戦場の女神

ニタマゴ

文字の大きさ
上 下
47 / 51

第四十七話 帰還

しおりを挟む
ガタンガタンと列車が進んでいた。
その一つの車両内のベッドにアメリアは座っていた。他にも多くの負傷した兵士がいた。
車両の後方のドアが開き、アングレが水の入った瓶をアメリアに渡す。
今のアメリアは全員傷だらけだった。
肘から下がない左腕は包帯に包まれ、右目は飛んできたガラスの破片に刺され、白い眼帯がつけられていた。
「少しは楽になったか?お前、PTSDって診断されてたぜ」
「そう…」
「もっと喜べって、帰れるんだぜ!」
~~~
アングレは注射器に入ってる液体をアメリアに注入した。
彼に確信は全くなかった。しかし、記憶のどこかで自分は小さい頃にこれと同じようなものを注射された記憶があった。
「W博士だっけな?」
薄暗い記憶の奥でアングレは必死に思い出そうとした。
「アングレ、ほんの小さな痛みだ。こいつはお前に世界を変える力を与える。君にも拒否権はあるぞ」
「僕!ヒーロー!」
「そうか~」
W博士は微笑み、アングレに注射をした。副作用で彼が死ぬかもしれないと知っていた。でも、やらなければもっと最悪な結果が待っていたのだ。
結果的にアングレは不死身になったと思われたが、初めの頃簡単なかすり傷でもアングレの体は素早く回復しなかった。
「W博士よ。君のあの人造人間は失敗作か?いいか、あと1週間やる。それまでに成功しなかったら、殺処分だ」
W博士は他に選択肢がなかった。最終的な方法をとった。
アングレをできるだけ傷つけ、体が回復しなければいけないと強制的にわからせた。
そして、核戦争が起きた。W博士はアングレに対して本当の愛情があった。自分の子供のようにアングレに接していた。我が子をに行かせたくなかったのだ。
だから、彼はアングレは眠らせることにした。彼の未来を想像し、あの仮面の中にスマホと注射器を入れた。
アングレは呼吸が回復したアメリアを見て、安心した。しかし、次に襲ってきたのはスタラナ軍による爆撃だった。アングレは地面に落ちているスマホを手に取りズボンのポケットに突っ込んだ。そして、方向もわからないまま、走り出した。何日も…そして、見えてきたヘレニムの第二の防衛線
今年のクリスマスは最悪のものとなったのだ…
~12月29日ヘレニム軍が国際都市からの撤退を宣言~
一方その頃アメリアはやっとヘレニム国内への撤退を果たした。
寒い冬でアメリアは身にコートを纏っていた。隣ではいつものように上半身裸のアングレがいた。

「アメリア!行こう!これからは楽しい未来が待ってるはずさ!」
「うん。アングレ、ありがとう」
to be continued…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる

月都七綺
青春
『はっきりとした意識の中で見る夢』 クラスメイトは、たしかにそう言った。 周囲の期待の圧から解放されたくて、学校の屋上から空を飛びたいと思っている優等生の直江梵(なおえそよぎ)。 担任である日南菫(ひなみすみれ)の死がきっかけで、三ヶ月半前にタイムリープしてしまう。それから不思議な夢を見るようになり、ある少女と出会った。 夢であって、夢でない。 夢の中で現実が起こっている。 彼女は、実在する人なのか。 夢と現実が交差する中、夢と現実の狭間が曖昧になっていく。 『脳と体の意識が別のところにあって、いずれ幻想から戻れなくなる』 夢の世界を通して、梵はなにを得てどんな選択をするのか。 「世界が……壊れていく……」 そして、彼女と出会った意味を知り、すべてがあきらかになる真実が──。 ※表紙:蒼崎様のフリーアイコンよりお借りしてます。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。 そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。 悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。 「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」 こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。 新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!? ⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...