32 / 36
【31】温もりの鼓動
しおりを挟む
抱き締め合って伝わる互いの温もりに安堵し、時が止まれば良いのにと二人は願う。
今日の集合時間は昼頃で、あと四時間ぐらいはまだ余裕があった。
「亮……。今日で最期かもしれない。例え幸運にも死ななかったとしても、明日心身ともに無事だとは――」
「――うん。そう……だね」
「だからさ。昨日の続き……しよう」
「続き……」
亮はポッと頬を赤くして目を閉じると樹の顔が迫ってくる感覚がする。
途中止めだった昨日からの壁を乗り越え、今日遂に本当の大人になるのだとドキドキと胸が高鳴り始めるが……。
「ちょっ! ちょっと待って! 時間は大丈夫?」
夢の中へと沈み込むその直前に隣室からガタガタという音がし、意識が引き戻されてハタと気が付いてしまった。
気付きたくもなかった現実のことを。
「大丈夫さ。全然余裕――とまではいかないかもだけど……。俺は残り少ない時間を後悔ないものにしたい」
「そうだけど……」
「嫌……か?」
問われて亮は首を横に振る。
「嫌じゃない……。嫌じゃないよ。ちょっと心配なだけなんだ……」
どうにもザワザワとする胸の内で、小さなモンスターが突っ走ろうとする自分を掴んで止めようとしてくるような感覚が亮はした。
樹から抱かれて愛の実感を得られれば不安は消えそうな気がするけども……。
「亮……ほら、温かいだろう? トクン、トクンって脈打ってるだろう……?」
するとそんな気持ちを察してか亮の手を握り、樹は自分の胸に押し当てるのだった。
「うん……」
「この熱い情熱を伝え――亮にとって初めての愛の交わりを得る相手になりたい。それは今という機会しかないんだ!」
「樹、僕も――。避けようのない恐怖が後にあろうとも、最初は樹が良い……」
今日の集合時間は昼頃で、あと四時間ぐらいはまだ余裕があった。
「亮……。今日で最期かもしれない。例え幸運にも死ななかったとしても、明日心身ともに無事だとは――」
「――うん。そう……だね」
「だからさ。昨日の続き……しよう」
「続き……」
亮はポッと頬を赤くして目を閉じると樹の顔が迫ってくる感覚がする。
途中止めだった昨日からの壁を乗り越え、今日遂に本当の大人になるのだとドキドキと胸が高鳴り始めるが……。
「ちょっ! ちょっと待って! 時間は大丈夫?」
夢の中へと沈み込むその直前に隣室からガタガタという音がし、意識が引き戻されてハタと気が付いてしまった。
気付きたくもなかった現実のことを。
「大丈夫さ。全然余裕――とまではいかないかもだけど……。俺は残り少ない時間を後悔ないものにしたい」
「そうだけど……」
「嫌……か?」
問われて亮は首を横に振る。
「嫌じゃない……。嫌じゃないよ。ちょっと心配なだけなんだ……」
どうにもザワザワとする胸の内で、小さなモンスターが突っ走ろうとする自分を掴んで止めようとしてくるような感覚が亮はした。
樹から抱かれて愛の実感を得られれば不安は消えそうな気がするけども……。
「亮……ほら、温かいだろう? トクン、トクンって脈打ってるだろう……?」
するとそんな気持ちを察してか亮の手を握り、樹は自分の胸に押し当てるのだった。
「うん……」
「この熱い情熱を伝え――亮にとって初めての愛の交わりを得る相手になりたい。それは今という機会しかないんだ!」
「樹、僕も――。避けようのない恐怖が後にあろうとも、最初は樹が良い……」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる