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2章 いよいよ本編開始??
意味不明なモテ期襲来?!
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◇
メリーと腹を割った話ができ、ケインの1週間の謹慎処分も終わり、平和(?)な学園生活が戻ってきた。
このケインの1週間の謹慎処分というのは、表向きは怪我をしたあたしを助けるのに自身も怪我をしたことによる治療期間とされているが、事情が事情なので師匠からケインの家に連絡を取り本当のことを伝えたそうだ。
もちろんケインの両親は責任を取ると言って、子爵令嬢であるあたしをケインの婚約者にしようとしたみたいだが、当のあたしはもちろんそんなのはごめんなので断固拒否。
師匠も“ふざけるな!”と一蹴して、ケインの根性を叩き直してやると言って1週間預かったらしい。
ナニがあったかは知らないけど、謹慎処分後のケインはとてもすっきりした顔で、でもあたしを見るとなぜか怯えるようになってしまった。
……なぜだ、何をしたんだ。師匠。
とりあえずケインについては、もう進展がないという意味でも安心できるようになった。
……なったはずなんだけど……――――――
「お、重っ……」
先生に頼まれて、次の授業で使う教材運びを手伝わされた。
城内での“怪力姫”という不名誉な通り名を知っているのか、お願いされた教材の量が貴族令嬢である女生徒一人にお願いする量ではない。
身体強化魔法を使って運ぶのもできなくはないが、学園でも“怪力姫”なんて呼ばれたらあたしの沽券にかかわるのでしたくない!……いや、もう手遅れかもしれないけどもっ!!
「リナリア嬢、大丈夫かい?手伝おうか?」
「え?」
そこにはちゃんと話したことがないけど、同じクラスの貴族令息がいた。
やっとクラスの人にも馴染めてきたということなんだろうか。
ありがたい申し出を快く受けることにした。
「ありがとうございます、とても助かります」
「……っ、良いんだ。少しでもそばにいたいからね」
「?……じゃあ、これをお願いしていいですか?」
なんだか違和感があったけど、とりあえずお願いして教材を無事に教室まで運び終えた。
そして、その違和感やおかしなことはその後も何度か続いた。
「……っぐ、やっぱり椅子がないと届かない、か……」
日直で黒板の文字を消していたが、手を伸ばしても届かない場所が一か所だけあった。
仕方がないから近くの席の人に椅子を借りようかなと思ったら、背後にぞわっとした気配を感じて思わず振り返った。
振り向いた先にいたのは、同じクラスの背が高い男子生徒。もちろん貴族令息だ。
「……オレが消してあげるよ、黒板消しをくれないか?」
黒板けしはもう一つ少し離れた場所にも置いてあるのに、なぜあたしが持っている物を寄こせというのか意味が解らない。だけど変にトラブルを起こしたくないので素直に渡した。
その令息は黒板消しだけじゃなく、あたしの手に無意味に触れてから黒板消しを手に取った。
「……っ」
「ありがとう。後は消しておくから……華奢な手だね、ずっと触れてみたかったんだ」
なんとかお礼を述べて立ち去ったが、ものすごく気持ち悪かった。
何これ!何なの!!??気のせいなんかじゃないよね???
荷物運びを手伝ってくれた人も、黒板消しを手伝ってくれた人も、あたしが知る限りちゃんと婚約者がいたはずだ。同じクラスになってちゃんと話したこともなかったのに、なんで急にあんな風になるわけ??
もしかしたら気のせいかもしれないから、数日様子を見てみようと思ったけど、やっぱり事あるごとに、同じクラスの他の貴族令息からも声をかけられた。
自分のクラス限定という意味不明の状態だけど、そもそも声をかけられること自体にまったく心当たりがない。
考え事もしたかったし、黒猫のロビンちゃんかセイに逢えるかなと思って放課後裏庭に足を運んだが、今度は予想外の人物と遭遇してしまった。
「王太子、殿下……」
「キミは…………二人の時は名前で呼んでくれないかと言ったはずだが?リナリア嬢」
「すみません、イグナート殿下」
「ふふ、ここで逢うのは久しぶりだね」
相変わらずの金髪碧眼の爽やかイケメンという王道の王子様スタイルであるイグナート殿下。
……こんな爽やかな顔してメリーに手を出しているとは……実は腹黒だったり??
「……っ、リナリア嬢…………」
殿下がなぜかあたしの手を握ってきた。え?なんで??
「あの、今日、メリーは……」
「メリー?……今はキミのことだけ見ていたいんだが」
「??!!」
ちょっ!!意味わかんないっ!!野外研修のときに一晩中メリーの側にいたんだよね?!
もうメリーがほぼ婚約者に決定してるんだよね??!!
メリーが好きになったのはこんなチャラ男だったのかと怒ってやろうと思ったら、なんか殿下の瞳がおかしいことに気が付いた。
なんか、ちょっと虚ろな感じ……?
「リナリア嬢……」
「……っ、やっ」
引き寄せられてキスされそうになったので、思わず突き飛ばしてそのまま寮まで走って帰った。
気のせいなんかじゃない。
何あれ、ぜったい瞳がおかしかった。…………何かの魔法??!!
