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第1章 ようやく始まった俺の冒険
1.旅立ち と 久しぶりの声
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「今日でこの街ともおさらばか~。」
俺は馬の手綱を引きながら城下街を歩き、街の雰囲気を味わいながら感慨に耽っていた
神様と約束した1年が経ち、俺も16歳となってグンと背が伸び、中身も少し大人へと成長していた。
最初は井戸から水を汲むことさえ一人ではできなかった貧弱な体も、今では酒樽をひょいっと持ち上げれる程までになった。
「訓練と勉強の毎日で城から街に出たのなんて少ないけど…。でも屋台で買って食べた焼鳥は甘いタレが香ばしくてすごく美味しかったな~。街外れでした野営訓練の時に、鶏肉料理は俺の良く知る鶏じゃなくて“コカトリス”って鶏と蛇が合体した様なモンスターを使ってるんだって、食べた後で聞いたときは暫くの間は食べられなかったけど………。ここって本当に異世界なんだよな~。」
空を見上げ、今見ている空の青さが自分の記憶の中にある地球で見たものと同じだと感じて不思議な気持ちになった。
「しかしあの王様…、サクラ王は、途中まではまだ良かったんだけど…、最後はなんかちょっと苦手な感じだったな~。俺に良くする程に権威を示すことができるからって言って、さっきも色々と持たせようとしたりとか……自分の娘を従者にと差し出そうとまでしてきたのには困ったな………。」
俺はさっき城から出る前にあった事を思い出してため息をついた。
旅立ちのパレードをしようとまで言い出した時は「予算が…」と宰相や侍従たちに言われ止められていたが、あれやこれやと王様の口から出てきて断るのが大変で、旅立ちからすでに疲れていた。
「立派な馬1頭と、ある程度の旅の資金も貰ったし。野営訓練の時に自分で買った道具一式もあるからこれで充分なんだけどな~。それにお姫様を従者にするなんて畏れ多いし…。この国以外はざっくりとしか分からないけど地図も貰ったことだし、しばらくは1人でじっくりと冒険してみるかな。」
俺はこの街の最後の思い出に焼鳥を数本買い、それから門を通って街の外へと出た。
門を通ると馬に乗り、少し離れた所にある森へと続く小高い丘の頂上に立つ1本のリンゴの木のところまで歩いた。
振り返って街を見下ろすと、今日からここを起点に俺の人生は新たに始まるんだと意気込んだ。
すると足元が光り、「ルカ…。」と俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
驚いて後ろを向くと、リンゴの木のそばには背中に蝙蝠の様な羽を生やした大きな黒猫が居た。
「ルカ…。」
誰も人間は居ないのに聞こえる声に驚き、俺はキョロキョロした後にまさかと疑いながら黒猫をジーっと見た。
「もしかして……まさかとは思うが………お前が喋ってる?」
「そうです。私がこの子の体をお借りして君に話しかけています。」
「えっ? えっ? えぇー!? もしかして………その声は神様なの?」
俺はどうしてこんなところから声がという思いがけない事に吃驚したあまり後ろに倒れてしまい、尻もちをついた。
「えぇ、そうですよ。ルカ、よく頑張りましたね。1年で逞しく変わって…。これならこれからの旅に充分耐えられそうですね。体と魂の繋がりもだいぶ強まった様です。」
「そういえば神様。俺に助けてって言っていたけども、これから俺はどうすれば良いの?」
第一段階の課題を終えた俺は、元々の目的だった次にやるべきことを質問した。
「1年前に『聖書が何者かによって一部破壊され、世界中で異変が起こっている』と言いましたね。この世界における聖書とは、以前『救世主との契約書』だと言いましたが、契約者とこの世界の成り立ちにおける神話を記したものなのです。」
「神話…。」
俺はお城で勉強した神話の内容を思い出しながら聞いた。
