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第3話
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「ぅわっ!」
思わず閉じてしまった目を次に開けた瞬間、そこは見知らぬどこかであった。
「着いたぞ……。ここが魔王城だ。」
魔王にそう言われ、ここがそうなのかとキョロキョロと周囲を確認する。
「私……さっきまで自分の部屋に―――。」
「転移の魔法だ。人間にはおよそ扱えぬもの故、驚いただろう。フッ……魔王である我だからこそできることよ。」
さすがに転移の魔法を使って移動したのは初体験だったので、私の膝は少しばかしガクガクと震えていた。
しかし……なんだろう―――。
この魔王はいちいちカッコつけてないと喋れないのだろうか……?
さっきから言葉を発する度に、まるでモデルの様に何度もポーズを変えながら喋っている。
今に至っては大きな姿見の前に立ち、私の事なんかお構いなしにジッと自分の顔を見ながら喋っている始末だ。
考えたくはない――。
考えたくはないが……この魔王ってもしかして―――。
「――ナルシストかな?」
「ん? そなた、何か言ったか?」
「イエ、ベツニ。」
ボソッと――うっかりと口から出た独り言にしか過ぎなかったのに聞こえたのか……。
危ない、危ない。
「して、姫よ。我が城に連れては来たが……そなたにはしばし用は無いのだ。」
魔王はパンパンと手を打って音を鳴らした。
私もそれをよくするから分かる。
たぶん使用人でも呼んでいるんだろうな。
「お呼びですか? 魔王様。」
三分も経たずして……私の身長の半分ほどの大きさの、小柄な牛――いや、バッファローにも似た二足歩行の生き物がシュタッと部屋へと入り、片膝を付いて魔王に頭を垂れていた。
「あぁ。この人間を、放り込んでおけ。」
自分が呼んだ使用人が来ても視線は鏡か………。
「御意!」
その小柄な生き物は簡単に返事をすると、私の方を向いてキッと睨んできた。
「おいっ! 小娘!」
その小さな体のどこから出てくるのかと疑問に思う程の大きくて迫力のある声に、私はビクッと体を震わせる。
「行くぞっ!」
私は勢いに負け、コクリと頷いて大人しく従った。
この小柄な生き物に言われるがまま後ろをついて歩き、魔王城の下へ下へと歩いて移動する。
一体どこへと連れて行かれるのだろうか………。
最初に着いた部屋はゴテゴテとした飾りだらけだったが、歩みを進めるほどにそれは減っていき、目的地付近まで来ると石造りの建物の中身が剥き出しになった簡素な場所と変わっていった。
「ここだ。入れ。」
私は薄暗がりの中でそう促され、ここがどういった場所なのかじっくりと観察しながら、足元がおぼつかない中でソーッとその場所へと入っていったのだった。
思わず閉じてしまった目を次に開けた瞬間、そこは見知らぬどこかであった。
「着いたぞ……。ここが魔王城だ。」
魔王にそう言われ、ここがそうなのかとキョロキョロと周囲を確認する。
「私……さっきまで自分の部屋に―――。」
「転移の魔法だ。人間にはおよそ扱えぬもの故、驚いただろう。フッ……魔王である我だからこそできることよ。」
さすがに転移の魔法を使って移動したのは初体験だったので、私の膝は少しばかしガクガクと震えていた。
しかし……なんだろう―――。
この魔王はいちいちカッコつけてないと喋れないのだろうか……?
さっきから言葉を発する度に、まるでモデルの様に何度もポーズを変えながら喋っている。
今に至っては大きな姿見の前に立ち、私の事なんかお構いなしにジッと自分の顔を見ながら喋っている始末だ。
考えたくはない――。
考えたくはないが……この魔王ってもしかして―――。
「――ナルシストかな?」
「ん? そなた、何か言ったか?」
「イエ、ベツニ。」
ボソッと――うっかりと口から出た独り言にしか過ぎなかったのに聞こえたのか……。
危ない、危ない。
「して、姫よ。我が城に連れては来たが……そなたにはしばし用は無いのだ。」
魔王はパンパンと手を打って音を鳴らした。
私もそれをよくするから分かる。
たぶん使用人でも呼んでいるんだろうな。
「お呼びですか? 魔王様。」
三分も経たずして……私の身長の半分ほどの大きさの、小柄な牛――いや、バッファローにも似た二足歩行の生き物がシュタッと部屋へと入り、片膝を付いて魔王に頭を垂れていた。
「あぁ。この人間を、放り込んでおけ。」
自分が呼んだ使用人が来ても視線は鏡か………。
「御意!」
その小柄な生き物は簡単に返事をすると、私の方を向いてキッと睨んできた。
「おいっ! 小娘!」
その小さな体のどこから出てくるのかと疑問に思う程の大きくて迫力のある声に、私はビクッと体を震わせる。
「行くぞっ!」
私は勢いに負け、コクリと頷いて大人しく従った。
この小柄な生き物に言われるがまま後ろをついて歩き、魔王城の下へ下へと歩いて移動する。
一体どこへと連れて行かれるのだろうか………。
最初に着いた部屋はゴテゴテとした飾りだらけだったが、歩みを進めるほどにそれは減っていき、目的地付近まで来ると石造りの建物の中身が剥き出しになった簡素な場所と変わっていった。
「ここだ。入れ。」
私は薄暗がりの中でそう促され、ここがどういった場所なのかじっくりと観察しながら、足元がおぼつかない中でソーッとその場所へと入っていったのだった。
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