けしてまねをなさることのなきようにお願いします

くのいち

　「舞美」
　忍者屋敷で忍者の頭領が呼んだ。
「お呼びでございますか」
　くのいちがその前に現れた。
「幹山の村で百姓一揆が起きたらしい、行って調べてまいれ」
　「ははーっ」
　くのいちは消えた。

　峠の茶屋。
　女が一人来た。
　どかっと腰を下ろした。
　「お早いおつきでございます」
　おやじが茶を出した。
　ごくごく。
　彼女が茶を飲んだ。
　「茶代はここにおくわ」
　「へーい、毎度」

　しばし山道を歩む彼女。
　「ううっ」
　ギュルルル。
　腹痛に襲われた。
　「こ、このあたりに厠はあの茶屋くらい・・・」
　仕方なく引き返した。
　「ち、ちょっと厠を・・・」
　「あ、あそこでございます」
　とびこむ彼女。
　着物のすそをまくって座ったところで
　ぐさっ。
　「んぎゃっ！」
　尻を一突きされた。
　「ふふふ、くのいち舞美。待っておったぞ」
　中から忍者が現れた。
　「し、知っていたのね。私だと・・・」
　そう、彼女の正体は舞美だった。
　「ふふふ、茶に下剤を入れ、お前が引き返してくるのを厠で待ち受けていたのだ！」
　「む、無念」
　ばたっ。
　実際、厠に隠れ、排便しに来た相手の尻を刺す、というのは忍者の暗殺術にあったそうである。