254 / 303
第49話ー4
しおりを挟む
――翌日のカプリコルノ国。
あんこの甘い香りが漂う、西の山――コニッリョの山の麓。
フラヴィオが耳を疑って、「何っ?」と声を裏返した。
ついさっき、テンテンのテレトラスポルト送迎でサジッターリオ国からやって来たコラードの顔を見る。
「ハーゲン、本当に宮廷楽士を止めたのか? いや、どうするんだ職を失って」
「よく知らないけど大丈夫らしいです。宮廷楽士になる前も働いてなかったとか何とかで、無職の玄人だどーのこーの」
「なんだそれは」
「さぁ。オレもこんなにあっさり辞められるとは思ってませんでした。もう、マヤにブーブー言われるわ、ハーゲンが可哀想ってレオに泣かれるわで……」
と、コラードが苦笑した。
「ハーゲン、よっぽどあのヴィオリーノが大切だったってことかなぁ」
「まぁ、ヴィオリニスタならば喉から手が出るほど欲しいヴィオリーノだろうからな。ていうか、ハーゲンは町からも出たのだろう? どこへ行ったのだ」
「町から出て行けって言ったのもオレだけど、さすがに心配だったんで、王都にある実家にはときどき帰るよう言っておきましたが……なんか山小屋を持ってるそうです。ちなみにピピストレッロの山から2キロ先」
「いや、危ないだろうソレ。ときどき様子を見に行った方が良いぞ」
そんな会話をしている2人の傍ら、ベルが思案顔で腕組みしていた。
「これで良かったのでしょうか……」
と呟いたベルの顔を、フラヴィオが「アモーレ?」と覗き込む。
2人の顔を交互に見たベルが、こう言った。
「いえ、あの…ハーゲンさんに宮廷や王都でヴィオリーノを演奏されるのは危険ですから、これで良いと言ったらそうかもしれませんが……本当に良かったのでしょうか」
「ハーゲン自身は変わらず危険だろうって?」
とフラヴィオが問うと、ベルが「それもありますが」と続けた。
「なんと申しますか……少し不安を覚えませんか? レオ様いわく、ハーゲンさんは長年ピピストレッロの研究をしていたほどピピストレッロがお好きな様ですし、昨日はレオ様のためかもしれませんけど、自らピピストレッロを呼び出したみたいですし……」
フラヴィオとコラードが顔を見合わせた。
「余はハーゲンが誰かを想ってヴィオリーノを弾いているのは分かったが、もしかしてその相手はピピストレッロか?」
「かなぁ? だとしたら、叶わない恋してるなハーゲンの奴。だってピピストレッロじゃ、まず相手にされないのに」
「それなら――相手にされないのなら、不安ではないのです」
とベルが、不安げな表情をして2人の顔を見る。
「これまでも見てきたではありませんか。どこの国も、人間とモストロが初めて共存をしたときには悲劇が起こるのです」
「それはたしかに」
と2人が声を揃えた。
コラードが「でも」と返す。
「さっきも言ったけどさ、ピピストレッロが相手じゃどうにもこうにも恋は発展しないって。彼らと目が合うことすら無いんだから。良かったんだよ、これで。これでピピストレッロから国民を守れたわけだから、なんだかんだオレは安心してるよ」
「私もどっちかと言ったら、安心感の方が強いのですが……」
「ならいいじゃん、これで。ピピストレッロの山近くで暮らすハーゲンが心配じゃないわけじゃないから、時々兵士に様子見に行かせるし。そんなに心配しなくて大丈夫だよ、女王陛下」
「はぁ、そうですか……」
少し離れたところであんこ鍋を掻き回しているヴァレンティーナが、「父上」と呼んだ。
「あんこが炊けたわよ」
その隣にいるルフィーナが、スプーンをフラヴィオに向かって差し出す。
「コニッリョに『あーん』してみてください」
いつの間にか、コニッリョがわんさかあんこ鍋の周りに集まっていた。
フラヴィオは「うむ」と承知すると、クッキアイオを受け取って鍋からあんこを一口すくい取った。
それをコニッリョたちに向かって差し出す。
「さぁ、誰か食べて良いぞ」
コニッリョたちがフラヴィオから遠巻きになっていったのを見て、ベルから小さく溜め息が漏れる。
「まだ駄目でしたね……」
「そのようだ。まだ余が――『人間界の王』が怖いのか、おまえたち」
