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最終章 そこに踏み入るには
第241話 再生、そして資格
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◆◆◆
『____ 光太朗』
(……あぁ、またかよ……)
光太朗は横になったまま、瞼を薄く開いた。
頬に感じるのは堅い木の感触。温かみは一切ない。
それなのに、時折耳に甦るリーリュイの声は、いつも底抜けに温かく優しい。
誰もいない部屋をじっと見た後、光太朗はまた瞳を閉じた。
全て終わってしまってからの喪失感は、光太朗の予想以上だった。
これまで光太朗は、リーリュイを救うことだけに全てを捧げてきた。走って走って、走り切って、そして、全て終わってしまった。
ぽっきり折れてしまった心を、前のようには取り戻せないでいる。
光太朗は怠い腕を動かして、腹に触れた。
(……俺の身体、全部使っていいから……産まれて来いよ……)
じわりと滲んだ涙が、板の間に落ちていく。
以前もこうして、独り泣いたことがあった。あの時は自分が弱くなったと嘆いたが、今もまったく変わっていない。
腹の子のために強くならなければならないのに、もう光太朗にはどうする事も出来なかった。
◇◇◇
広場の一件から数日が経ち、リーリュイは肆羽宮の庭に居た。
見上げれば、巨木に黄金の花が咲き乱れているのが目に映る。ずっと花を付ける事の無かった、アキーシャの木だ。
アキーシャの木だけではない。肆羽宮の庭にある植物は、真冬だというのに競い合うように花を付けている。
そこから香るのは、甘く優しい香りだった。
「リーリュイ!」
庭の向こうから現れたのは、穏やかな笑みを浮かべたアキネだ。彼女はリーリュイに近付くと、ふわりとその身体を抱きしめる。
腹の上までしか背丈が届かない母親に抱きしめられ、リーリュイは短く嘆息した。
母子としての関わりを知らなかったリーリュイは、アキネからの愛情表現にまだ慣れない。
「……母上……」
「ふふ、良いじゃない。……数十年分を、取り戻さないと」
アキネは鈴の鳴るような声で笑うと、アキーシャの木を見上げた。すぅと息を吸い込んで、リーリュイへと視線を戻す。
「はぁ、晄露の良い匂いね。……私たちを助けてくれた、神の吐息だわ」
「……」
「ここに晄泉が湧かなければ、きっと私たちは操られたままだった。……本当に、奇跡だわ」
国軍が国境に攻め入る頃、アキネはこの庭に花が咲き始めている事に気付いたそうだ。
それから徐々に自分を取り戻し、密にルイナスと連絡を取っていたのだという。
王を殺したのはルイナスの独断だったが、自分も加担したとアキネは言い張った。
しかし王妃の悪行が明るみになると、さすがに彼女らを罰する声も無くなる。ルイナスに謹慎命令が出されただけで、王の殺害の件は幕を閉じた。
「……母上の愛した人は、ルイナス妃だったのですね」
「そうよ。彼女を心から愛していた。……でも、許されない恋だったわ。……でもね……」
アキネは手を伸ばし、リーリュイの頬を両手で挟む。そして顔をくしゃりと歪めると、泣き笑いような表情を浮かべた。
「……あなたが生まれた時、本当に嬉しかった。誓うわ。……貴方の事を、本当に愛してる」
「……はい……」
「今までずっと、辛かったでしょう。……ごめんね、リーリュイ。愛してるわ」
リーリュイの胸を、じんわりと温かい風が包んだ。この温かさを感じる事が出来るのも、彼のお陰だと感じる。
アキネが鼻を啜って、リーリュイの腕を優しく擦った。
「……彼を探しに行くの?」
「……はい。……兵士たちも戻ってきて、オーウェン兄上もいます。……暫く留守にしますが、母上は構いませんか?」
「もちろんよ! 行ってきなさい」
