はぁ………やっちまった…」
自分に、失望する
…他に泊めてくれる人、いないかな
深優くん達にしたことを忘れたわけじゃないけど、もうあの2人には合わせる顔がない
そう思いながら切っていたスマホの電源をつける
かじかんだ指は思うように動かなくて、ひとつのボタンを押す動作ですらままならない
やっとのことで電源ボタンを押した
その瞬間振動するスマホ
画面に映し出されたのは「深優くん」の文字
深優くんから電話がかかってきていた
出るか出ないか、どうしようか。
悩んでいるうちに自然と切れる
どこか安堵していると再びかかってくる深優くんからの電話
流石にスルーすることも出来なくて、震える指でスワイプした
「…は、はい…」
『凪津さん?!今どこや!』
まるで走っているかのような息の乱れに申し訳なる
「え、いや、別に……」
答えになってない言葉を返すと少し遠いところで華琉の声も微かに聞こえた
『迎えに行くから!』
力強い深優くんの声に息が詰まる
「っ!……いや、いいよ、ごめん他の人のとこに泊めてもらえることになったから…身勝手でごめんね」
やっぱりまだ会いたくなくて、嘘をついた
『…誰の家に、泊まるん』
怒っているような声にぴた、と喉が固まる
あ、やばい名前、出さないと
誰でもいいから、名前出さないと
焦る俺は自分の失言に気が付けない
「こうじ…」
大学時代の友人の名前を出す
『こうじさんは今家にいませんよ』
しかし華琉にそう即答される
「っ?!」
『嘘つくん、やめてもらえます?』
喉が渇いてヒリヒリする
2人とも怒ってる
それがとてつもなく怖くなって、ひっ、と声が震えた
「う、そじゃな…」
『嘘やん。凪津くん、「帰る」って言ってはったよね?』
……あ、そうだった、「帰る」って、言ったんだ
華琉に指摘されてから気が付いてももう遅い
「帰る」ばすだったのに「泊めてもらう」ことになっているのはおかしい
追い打ちをかけるように華琉は言葉を繋げた
『こうじさんは今、旅行行ってますよ』
先輩の名前を必死に探し出して口にする
「あぅ、優空さん…」
『優空さんは連絡来てないんやって』
またもや否定され、後輩の名前も口にした
「か、かず…」
『かずくんは友人達とおりますよ?』
崖に追い詰められる
俺が名前を出す度に『嘘だ』と切り捨てられる
俺が何かを言うほど自分自身を追い詰めている
なんで、なんで…?
『手当り次第、思いつく限りの人に凪津くんから連絡あったか聞いたんですよ』
心を見透かしたような華琉の言葉に泣きそうになる
『はよ、どこにおるん?』
華琉と電話口を変わった優しい深優くんの声に、また涙が頬を伝った
冷たい。
冷たい感覚が頬を伝ってアスファルトに黒い点を残した
「…わかん、ない」
飛び出したはいいものの、当てもなかったから、どこに向かうわけでもなかった
だから、いまになって周りを見渡した
いつもの、見なれた景色に、ヒュッと喉が鳴った
『なに、どしたんっ…?』
「やだ、やだやだやだやだ」
俺がいるのは明輝との2人の家の近くの道で。
習慣付けられた俺の体は、無意識のうちに『帰る』と、ここに向かっていたんだ
その事実に悲しくなって「やだ」と繰り返した
『今から行くな』
俺がどこにいるのか察したような深優くんは一言そう言うと、華琉に声をかけてこちらに向かってくるようだ
俺は、というと1秒も長くこの場所に留まりたくなくて、来た道を辿るように歩を進めた
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