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第8章

半ば 続

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 言われた通りに黒騎士は裏口から入ると、エリザベスが待っていた。

「どうも、話は応接室でやりたいのでこちらに………」
「あぁ………」

 黒騎士はエリザベスの後ろに続き、応接室に来ると椅子に座るな否や剣と兜をテーブルに置いた。

「お茶とかは無用だ……話だけだからな」
「わかりました」

 エリザベスはお茶の準備をしていたが、手を止めて椅子に座った。

「単刀直入に伺いますが噂は本当なんですか?」
「噂? あ~ー、仲間殺しのやつだな」
「はい」

 黒騎士は苦々しく語り始めた。

 あれは本当であって、嘘だ……
 どこの国にもスパイを使って情報を得ようとする。比例して、スパイマスターも当然どこの国にもいる。
 まぁ、要は仲間の振りをしたスパイを炙り出して、捕まえ、殺すのが俺のだ。
 騎士なのは家柄が代々騎士だからだが、王様からはとして扱われているが、今の所城内にスパイはいないから騎士として王様に仕えている。
 仲間殺しの現場を見たヤツが、流した噂が流れて行くため、スパイ達は腕に自信があるヤツか馬鹿なヤツしかこの国には来ない。
 まぁ、スパイマスターも楽じゃないわけだ。
 これで俺の話は終わりだ………

「なるほど……」
「この事は誰にも話すな、そして俺とは同情したからと言って、あまり関わらないでくれ………いいな? 」
「はい、わかっております」
「じゃ、俺は帰る」

 黒騎士はそう言うと、兜を被り、剣を腰に着けて裏口から帰っていった。

「まぁ、職業からして異常が少しでもあると不安になるからな……」

 エリザベスはそうぼやくと、応接室から出て、温泉を作る為の予算を計算し始めた。
 和風の温泉にしたい為、水に強い木材と塗料等、色々高額な物を使う羽目になったが問題はない。
 ただ、問題は風俗商会の面々めんめんにこの温泉計画を教えたら入りに来そうなんだよなぁ…… 一応男湯も作るつもりだけどさ……… っと思いながらも予算計算の事務作業を黙々と進めるエリザベスは、前世さながらの働きであった。
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