風に揺れる髪を耳に掛け、アキネは庭を見渡す。
「彼の事は覚えていないけど、肆羽宮にいたんでしょ? きっと彼が、晄泉を呼んでくれたんだと思うわ」
「……はい」
リーリュイの記憶が戻ることは無かった。しかし確実に『彼』の存在が浮き上がり始めている。
失った記憶が戻るという感覚ではない。細胞一つ一つが彼の記憶を新しく形作っていく。そんな感覚だった。
この数日間、リーリュイの心の穴が、じわじわと『彼』で埋まっていくのを感じていた。
________
リーリュイがリガレイアの領域へと入ると、村人が終雪殿まで案内してくれた。
途中クジロが造った橋を渡る際、村人が彼の話を楽しそうにリーリュイへと聞かせてくれた。
良く笑う、子供が好きな人であった事。村人とも分け隔てなく接する人だったという事。そのクジロが最近姿を見せなくて、村人が心配しているという事。
(……そうだ、彼は孤児院にいた。……とても子供好きで……)
彼が笑っている姿も、今でははっきりと思い浮かぶ。まるでパズルのピースが埋まっていくように、彼が形作られて行く。
終雪殿に招かれたリーリュイは、そこで一色と対面した。
両脇には峨龍とカディールの姿もあり、3人揃って口を横一文字に引き結んでいる。
「……やっと来たか。いや、存外早かったかもな。ザキュリオ王」
「いえ。まだ王と呼ばれるような存在ではありません。……今回は、クジロの件で参りました」
「分かっている。しかし……記憶は戻っていないのだろう?」
一色に言われ、リーリュイは小さく頷いた。峨龍とカディールが肩を落とすのが見える。
「……思い出してはいませんが、再形成されています」
「……は?」
リーリュイは自身の胸に手を当て、視線を下げた。
「彼の存在は、私の全てに刻み込まれていたようです。記憶だけでなく、細胞一つ一つに彼が存在していました。……それらが、彼の全てをまた作り上げようとしています」
「ああん……?」
「……そ、それは……」
首を捻る一色と峨龍の横で、カディールが興奮したようにリーリュイを見遣る。
「……っそれは、他の者たちには無かった反応です……! イチ! これはいけるかもしれないよ!」
「……しかし、思い出しておらんのだろう?」
一色は深く溜息を吐いて、リーリュイを見た。その視線は鋭く、目の前の人物を屈服させんとする王の威厳で溢れている。
「我々はな、もうあの子に辛い思いをさせたくはない。微塵もだ。……加えて、やはり九代屋は、リガレイア国に来るはずだった転移者である可能性が高い」
「……」
ザキュリオが転移者を無理やり引きずり下ろしていた事は、ウィリアムの証言で明らかになった。王妃に操られての事だったが、ザキュリオが大きな罪を犯していた事は事実だ。
一色が峨龍とカディールをちらりと見遣り、憂いを含んだ溜息を漏らす。
「……俺が在位して、約200年だ。もう寿命は近いし、引退はもっと近いだろう。……あの子はこの地に馴染んでいたし、この国を牽引する転移者になるはずだったと、俺は思ってる」
「しかしなぁ」と一色は零し、項垂れたように頭を垂れる。
「あの子の幸せは、やはりお前といる事だ。それは確実なんだが、さっきも言った通り……あの子が悲しむ姿をもう見たくはない」
「……もう、悲しませる事はありません。そう言いたいのですが、私には前例があります」
王妃の策略だったとはいえ、大事な人が自分から消える事を許してしまった。自分の不甲斐なさに、リーリュイは何度打ちのめされたか分からない。
リーリュイは胸いっぱいに息を吸い込み、一色の双眸を見据えた。一色の黄金の瞳は、どこか彼と似ている。
「……だからこそ、見守って欲しいのです。私はこの身を捧げて彼を守ります。しかし今回のような事が、またあるかもしれません。あなた方には、引き続き彼を見守って欲しいと願います。そして私がまた間違いを起こす事があれば、どんな手段を用いても良い。私を正してください」
