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第2話
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「あなたは………。」
「我は魔王。美女と名高き姫よ――。我の野望の為、そなたの身をもらい受けるっ!」
その言葉に私の胸は高鳴った……!
「魔王ですって?」
「あぁ、そうだ……。我と共に魔王城へと来てもらうぞ! さぁ! こいっ!!」
そう言って魔王は私の右の手首を掴み、グイッと自分の方へと引き寄せたのだった。
なんと……なんと夢に見たシチュエーションだろうか――。
思わず小躍りをして満面の笑みでイエスの返事をしそうであったが、だがここで喜んでしまってはダメだ……。
私は「はいっ! 喜んで!」と言ってしまいそうになるのを抑え、前に演劇鑑賞会で観た誘拐される女の子の様に「キャーーー!」と高い声で叫んだ。
芝居臭くなかっただろうか……、バレやしないだろうかと私はドキドキした。
「フッ……。そんなに叫んで嫌がっていても無理矢理にでも連れて行くからなっ!!」
私の心配をよそに、魔王は目の前で不敵な笑みを浮かべていた。
そこに私の叫び声を聞きつけた近衛騎士たちが数人、バーンと勢いよく扉を押し開けて私の部屋の中へと入ってきた。
「貴様はっ……!?」
「ややっ! まさか……魔王かっ?」
「姫様っ………!!」
近衛騎士たちは皆、目の前で姫である私を捕らえている魔王に三者三様に警戒を示し、私を助けようと鞘から剣を抜いて攻撃態勢をとった。
この状況に「止めて!」と近衛騎士たちに向けて私は心の中で叫んだ。
せっかくのこの美味しいシチュエーションを逃がしてなるものかと、嫌がる演技をしつつも早く早くと魔王を急かしたのだった。
「大変だわっ! 私の叫び声を聞きつけてこのままでは騎士たちがどんどん集まってくるわ……。パパも――。どうしましょう……どうしましょう?」
パニックになって慌てるフリをしながら片目でチラリと魔王の顔を見た。
「あっ……あぁ、そうだな。」
私の振る舞いに魔王は自分のペースを乱されたのか呆気にとられ、少し驚いた様子で返事をしてから自らを落ち着かせる為にゴホンと一つ咳払いをした。
「我はこれにて立ち去るとしよう。大公どのに伝えよ。この美しき姫を返して欲しくば魔王城に来いとな――。我はいつでも歓迎するぞ。グハハハハッー!」
魔王はニタリと口角を上げて高笑いをし、自分の傍らに引き寄せていた私の体をマントで包むとクルリと回転して空へと素早く飛んだ。
そうして城の屋根より高い位置まで来ると、私にはよく聞き取れなかったが古代語で何らかの呪文を唱えだし、それが言い終わると共に一瞬チカっと目が痛くなるほどの強烈な光に覆われたのだった。
「我は魔王。美女と名高き姫よ――。我の野望の為、そなたの身をもらい受けるっ!」
その言葉に私の胸は高鳴った……!
「魔王ですって?」
「あぁ、そうだ……。我と共に魔王城へと来てもらうぞ! さぁ! こいっ!!」
そう言って魔王は私の右の手首を掴み、グイッと自分の方へと引き寄せたのだった。
なんと……なんと夢に見たシチュエーションだろうか――。
思わず小躍りをして満面の笑みでイエスの返事をしそうであったが、だがここで喜んでしまってはダメだ……。
私は「はいっ! 喜んで!」と言ってしまいそうになるのを抑え、前に演劇鑑賞会で観た誘拐される女の子の様に「キャーーー!」と高い声で叫んだ。
芝居臭くなかっただろうか……、バレやしないだろうかと私はドキドキした。
「フッ……。そんなに叫んで嫌がっていても無理矢理にでも連れて行くからなっ!!」
私の心配をよそに、魔王は目の前で不敵な笑みを浮かべていた。
そこに私の叫び声を聞きつけた近衛騎士たちが数人、バーンと勢いよく扉を押し開けて私の部屋の中へと入ってきた。
「貴様はっ……!?」
「ややっ! まさか……魔王かっ?」
「姫様っ………!!」
近衛騎士たちは皆、目の前で姫である私を捕らえている魔王に三者三様に警戒を示し、私を助けようと鞘から剣を抜いて攻撃態勢をとった。
この状況に「止めて!」と近衛騎士たちに向けて私は心の中で叫んだ。
せっかくのこの美味しいシチュエーションを逃がしてなるものかと、嫌がる演技をしつつも早く早くと魔王を急かしたのだった。
「大変だわっ! 私の叫び声を聞きつけてこのままでは騎士たちがどんどん集まってくるわ……。パパも――。どうしましょう……どうしましょう?」
パニックになって慌てるフリをしながら片目でチラリと魔王の顔を見た。
「あっ……あぁ、そうだな。」
私の振る舞いに魔王は自分のペースを乱されたのか呆気にとられ、少し驚いた様子で返事をしてから自らを落ち着かせる為にゴホンと一つ咳払いをした。
「我はこれにて立ち去るとしよう。大公どのに伝えよ。この美しき姫を返して欲しくば魔王城に来いとな――。我はいつでも歓迎するぞ。グハハハハッー!」
魔王はニタリと口角を上げて高笑いをし、自分の傍らに引き寄せていた私の体をマントで包むとクルリと回転して空へと素早く飛んだ。
そうして城の屋根より高い位置まで来ると、私にはよく聞き取れなかったが古代語で何らかの呪文を唱えだし、それが言い終わると共に一瞬チカっと目が痛くなるほどの強烈な光に覆われたのだった。
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