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ウキウキウォッチング

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 授業中、ある男子生徒が隣の席に座る女子生徒を見ている。
 (あ、額に脂汗がにじんできた)
 この女子生徒は生徒会長。
 彼は一年の春に三日連続で遅刻して以来彼女に目を着けられ、ことあるごとにクラスメイト達の前でやり玉に挙げられ、叱責されてきた。
 それ以降彼のクラスでは彼女に叱咤される彼は風物詩と化し、クラスでの笑いものにされてきた。
 クラスメイト達の前で馬鹿にした目で自分を叱ってきた彼女にいよいよ復讐する決意をしたのだ。
 動物園の虎用の下剤を手に入れ、今日は日直になったのでクラスの鍵を担当することとなり、クラスの男子達が体育の授業で出て行った後、男子更衣室に使用された教室の鍵を掛ける前に彼女の水筒に入れたのだ。
 だから今は隣の席に座る彼女の様子をわくわくしつつうかがっていた。
 (あ、目に涙が浮かんできた)
 本当は今すぐにでもトイレに行きたいだろうに気丈な生徒会長はあくまでも平成を装っていた。
 顔が青ざめてきた。
 (ふふふ、漏らすか?それとも手を上げてトイレに行くか?)
 歯を食いしばっている。
 ちらちらと教室の時計を見ていた。
 (ふふふ、残念だったな。まだこの授業は始まったばかりだ)
 「う・・・う・・・」
 食いしばった歯の間からうめき声が漏れ出した。
 (おお、体が震えだした)
 ぐぎゅるるるるるる。
 (お、腹から音が聞こえた。もうそのときは近いな)
 彼女の手が一瞬制服に包まれた腹に伸びるかと思われたがすぐ引っ込めた。
 (おお、さすがは気丈な生徒会長だ)
 腹痛がしていると言うことを悟られたくないのだろう。
 プスプス。
 彼女の尻から音が聞こえた。
 「うっ、くさい!」
 彼女の後ろの席に座っている生徒が思わず声を上げ、鼻をつまんだ。

 キーンコーンカーンコーン。
 終業を告げるチャイムが鳴った。
 (くっ、虎用の下剤をまさか耐えきるとは・・・)
 漏らすことを期待していた彼は思わずうなった。
 みんなが見ている前でお漏らししてその威厳を失墜することが狙いだったのに。
 彼女は無論トイレに直行したがそれでも焦った様子はなく、いつものようにお上品に歩いてトイレに向かった。

 次の授業。
 「生徒会長はお休み?」
 彼女は出てこなかった。
 (きっとトイレから動けなくなっているんだろ)
 彼が思ったとおりだった。
 教育者が女子トイレに向かった。
 コンコン。
 運良く女性教師だったから個室をノックできた。
 「大丈夫?」
 「も、もうトイレから離れられません・・・」
 弱々しい声が中から聞こえてきた。
 後に彼女はトイレの花子さんとなって語り継がれる。
 都市伝説などに出てくるトイレの花子さんの正体とは実は彼女のことなのである。
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