「契約者である救世主の使う言語は“神の言語”となり、救世主のもつ神力は特別な能力として詳しく記されます。また救世主が必要だと強く願い、私が呼応するとそれまでに存在していない植物や動物でも、神力によって創世神話として刻み込み、新たに生み出すことができるのです。聖書に、その聖書の契約者のみができる『記す』という行為により、動植物だけじゃなく文化・文明も生み出すことができ、その信徒は聖書のもつ範囲において特別な加護を得られるのです。言葉もその加護によって、救世主と信徒は同じ言語を話すことができる様になるのです。しかし……。」
「しかしそれは壊された、と………。」
「そうです。聖書は壊されると、その壊された部分に記されていたものが失われます。と言っても一度にすぐ消えて無くなるのではなく、徐々に跡形も無く消え去っていき……、最後にはこの世界に暮らす全ての生き物たちの記憶からも、どんなものでも永遠と失われてしまうのです。失われたものは2度と戻ってはきません。そしてこの調査と修復は、この世界の人間では聖書の影響を受け、記憶が書き換えられたり消えたりしてしまうのでできないのです。」
俺はゾッとして冷や汗をかき、ゴクリと唾を飲んだ。
「それでその調査と修復を、別の世界から来て今既にある4つの聖書の影響のない俺がすれば良いんだね。とても難しそうだけど頑張るよ! その為にこの1年勉強して鍛えたんだから。」
「ありがとう…。まずはここから東へずーっといった所にあるアシュワガンダという街に行ってみてください。そこは交易都市なので様々な情報も得られるでしょう。」
「分かりました、神様!」
「それと………このコウモリ猫の子供は、母猫からはぐれて1人だったので君にお任せします。甘えん坊なので大変でしょうが、大人になればきっと頼りになる、良い相棒になると思いますよ。」
「えっ? 子猫!?」
俺が生まれてから12歳の時に死ぬまで一緒に育った大人の猫と同じ大きさだったのに『子猫』と言われて驚愕した。
「大人になれば、君の元の世界にいたトラと同じぐらいの大きさになりますよ…………。」
そう言って神様はその子猫の体から消えていった。
俺は馬の手綱を引きながら城下街を歩き、街の雰囲気を味わいながら感慨に耽っていた
神様と約束した1年が経ち、俺も16歳となってグンと背が伸び、中身も少し大人へと成長していた。
最初は井戸から水を汲むことさえ一人ではできなかった貧弱な体も、今では酒樽をひょいっと持ち上げれる程までになった。
「訓練と勉強の毎日で城から街に出たのなんて少ないけど…。でも屋台で買って食べた焼鳥は甘いタレが香ばしくてすごく美味しかったな~。街外れでした野営訓練の時に、鶏肉料理は俺の良く知る鶏じゃなくて“コカトリス”って鶏と蛇が合体した様なモンスターを使ってるんだって、食べた後で聞いたときは暫くの間は食べられなかったけど………。ここって本当に異世界なんだよな~。」
空を見上げ、今見ている空の青さが自分の記憶の中にある地球で見たものと同じだと感じて不思議な気持ちになった。
「しかしあの王様…、サクラ王は、途中まではまだ良かったんだけど…、最後はなんかちょっと苦手な感じだったな~。俺に良くする程に権威を示すことができるからって言って、さっきも色々と持たせようとしたりとか……自分の娘を従者にと差し出そうとまでしてきたのには困ったな………。」
俺はさっき城から出る前にあった事を思い出してため息をついた。
旅立ちのパレードをしようとまで言い出した時は「予算が…」と宰相や侍従たちに言われ止められていたが、あれやこれやと王様の口から出てきて断るのが大変で、旅立ちからすでに疲れていた。
「立派な馬1頭と、ある程度の旅の資金も貰ったし。野営訓練の時に自分で買った道具一式もあるからこれで充分なんだけどな~。それにお姫様を従者にするなんて畏れ多いし…。この国以外はざっくりとしか分からないけど地図も貰ったことだし、しばらくは1人でじっくりと冒険してみるかな。」
俺はこの街の最後の思い出に焼鳥を数本買い、それから門を通って街の外へと出た。
