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灯火

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 三つのグループがそれぞれ来たのではない、第四の道を僕たちは歩いた。

 ライトと僕は辺りをキョロキョロ見廻しながら最後尾で付いて行く。
「何か視える?」
「ううん。ヒヨリの視えているモノと同じモノしか視えてないと思う」
 ライトがそう言うのだから怪しいモノは居ないのだろう。外なら兎も角この中では僕もライトと同じ視え方をしているのかも知れない。それはそれで不安要素が増えて来るけれど。
 これは多分そういうんじゃない。
 僕は先行く人の手に握られた、時代はずれの携帯を見ながら考える。
 花火大会は毎年同じ日に行われるから、日付けは一緒。僕が知ってる限りずっと。
 でも多分、年の方は……。

「あ、何か灯りが見えるよ」
 先頭をいく三笹さんが声を上げた。
 嬉しそうにこちらを振り返ってくる。
 彼も迷子の男の子と手を繋いでいる。その男の子も三笹さんと一緒にこちらを振り返って、にっこり微笑んで繋いでるのとは違う手を振る。
「うふふ」
 僕もライトと手を繋いでるのと反対の手を振り返した。

 やがて歩を進めるごとに、チラチラする灯りが大きくなって来て、それは森の中の家を照らし出した。

 森の中に小さな家が現れた。
 こじんまりした二階家で、外から観る限り清潔にしっかりと設られている。
 ボロボロでなく、そして荘厳過ぎて人を寄せ付けない雰囲気もない。
 何か人をホッとさせる家だ。

「テンプレ過ぎる」
 ライトが呟く。

「すいませーん!
 誰かいらっしゃいますかー?!」
 三笹さんは躊躇いなく、着いた途端にドアをどんどん叩いた。

 ドアは直ぐに開いて、中から可愛らしい女の子が現れた。ピンクの髪色のツインテールが違和感なく似合っている。

「はい」

「あの僕たち道に迷ってしまって、森を抜けられる方法を知りたいんです」
「はい?」
「外に出る道を知りたいんです」
 三笹さんの言い方では伝わらないと思ったのだろう。若いスーツの人が言い換える。でも多分、三笹さんの方が合ってるんだろうな。

 ライトと僕は〈女神の泉〉に行きたいんだけれど。
 そして今度は妖精から逃げない。

「お前たちは招待しとらん」
 背後から声が聞こえて、僕たちはびっくりして振り返った。
 杖を突いた白髪の老人が僕たちを見ていた。突いているといっても、杖なしでは歩けない様ではない。


「ヒヨリ、ライト、コウは入りなさい」
 見ず知らずの人にいきなり名前を呼ばれて固まってしまう。
「あの、何故僕たちの名前ご存知なんですか?」
 ライトが訊く。
「三笹さんって、下の名前“コウ”って言うの?」
「うん。“海を航る”“航海”の“航”で“コウ”」

「お前たちは約束があったからな。
 私はトラヴィス=クーガーだ。彼女はエルだ。ただのエル。始めましてではないが忘れているだろう」
 ライトの質問に答えている様ないない様な答えをくれる。

「あの……」
 で仕事のある人たちが躊躇いがちに声を掛ける。
 渋々といった様子でトラヴィスは答えた。
「しょうがない。お前たち三人も招待しよう。何時迄も迷っていられると目障りでならん。
 エル。八人分のお茶の用意を」
「はい。トラヴィス」

 エルがトラヴィスに応えて大きく扉を開く。

 僕たちは蜥蜴のトラヴィスの招待を受けて、彼の家の中に招き入れられた。



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