あたしは、今の一部始終を誰かに見られていたなんて知る由もなかった……――――――
メリーと腹を割った話ができ、ケインの1週間の謹慎処分も終わり、平和(?)な学園生活が戻ってきた。
このケインの1週間の謹慎処分というのは、表向きは怪我をしたあたしを助けるのに自身も怪我をしたことによる治療期間とされているが、事情が事情なので師匠からケインの家に連絡を取り本当のことを伝えたそうだ。
もちろんケインの両親は責任を取ると言って、子爵令嬢であるあたしをケインの婚約者にしようとしたみたいだが、当のあたしはもちろんそんなのはごめんなので断固拒否。
師匠も“ふざけるな!”と一蹴して、ケインの根性を叩き直してやると言って1週間預かったらしい。
ナニがあったかは知らないけど、謹慎処分後のケインはとてもすっきりした顔で、でもあたしを見るとなぜか怯えるようになってしまった。
……なぜだ、何をしたんだ。師匠。
とりあえずケインについては、もう進展がないという意味でも安心できるようになった。
……なったはずなんだけど……――――――
「お、重っ……」
先生に頼まれて、次の授業で使う教材運びを手伝わされた。
城内での“怪力姫”という不名誉な通り名を知っているのか、お願いされた教材の量が貴族令嬢である女生徒一人にお願いする量ではない。
身体強化魔法を使って運ぶのもできなくはないが、学園でも“怪力姫”なんて呼ばれたらあたしの沽券にかかわるのでしたくない!……いや、もう手遅れかもしれないけどもっ!!
「リナリア嬢、大丈夫かい?手伝おうか?」
「え?」
そこにはちゃんと話したことがないけど、同じクラスの貴族令息がいた。
やっとクラスの人にも馴染めてきたということなんだろうか。
ありがたい申し出を快く受けることにした。
「ありがとうございます、とても助かります」
「……っ、良いんだ。少しでもそばにいたいからね」
「?……じゃあ、これをお願いしていいですか?」
なんだか違和感があったけど、とりあえずお願いして教材を無事に教室まで運び終えた。
そして、その違和感やおかしなことはその後も何度か続いた。
「……っぐ、やっぱり椅子がないと届かない、か……」
日直で黒板の文字を消していたが、手を伸ばしても届かない場所が一か所だけあった。
仕方がないから近くの席の人に椅子を借りようかなと思ったら、背後にぞわっとした気配を感じて思わず振り返った。
振り向いた先にいたのは、同じクラスの背が高い男子生徒。もちろん貴族令息だ。
「……オレが消してあげるよ、黒板消しをくれないか?」
黒板けしはもう一つ少し離れた場所にも置いてあるのに、なぜあたしが持っている物を寄こせというのか意味が解らない。だけど変にトラブルを起こしたくないので素直に渡した。
その令息は黒板消しだけじゃなく、あたしの手に無意味に触れてから黒板消しを手に取った。
「……っ」
「ありがとう。後は消しておくから……華奢な手だね、ずっと触れてみたかったんだ」
なんとかお礼を述べて立ち去ったが、ものすごく気持ち悪かった。
何これ!何なの!!??気のせいなんかじゃないよね???
荷物運びを手伝ってくれた人も、黒板消しを手伝ってくれた人も、あたしが知る限りちゃんと婚約者がいたはずだ。同じクラスになってちゃんと話したこともなかったのに、なんで急にあんな風になるわけ??
もしかしたら気のせいかもしれないから、数日様子を見てみようと思ったけど、やっぱり事あるごとに、同じクラスの他の貴族令息からも声をかけられた。
自分のクラス限定という意味不明の状態だけど、そもそも声をかけられること自体にまったく心当たりがない。
考え事もしたかったし、黒猫のロビンちゃんかセイに逢えるかなと思って放課後裏庭に足を運んだが、今度は予想外の人物と遭遇してしまった。
「王太子、殿下……」
「キミは…………二人の時は名前で呼んでくれないかと言ったはずだが?リナリア嬢」
「すみません、イグナート殿下」
「ふふ、ここで逢うのは久しぶりだね」
相変わらずの金髪碧眼の爽やかイケメンという王道の王子様スタイルであるイグナート殿下。
……こんな爽やかな顔してメリーに手を出しているとは……実は腹黒だったり??
「……っ、リナリア嬢…………」
殿下がなぜかあたしの手を握ってきた。え?なんで??
「あの、今日、メリーは……」
「メリー?……今はキミのことだけ見ていたいんだが」
「??!!」
ちょっ!!意味わかんないっ!!野外研修のときに一晩中メリーの側にいたんだよね?!
もうメリーがほぼ婚約者に決定してるんだよね??!!
メリーが好きになったのはこんなチャラ男だったのかと怒ってやろうと思ったら、なんか殿下の瞳がおかしいことに気が付いた。
なんか、ちょっと虚ろな感じ……?
「リナリア嬢……」
「……っ、やっ」
引き寄せられてキスされそうになったので、思わず突き飛ばしてそのまま寮まで走って帰った。
気のせいなんかじゃない。
何あれ、ぜったい瞳がおかしかった。…………何かの魔法??!!
あたしは、今の一部始終を誰かに見られていたなんて知る由もなかった……――――――
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