「……ほぉ。自分の未熟さを認めるか? 一国の王ともなろう者が」
「私は国の王である前に、彼に寄り添う存在になりたいのです。彼のために強くなる努力は惜しみません。……彼を守るために、一緒に彼を見守っていてはくれませんか」
リーリュイの真っ直ぐな言葉に、カディールが微笑んだ。峨龍の表情もいくらか和らいだように感じる。
一色は短く溜息を吐くと、髭の無い顎を擦り始めた。
「……あい、わかった。まぁこちらとしても、九代屋との関わりを切るつもりはなかったがな。……さて、ここからが問題なのだが……九代屋は今、家出中でのぉ」
「家出……?」
「ああ。まぁ、本人の口から『家出する』と言うたから、厳密に言えば家出と言わんのかもしれんが……」
聞けば数日前、クジロは終雪殿を出たらしい。アゲハと共に発ったが、後日アゲハから『クジロと別れた』と連絡があったのだという。
「……あの子は淵龍にランパルの兵舎に留まるように言い、独りどこかに行ってしまったようだ。滞在先は分かっているが、誰一人手が出せん」
「……手が出せない?」
「あの場所は、あの子の心そのものだ。踏み入るには、きっと資格がいる」
リーリュイが眉根を寄せると、一色が頭を抱えて唸り出した。一頻り唸ったあと、自身を落ち着けるかのように何度も頷く。
「よし、決めた。……あの子の滞在先はお前には教えん。自分で導き出して、あの子の心に踏み入ってこそ、あの子の側に居る資格があると俺は思う。……出来るか?」
「出来ます」
「よし。ではお前に任せる。もしもお前が失敗したら、我々は強行突破するつもりだ。……このままでは、あの子の身体が持たんからな」
リーリュイが力強く頷くと、終雪殿の庭に何かが降り立った。ドラゴンに似た姿のそれが神燐一族だと、リーリュイはすぐに理解した。
「乗っていけ。ランパルまで直ぐに着く」
「ありがとうございます」
別れの挨拶もそこそこに、リーリュイはドラゴンの背へ乗り込んだ。
『____ 光太朗』
(……あぁ、またかよ……)
光太朗は横になったまま、瞼を薄く開いた。
頬に感じるのは堅い木の感触。温かみは一切ない。
それなのに、時折耳に甦るリーリュイの声は、いつも底抜けに温かく優しい。
誰もいない部屋をじっと見た後、光太朗はまた瞳を閉じた。
全て終わってしまってからの喪失感は、光太朗の予想以上だった。
これまで光太朗は、リーリュイを救うことだけに全てを捧げてきた。走って走って、走り切って、そして、全て終わってしまった。
ぽっきり折れてしまった心を、前のようには取り戻せないでいる。
光太朗は怠い腕を動かして、腹に触れた。
(……俺の身体、全部使っていいから……産まれて来いよ……)
じわりと滲んだ涙が、板の間に落ちていく。
以前もこうして、独り泣いたことがあった。あの時は自分が弱くなったと嘆いたが、今もまったく変わっていない。
腹の子のために強くならなければならないのに、もう光太朗にはどうする事も出来なかった。
◇◇◇
広場の一件から数日が経ち、リーリュイは肆羽宮の庭に居た。
見上げれば、巨木に黄金の花が咲き乱れているのが目に映る。ずっと花を付ける事の無かった、アキーシャの木だ。
アキーシャの木だけではない。肆羽宮の庭にある植物は、真冬だというのに競い合うように花を付けている。
そこから香るのは、甘く優しい香りだった。
「リーリュイ!」
庭の向こうから現れたのは、穏やかな笑みを浮かべたアキネだ。彼女はリーリュイに近付くと、ふわりとその身体を抱きしめる。
腹の上までしか背丈が届かない母親に抱きしめられ、リーリュイは短く嘆息した。
母子としての関わりを知らなかったリーリュイは、アキネからの愛情表現にまだ慣れない。
「……母上……」
「ふふ、良いじゃない。……数十年分を、取り戻さないと」