門を通ると馬に乗り、少し離れた所にある森へと続く小高い丘の頂上に立つ1本のリンゴの木のところまで歩いた。
振り返って街を見下ろすと、今日からここを起点に俺の人生は新たに始まるんだと意気込んだ。
すると足元が光り、「ルカ…。」と俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
驚いて後ろを向くと、リンゴの木のそばには背中に蝙蝠の様な羽を生やした大きな黒猫が居た。
「ルカ…。」
誰も人間は居ないのに聞こえる声に驚き、俺はキョロキョロした後にまさかと疑いながら黒猫をジーっと見た。
「もしかして……まさかとは思うが………お前が喋ってる?」
「そうです。私がこの子の体をお借りして君に話しかけています。」
「えっ? えっ? えぇー!? もしかして………その声は神様なの?」
俺はどうしてこんなところから声がという思いがけない事に吃驚したあまり後ろに倒れてしまい、尻もちをついた。
「えぇ、そうですよ。ルカ、よく頑張りましたね。1年で逞しく変わって…。これならこれからの旅に充分耐えられそうですね。体と魂の繋がりもだいぶ強まった様です。」
「そういえば神様。俺に助けてって言っていたけども、これから俺はどうすれば良いの?」
第一段階の課題を終えた俺は、元々の目的だった次にやるべきことを質問した。
「1年前に『聖書が何者かによって一部破壊され、世界中で異変が起こっている』と言いましたね。この世界における聖書とは、以前『救世主との契約書』だと言いましたが、契約者とこの世界の成り立ちにおける神話を記したものなのです。」
「神話…。」
俺はお城で勉強した神話の内容を思い出しながら聞いた。
「契約者である救世主の使う言語は“神の言語”となり、救世主のもつ神力は特別な能力として詳しく記されます。また救世主が必要だと強く願い、私が呼応するとそれまでに存在していない植物や動物でも、神力によって創世神話として刻み込み、新たに生み出すことができるのです。聖書に、その聖書の契約者のみができる『記す』という行為により、動植物だけじゃなく文化・文明も生み出すことができ、その信徒は聖書のもつ範囲において特別な加護を得られるのです。言葉もその加護によって、救世主と信徒は同じ言語を話すことができる様になるのです。しかし……。」
「しかしそれは壊された、と………。」
「そうです。聖書は壊されると、その壊された部分に記されていたものが失われます。と言っても一度にすぐ消えて無くなるのではなく、徐々に跡形も無く消え去っていき……、最後にはこの世界に暮らす全ての生き物たちの記憶からも、どんなものでも永遠と失われてしまうのです。失われたものは2度と戻ってはきません。そしてこの調査と修復は、この世界の人間では聖書の影響を受け、記憶が書き換えられたり消えたりしてしまうのでできないのです。」
俺はゾッとして冷や汗をかき、ゴクリと唾を飲んだ。
「それでその調査と修復を、別の世界から来て今既にある4つの聖書の影響のない俺がすれば良いんだね。とても難しそうだけど頑張るよ! その為にこの1年勉強して鍛えたんだから。」
「ありがとう…。まずはここから東へずーっといった所にあるアシュワガンダという街に行ってみてください。そこは交易都市なので様々な情報も得られるでしょう。」
「分かりました、神様!」
「それと………このコウモリ猫の子供は、母猫からはぐれて1人だったので君にお任せします。甘えん坊なので大変でしょうが、大人になればきっと頼りになる、良い相棒になると思いますよ。」
「えっ? 子猫!?」
俺が生まれてから12歳の時に死ぬまで一緒に育った大人の猫と同じ大きさだったのに『子猫』と言われて驚愕した。
「大人になれば、君の元の世界にいたトラと同じぐらいの大きさになりますよ…………。」
そう言って神様はその子猫の体から消えていった。
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