とフラヴィオが残念そうにクッキアイオを下げようかとき、一匹のコニッリョが一歩だけ前へ出た。
そして、おそるおそる顔を近付けて、クッキアイオをぱくっと口に入れる。
「――食べたっ!」
と思わず一同が声高になってしまったら、それは飛び退ってしまい、慌てて自身の口を塞ぐ。
その状態のままフラヴィオは二口目のあんこを救うと、またクッキアイオを差し出した。
今度は別のコニッリョが一歩前へ出て、同じようにおそるおそる顔を近付けてクッキアイオを咥えた。
顔を見合わせた一同の瞳は驚きに見開かれ、感動に煌めいていた。
ヴァレンティーナにクッキアイオが渡ると、それらがたちまち寄って来る中、フラヴィオはベルを引っ張って後方に下がっていった。
ある程度距離を置いたところで、コニッリョたちを脅かさないよう小声で口を開く。
「見たか、アモーレっ…! それからおまえたちもっ……!」
ベルと、後を付いて来たルフィーナ、コラードが頷く。
「コニッリョがついに――いや、再び『人間界の王』の手から、あんこを食べたぞっ……!」
「また一歩前進致しましたね、フラヴィオ様っ……!」
「ああ、アモーレ。きっともう少しだぞ。後、もう少しで……!」
抱擁し合うフラヴィオとベルを見たヴァレンティーナが、嬉しそうに「ふふっ」と笑って駆け寄ってきた。
「ねぇ父上、ベル、2人目の赤ちゃんの予定はあるの?」
「それどころか、ベルさん後10人くらいは産むんじゃないです? いえ、50歳くらいまで産んでそうだからもっとかも」
と生あたたかい目で2人を見つめているルフィーナが言うと、コラードも呆れたような笑みで「だろうなぁ」と同意した。
2人は冗談交じりだったが、純粋に受け止めたらしいヴァレンティーナが「そんなに?」と驚いた。
「凄いわ、ベル。どうやったらそんなに赤ちゃんを授かることが出来るの? 赤ちゃんを授かりやすい日とかそういう以外に、何かコツとかあるの? あったら教えて、お願い」
とどこか焦った様子のヴァレンティーナを見て、ベルがふと気付く。
(そういえば、ティーナ様はまだご懐妊されていない)
ヴァレンティーナは結婚して半年だ。
それでまだ子を授かっていないのは、まだ15と若い年齢を考えると遅いような気もするが、まだそんなに心配するほどでも無いような気もした。
ルフィーナもそう感じたようで、軽い口調で「そのうち授かりますよ」と言った。
フラヴィオが「むしろ」と続く。
「父上は、その年で妊娠・出産の方が心配だぞティーナ。正直、まだ早過ぎる」
「そうなのね。でも王侯貴族は私くらいの年齢で産んでる人も少なくないし、それに私……」
と、ヴァレンティーナが何か気掛かりなことがある様子で、口を閉ざした。
それを見て、ベルの脳裏にふっとアクアーリオ王太子が現れる。
「ティーナ様、何かあったら必ずベルナデッタとの交換日記に書いてくださいまし。小さなことでも、必ずです」
「ええ、分かってるわベル。これからは週に一度じゃなくて、もっとこっちに来られるようになったのだし。何かあったらすぐに相談するわ」
とヴァレンティーナはベルに笑顔を向けると、コニッリョの方へと戻って行った。
手掴みで勝手にあんこを食べているコニッリョもいたが、ヴァレンティーナが器によそって「はい、どうぞ」と一匹一匹に手渡していく。
その様子を眺めながら、コラードが呟いた。
「遺伝……って、あるのかな」
ルフィーナが小首を傾げて「遺伝?」と鸚鵡返しにすると、コラードは「何でもない」と返して口を閉ざした。
「無くは無いのかもしれん」
フラヴィオが答えると、ベルが頷いた。
「何の話です?」
とルフィーナは問うたが、3人は黙ったままヴァレンティーナを少し心配そうに見つめている。
3人の脳裏には、ヴァレンティーナの叔母――ベラドンナの姿が浮かんでいた。
※番外編に49.5話あり。
あんこの甘い香りが漂う、西の山――コニッリョの山の麓。
フラヴィオが耳を疑って、「何っ?」と声を裏返した。
ついさっき、テンテンのテレトラスポルト送迎でサジッターリオ国からやって来たコラードの顔を見る。