アキネは鈴の鳴るような声で笑うと、アキーシャの木を見上げた。すぅと息を吸い込んで、リーリュイへと視線を戻す。
「はぁ、晄露の良い匂いね。……私たちを助けてくれた、神の吐息だわ」
「……」
「ここに晄泉が湧かなければ、きっと私たちは操られたままだった。……本当に、奇跡だわ」
国軍が国境に攻め入る頃、アキネはこの庭に花が咲き始めている事に気付いたそうだ。
それから徐々に自分を取り戻し、密にルイナスと連絡を取っていたのだという。
王を殺したのはルイナスの独断だったが、自分も加担したとアキネは言い張った。
しかし王妃の悪行が明るみになると、さすがに彼女らを罰する声も無くなる。ルイナスに謹慎命令が出されただけで、王の殺害の件は幕を閉じた。
「……母上の愛した人は、ルイナス妃だったのですね」
「そうよ。彼女を心から愛していた。……でも、許されない恋だったわ。……でもね……」
アキネは手を伸ばし、リーリュイの頬を両手で挟む。そして顔をくしゃりと歪めると、泣き笑いような表情を浮かべた。
「……あなたが生まれた時、本当に嬉しかった。誓うわ。……貴方の事を、本当に愛してる」
「……はい……」
「今までずっと、辛かったでしょう。……ごめんね、リーリュイ。愛してるわ」
リーリュイの胸を、じんわりと温かい風が包んだ。この温かさを感じる事が出来るのも、彼のお陰だと感じる。
アキネが鼻を啜って、リーリュイの腕を優しく擦った。
「……彼を探しに行くの?」
「……はい。……兵士たちも戻ってきて、オーウェン兄上もいます。……暫く留守にしますが、母上は構いませんか?」
「もちろんよ! 行ってきなさい」
風に揺れる髪を耳に掛け、アキネは庭を見渡す。
「彼の事は覚えていないけど、肆羽宮にいたんでしょ? きっと彼が、晄泉を呼んでくれたんだと思うわ」
「……はい」
リーリュイの記憶が戻ることは無かった。しかし確実に『彼』の存在が浮き上がり始めている。
失った記憶が戻るという感覚ではない。細胞一つ一つが彼の記憶を新しく形作っていく。そんな感覚だった。
この数日間、リーリュイの心の穴が、じわじわと『彼』で埋まっていくのを感じていた。
________
リーリュイがリガレイアの領域へと入ると、村人が終雪殿まで案内してくれた。
途中クジロが造った橋を渡る際、村人が彼の話を楽しそうにリーリュイへと聞かせてくれた。
良く笑う、子供が好きな人であった事。村人とも分け隔てなく接する人だったという事。そのクジロが最近姿を見せなくて、村人が心配しているという事。
(……そうだ、彼は孤児院にいた。……とても子供好きで……)
彼が笑っている姿も、今でははっきりと思い浮かぶ。まるでパズルのピースが埋まっていくように、彼が形作られて行く。
終雪殿に招かれたリーリュイは、そこで一色と対面した。
両脇には峨龍とカディールの姿もあり、3人揃って口を横一文字に引き結んでいる。
「……やっと来たか。いや、存外早かったかもな。ザキュリオ王」
「いえ。まだ王と呼ばれるような存在ではありません。……今回は、クジロの件で参りました」
「分かっている。しかし……記憶は戻っていないのだろう?」
一色に言われ、リーリュイは小さく頷いた。峨龍とカディールが肩を落とすのが見える。
「……思い出してはいませんが、再形成されています」
「……は?」
リーリュイは自身の胸に手を当て、視線を下げた。
「彼の存在は、私の全てに刻み込まれていたようです。記憶だけでなく、細胞一つ一つに彼が存在していました。……それらが、彼の全てをまた作り上げようとしています」
「ああん……?」
「……そ、それは……」
首を捻る一色と峨龍の横で、カディールが興奮したようにリーリュイを見遣る。
「……っそれは、他の者たちには無かった反応です……! イチ! これはいけるかもしれないよ!」
