あるじ神社

虎 正規

文字の大きさ
上 下
2 / 20

弟に頭が上がらない

しおりを挟む
 バタン。
 厠から出てきた主弓。
 顔は青ざめ、頬はこけ、体はげっそりやせている。
 「はあー」
 肩で呼吸しつつ縁側に帰ってきた。
 よろよろよろよろ。
 「スピリット(もうカタカナで書こう)さんには兄妹いないの?」
 「ああ、うちとは逆で姉がいるらしいぞ」
 「スピリットさんが姉さんとくっついてくれれば兄さんは相手が私しかいなくなるわね?」
 「ふふ、そうはいくかな?」

 スピリットの家。
 スピリットはソファーで寝転び、鼻くそをほじくりつつコミックスを読み、たまに大笑いした。
 「ちょっとスピちゃん、洗物お母さんに頼まれてるでしょ?」
 「やーだね、姉ちゃんやっといてよ」
 「ちょっと、どうして私がやらなきゃいけないのよ?」
 スピリットがタバコの箱を出した。
 「あっ!」
 「姉ちゃんの部屋の机に入ってたよ?」
 「勝手に私の部屋に入ったわね?」
 「お母さんにでもばらしてやろうか?」
 「ううっ!」
 「そんなわけで・・・」
 スピリットは姉にエプロンをつけさせ、
 「よろしく」


 数秒後。
 スピリットにつけさせられたエプロン姿で洗物をしている姉。
 「やあ、がんばってる?」
 スピリットが台所に入ってくる。
 「何だ、ちゃんと汚れが落ちていないじゃないか。ちゃんと洗え」
 皿を手にとって言う。
 「ううっ」
 スピリットが出て行った台所の戸をにらみつけ、
 「くやしい!くやしいわ」
 と叫んだ。
 と、いうわけで弓の思いとは裏腹にスピリットが姉とくっつく確率はなさそうだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アネモネ

ぱる@あいけん風ねこ
BL
夏休みが終わって、二学期が始まると同時に転校してきたイケメンは、転校初日に告白されていた。 ※続きは鋭意執筆中です。 ※気長にお待ちくださったら嬉しいです。

純白のレゾン

雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》 この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。 親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。

Fragment-memory of lilac-

黒乃
BL
小説内容の無断転載・無断使用・自作発言厳禁 Repost is prohibited. 무단 전하 금지 禁止擅自转载 【Fragment-memory of future-】に登場しているヤク・ノーチェならびにスグリ・ベンダバルの過去編。こちらは番外編となっております。 二人の出会いから本編一部作目までの物語です。 カクヨムでは先行して連載中です。 ── それは小さな奇跡の物語 ※本作は「Fragment-memory of future-」ならびに「Fragment-memory of futureⅡ-」未読の場合はネタバレ要素も含まれるので、ご注意ください。 Copyright 2020 黒乃

漢方薬局「泡影堂」調剤録

珈琲屋
BL
母子家庭苦労人真面目長男(17)× 生活力0放浪癖漢方医(32)の体格差&年の差恋愛(予定)。じりじり片恋。 キヨフミには最近悩みがあった。3歳児と5歳児を抱えての家事と諸々、加えて勉強。父はとうになく、母はいっさい頼りにならず、妹は受験真っ最中だ。この先俺が生き残るには…そうだ、「泡影堂」にいこう。 高校生×漢方医の先生の話をメインに、二人に関わる人々の話を閑話で書いていく予定です。 メイン2章、閑話1章の順で進めていきます。恋愛は非常にゆっくりです。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...