「ハーゲン、本当に宮廷楽士を止めたのか? いや、どうするんだ職を失って」
「よく知らないけど大丈夫らしいです。宮廷楽士になる前も働いてなかったとか何とかで、無職の玄人だどーのこーの」
「なんだそれは」
「さぁ。オレもこんなにあっさり辞められるとは思ってませんでした。もう、マヤにブーブー言われるわ、ハーゲンが可哀想ってレオに泣かれるわで……」
と、コラードが苦笑した。
「ハーゲン、よっぽどあのヴィオリーノが大切だったってことかなぁ」
「まぁ、ヴィオリニスタならば喉から手が出るほど欲しいヴィオリーノだろうからな。ていうか、ハーゲンは町からも出たのだろう? どこへ行ったのだ」
「町から出て行けって言ったのもオレだけど、さすがに心配だったんで、王都にある実家にはときどき帰るよう言っておきましたが……なんか山小屋を持ってるそうです。ちなみにピピストレッロの山から2キロ先」
「いや、危ないだろうソレ。ときどき様子を見に行った方が良いぞ」
そんな会話をしている2人の傍ら、ベルが思案顔で腕組みしていた。
「これで良かったのでしょうか……」
と呟いたベルの顔を、フラヴィオが「アモーレ?」と覗き込む。
2人の顔を交互に見たベルが、こう言った。
「いえ、あの…ハーゲンさんに宮廷や王都でヴィオリーノを演奏されるのは危険ですから、これで良いと言ったらそうかもしれませんが……本当に良かったのでしょうか」
「ハーゲン自身は変わらず危険だろうって?」
とフラヴィオが問うと、ベルが「それもありますが」と続けた。
「なんと申しますか……少し不安を覚えませんか? レオ様いわく、ハーゲンさんは長年ピピストレッロの研究をしていたほどピピストレッロがお好きな様ですし、昨日はレオ様のためかもしれませんけど、自らピピストレッロを呼び出したみたいですし……」
フラヴィオとコラードが顔を見合わせた。
「余はハーゲンが誰かを想ってヴィオリーノを弾いているのは分かったが、もしかしてその相手はピピストレッロか?」
「かなぁ? だとしたら、叶わない恋してるなハーゲンの奴。だってピピストレッロじゃ、まず相手にされないのに」
「それなら――相手にされないのなら、不安ではないのです」
とベルが、不安げな表情をして2人の顔を見る。
「これまでも見てきたではありませんか。どこの国も、人間とモストロが初めて共存をしたときには悲劇が起こるのです」
「それはたしかに」
と2人が声を揃えた。
コラードが「でも」と返す。
「さっきも言ったけどさ、ピピストレッロが相手じゃどうにもこうにも恋は発展しないって。彼らと目が合うことすら無いんだから。良かったんだよ、これで。これでピピストレッロから国民を守れたわけだから、なんだかんだオレは安心してるよ」
「私もどっちかと言ったら、安心感の方が強いのですが……」
「ならいいじゃん、これで。ピピストレッロの山近くで暮らすハーゲンが心配じゃないわけじゃないから、時々兵士に様子見に行かせるし。そんなに心配しなくて大丈夫だよ、女王陛下」
「はぁ、そうですか……」
少し離れたところであんこ鍋を掻き回しているヴァレンティーナが、「父上」と呼んだ。
「あんこが炊けたわよ」
その隣にいるルフィーナが、スプーンをフラヴィオに向かって差し出す。
「コニッリョに『あーん』してみてください」
いつの間にか、コニッリョがわんさかあんこ鍋の周りに集まっていた。
フラヴィオは「うむ」と承知すると、クッキアイオを受け取って鍋からあんこを一口すくい取った。
それをコニッリョたちに向かって差し出す。
「さぁ、誰か食べて良いぞ」
コニッリョたちがフラヴィオから遠巻きになっていったのを見て、ベルから小さく溜め息が漏れる。
「まだ駄目でしたね……」
「そのようだ。まだ余が――『人間界の王』が怖いのか、おまえたち」
とフラヴィオが残念そうにクッキアイオを下げようかとき、一匹のコニッリョが一歩だけ前へ出た。
そして、おそるおそる顔を近付けて、クッキアイオをぱくっと口に入れる。
「――食べたっ!」
と思わず一同が声高になってしまったら、それは飛び退ってしまい、慌てて自身の口を塞ぐ。