「……しかし、思い出しておらんのだろう?」
一色は深く溜息を吐いて、リーリュイを見た。その視線は鋭く、目の前の人物を屈服させんとする王の威厳で溢れている。
「我々はな、もうあの子に辛い思いをさせたくはない。微塵もだ。……加えて、やはり九代屋は、リガレイア国に来るはずだった転移者である可能性が高い」
「……」
ザキュリオが転移者を無理やり引きずり下ろしていた事は、ウィリアムの証言で明らかになった。王妃に操られての事だったが、ザキュリオが大きな罪を犯していた事は事実だ。
一色が峨龍とカディールをちらりと見遣り、憂いを含んだ溜息を漏らす。
「……俺が在位して、約200年だ。もう寿命は近いし、引退はもっと近いだろう。……あの子はこの地に馴染んでいたし、この国を牽引する転移者になるはずだったと、俺は思ってる」
「しかしなぁ」と一色は零し、項垂れたように頭を垂れる。
「あの子の幸せは、やはりお前といる事だ。それは確実なんだが、さっきも言った通り……あの子が悲しむ姿をもう見たくはない」
「……もう、悲しませる事はありません。そう言いたいのですが、私には前例があります」
王妃の策略だったとはいえ、大事な人が自分から消える事を許してしまった。自分の不甲斐なさに、リーリュイは何度打ちのめされたか分からない。
リーリュイは胸いっぱいに息を吸い込み、一色の双眸を見据えた。一色の黄金の瞳は、どこか彼と似ている。
「……だからこそ、見守って欲しいのです。私はこの身を捧げて彼を守ります。しかし今回のような事が、またあるかもしれません。あなた方には、引き続き彼を見守って欲しいと願います。そして私がまた間違いを起こす事があれば、どんな手段を用いても良い。私を正してください」
「……ほぉ。自分の未熟さを認めるか? 一国の王ともなろう者が」
「私は国の王である前に、彼に寄り添う存在になりたいのです。彼のために強くなる努力は惜しみません。……彼を守るために、一緒に彼を見守っていてはくれませんか」
リーリュイの真っ直ぐな言葉に、カディールが微笑んだ。峨龍の表情もいくらか和らいだように感じる。
一色は短く溜息を吐くと、髭の無い顎を擦り始めた。
「……あい、わかった。まぁこちらとしても、九代屋との関わりを切るつもりはなかったがな。……さて、ここからが問題なのだが……九代屋は今、家出中でのぉ」
「家出……?」
「ああ。まぁ、本人の口から『家出する』と言うたから、厳密に言えば家出と言わんのかもしれんが……」
聞けば数日前、クジロは終雪殿を出たらしい。アゲハと共に発ったが、後日アゲハから『クジロと別れた』と連絡があったのだという。
「……あの子は淵龍にランパルの兵舎に留まるように言い、独りどこかに行ってしまったようだ。滞在先は分かっているが、誰一人手が出せん」
「……手が出せない?」
「あの場所は、あの子の心そのものだ。踏み入るには、きっと資格がいる」
リーリュイが眉根を寄せると、一色が頭を抱えて唸り出した。一頻り唸ったあと、自身を落ち着けるかのように何度も頷く。
「よし、決めた。……あの子の滞在先はお前には教えん。自分で導き出して、あの子の心に踏み入ってこそ、あの子の側に居る資格があると俺は思う。……出来るか?」
「出来ます」
「よし。ではお前に任せる。もしもお前が失敗したら、我々は強行突破するつもりだ。……このままでは、あの子の身体が持たんからな」
リーリュイが力強く頷くと、終雪殿の庭に何かが降り立った。ドラゴンに似た姿のそれが神燐一族だと、リーリュイはすぐに理解した。
「乗っていけ。ランパルまで直ぐに着く」
「ありがとうございます」
別れの挨拶もそこそこに、リーリュイはドラゴンの背へ乗り込んだ。
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