その状態のままフラヴィオは二口目のあんこを救うと、またクッキアイオを差し出した。
今度は別のコニッリョが一歩前へ出て、同じようにおそるおそる顔を近付けてクッキアイオを咥えた。
顔を見合わせた一同の瞳は驚きに見開かれ、感動に煌めいていた。
ヴァレンティーナにクッキアイオが渡ると、それらがたちまち寄って来る中、フラヴィオはベルを引っ張って後方に下がっていった。
ある程度距離を置いたところで、コニッリョたちを脅かさないよう小声で口を開く。
「見たか、アモーレっ…! それからおまえたちもっ……!」
ベルと、後を付いて来たルフィーナ、コラードが頷く。
「コニッリョがついに――いや、再び『人間界の王』の手から、あんこを食べたぞっ……!」
「また一歩前進致しましたね、フラヴィオ様っ……!」
「ああ、アモーレ。きっともう少しだぞ。後、もう少しで……!」
抱擁し合うフラヴィオとベルを見たヴァレンティーナが、嬉しそうに「ふふっ」と笑って駆け寄ってきた。
「ねぇ父上、ベル、2人目の赤ちゃんの予定はあるの?」
「それどころか、ベルさん後10人くらいは産むんじゃないです? いえ、50歳くらいまで産んでそうだからもっとかも」
と生あたたかい目で2人を見つめているルフィーナが言うと、コラードも呆れたような笑みで「だろうなぁ」と同意した。
2人は冗談交じりだったが、純粋に受け止めたらしいヴァレンティーナが「そんなに?」と驚いた。
「凄いわ、ベル。どうやったらそんなに赤ちゃんを授かることが出来るの? 赤ちゃんを授かりやすい日とかそういう以外に、何かコツとかあるの? あったら教えて、お願い」
とどこか焦った様子のヴァレンティーナを見て、ベルがふと気付く。
(そういえば、ティーナ様はまだご懐妊されていない)
ヴァレンティーナは結婚して半年だ。
それでまだ子を授かっていないのは、まだ15と若い年齢を考えると遅いような気もするが、まだそんなに心配するほどでも無いような気もした。
ルフィーナもそう感じたようで、軽い口調で「そのうち授かりますよ」と言った。
フラヴィオが「むしろ」と続く。
「父上は、その年で妊娠・出産の方が心配だぞティーナ。正直、まだ早過ぎる」
「そうなのね。でも王侯貴族は私くらいの年齢で産んでる人も少なくないし、それに私……」
と、ヴァレンティーナが何か気掛かりなことがある様子で、口を閉ざした。
それを見て、ベルの脳裏にふっとアクアーリオ王太子が現れる。
「ティーナ様、何かあったら必ずベルナデッタとの交換日記に書いてくださいまし。小さなことでも、必ずです」
「ええ、分かってるわベル。これからは週に一度じゃなくて、もっとこっちに来られるようになったのだし。何かあったらすぐに相談するわ」
とヴァレンティーナはベルに笑顔を向けると、コニッリョの方へと戻って行った。
手掴みで勝手にあんこを食べているコニッリョもいたが、ヴァレンティーナが器によそって「はい、どうぞ」と一匹一匹に手渡していく。
その様子を眺めながら、コラードが呟いた。
「遺伝……って、あるのかな」
ルフィーナが小首を傾げて「遺伝?」と鸚鵡返しにすると、コラードは「何でもない」と返して口を閉ざした。
「無くは無いのかもしれん」
フラヴィオが答えると、ベルが頷いた。
「何の話です?」
とルフィーナは問うたが、3人は黙ったままヴァレンティーナを少し心配そうに見つめている。
3人の脳裏には、ヴァレンティーナの叔母――ベラドンナの姿が浮かんでいた。
※番外編に49.5話あり。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います
結城芙由奈
恋愛
浮気ですか?どうぞご自由にして下さい。私はここを去りますので
結婚式の前日、政略結婚相手は言った。「お前に永遠の愛は誓わない。何故ならそこに愛など存在しないのだから。」そして迎えた驚くべき結婚式と驚愕の事実。いいでしょう、それほど不本意な結婚ならば離婚してあげましょう。その代わり・・後で後悔しても知りませんよ?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる