155 / 248
いざ、競技会!
第152話 抗争型剣技会
しおりを挟む
________
光太朗は予習の為に、競技会についてのメモを開く。どれも単純明快なルールの為覚える必要はないが、念のためだ。
剣技会は3人チームで戦う競技で、形式は戦型、噛み砕いて言えばヤンキーの抗争型だ。
広い闘技場を戦場のように使って、全員で一斉に剣技を競う。と言えば聞こえは良いが、実際は一斉に行われる殴り合いだ。
使われる剣が模擬剣のため、斬ることは出来ず『殴る』が正しいだろう。
全員が腕章を付けて、剣を振るいながらそれを奪い合う。最終的に獲得した腕章の数で、各チームの勝敗が決まるのだ。
チーム長である「大将」の金腕章を獲得すると、特別に獲得数が2倍になる。その為、大将は狙われやすい。
(ヤンキーの抗争とか、そんな感じのイメージだよな……。わーって皆で殴りかかって、頭を倒して……)
「おい、コウ」
メモから目線を上げると、チームを組んでいるガイルが、腰に手を当てて光太朗を見つめていた。もう一人のルークは、不安そうに眉を垂らしている。どちらも1班の班員だ。
「どうした?」
「他の騎士団、選手交代が相次いでるらしい……。隊長クラスも多く出場するみたいだぞ」
「何かあったのか?」
「……恐らく、さっきの騒ぎのせいだと思う。コウを負かす事が出来たら、その……」
言葉を濁すガイルを見て、光太朗は笑いながら相槌を打った。
「なぁるほど。みんなスケベだなぁ」
「わ、笑ってる場合じゃない! と、とりあえず俺たち2人が守るから、試合終了までコウは腕章を守り通してくれ」
「でもそれだと、試合に勝てないだろ?」
腕章を積極的に獲りにいかないと、上位に入れない。光太朗が目指すのは優勝なので、守りに徹することなど考えていない。
拡声魔法で、選手交代のアナウンスが流れ始めた。ガイルのいう通り、殆どの騎士団が交代しているようだ。
光太朗は頭を掻き回して、苦く笑う。自分から言った事ではあるが、これほど反応があると正直気持ちが悪い。
『以上が、選手交代のご案内です。……ああ、最後にもう一件ございましたので、お知らせを……っええ!?』
アナウンスの声を聞きながら、光太朗はぼんやりとブーツの紐を締め直す。次の瞬間、何故が背筋がぞくりと冷えた。
光太朗が振り返ったと同時に、慌てたようなアナウンスが響く。
『魔導騎士団、選手交代です! なんと、リーリュイ団長の参戦です! これは、前代未聞の剣技会になりますよ!!』
わっと歓声が沸きあがる中、光太朗は目の前の人物に、目も口もぽかんと開かせた。
リーリュイが、闘技場を睨んだまま立っている。いつの間にかガイルもルークもいない。
「なにしてんの?」
光太朗の言葉は、歓声にかき消された。リーリュイは光太朗を見ないまま、そこに佇んでいる。
いつもの冷たい皇子モードや、熱い団長モードでもない。何となく拗ねたようなリーリュイは、何も言わず闘技場を睨んでいる。
『リーリュイ殿下からハンデを頂きまして、2名の選手との交代になります。魔導騎士団は2名で戦って頂く事になりますが、これは期待できそうですねぇ』
(……なるほど、だからガイルとルークが居ないのか。全然気が付かなかったな)
光太朗はリーリュイに向き直り、何となく怪訝そうな顔を覗き込む。
「リュウ? なんか怒ってる? っていうか、明日のために休んでおかなきゃ駄目だろ?」
「………問題ないし、明日も出場する君に言われたくない。……問題は別にあるだろう?」
「……問題?」
光太朗が首を傾げると、リーリュイの眉根がこれでもかと寄る。
同時に試合開始の合図が鳴り響き、2人は走り出した。
闘技場のあちこちから一斉に、騎士らがこちらへ走ってくる。光太朗が短剣を抜こうとすると、リーリュイが前へと躍り出た。
彼は目が追えないほどの速さで抜刀し、向かってきた騎士の胴を斬り払う。
くぐもった声を漏らしながら身体を折る騎士を蹴りつけ、リーリュイはその腕から腕章をむしり取った。
その手つきは、いつものリーリュイからは考えられないほど乱暴だ。
「リュウ? ほんとにどうしたんだよ!? 何を怒ってる?」
「怒ってる? 怒ってるに決まってる!」
リーリュイは光太朗を振り返り、鼻梁に皺を寄せた。そして剣で、今にも襲いかからんとする騎士らを指し示す。
「こいつらを見てみろ! みんな君と一晩過ごしたいと思っているんだぞ!」
「……ああ、その事か……。いや、俺男だし……こんなに反応を頂けるとは……」
「本当に君は! 何度言ったら分かってくれる!?」
リーリュイは叫びつつ振り返り、また騎士を薙ぎ払う。
光太朗も脇から来た騎士に肘鉄を喰らわせた。バランスを崩した側頭部に短剣を叩き込んで、腕章をむしり取る。
「だって俺は、抱いてやるって言ったんだぞ! こんなに興味があるやつが居るとは思わねぇし!」
「抱かれる方に決まっているだろう!!」
「……やっぱ、そっち?」
既に腕章を3つ手にしているリーリュイが、信じられないといった目を光太朗へ向けた。
光太朗は予習の為に、競技会についてのメモを開く。どれも単純明快なルールの為覚える必要はないが、念のためだ。
剣技会は3人チームで戦う競技で、形式は戦型、噛み砕いて言えばヤンキーの抗争型だ。
広い闘技場を戦場のように使って、全員で一斉に剣技を競う。と言えば聞こえは良いが、実際は一斉に行われる殴り合いだ。
使われる剣が模擬剣のため、斬ることは出来ず『殴る』が正しいだろう。
全員が腕章を付けて、剣を振るいながらそれを奪い合う。最終的に獲得した腕章の数で、各チームの勝敗が決まるのだ。
チーム長である「大将」の金腕章を獲得すると、特別に獲得数が2倍になる。その為、大将は狙われやすい。
(ヤンキーの抗争とか、そんな感じのイメージだよな……。わーって皆で殴りかかって、頭を倒して……)
「おい、コウ」
メモから目線を上げると、チームを組んでいるガイルが、腰に手を当てて光太朗を見つめていた。もう一人のルークは、不安そうに眉を垂らしている。どちらも1班の班員だ。
「どうした?」
「他の騎士団、選手交代が相次いでるらしい……。隊長クラスも多く出場するみたいだぞ」
「何かあったのか?」
「……恐らく、さっきの騒ぎのせいだと思う。コウを負かす事が出来たら、その……」
言葉を濁すガイルを見て、光太朗は笑いながら相槌を打った。
「なぁるほど。みんなスケベだなぁ」
「わ、笑ってる場合じゃない! と、とりあえず俺たち2人が守るから、試合終了までコウは腕章を守り通してくれ」
「でもそれだと、試合に勝てないだろ?」
腕章を積極的に獲りにいかないと、上位に入れない。光太朗が目指すのは優勝なので、守りに徹することなど考えていない。
拡声魔法で、選手交代のアナウンスが流れ始めた。ガイルのいう通り、殆どの騎士団が交代しているようだ。
光太朗は頭を掻き回して、苦く笑う。自分から言った事ではあるが、これほど反応があると正直気持ちが悪い。
『以上が、選手交代のご案内です。……ああ、最後にもう一件ございましたので、お知らせを……っええ!?』
アナウンスの声を聞きながら、光太朗はぼんやりとブーツの紐を締め直す。次の瞬間、何故が背筋がぞくりと冷えた。
光太朗が振り返ったと同時に、慌てたようなアナウンスが響く。
『魔導騎士団、選手交代です! なんと、リーリュイ団長の参戦です! これは、前代未聞の剣技会になりますよ!!』
わっと歓声が沸きあがる中、光太朗は目の前の人物に、目も口もぽかんと開かせた。
リーリュイが、闘技場を睨んだまま立っている。いつの間にかガイルもルークもいない。
「なにしてんの?」
光太朗の言葉は、歓声にかき消された。リーリュイは光太朗を見ないまま、そこに佇んでいる。
いつもの冷たい皇子モードや、熱い団長モードでもない。何となく拗ねたようなリーリュイは、何も言わず闘技場を睨んでいる。
『リーリュイ殿下からハンデを頂きまして、2名の選手との交代になります。魔導騎士団は2名で戦って頂く事になりますが、これは期待できそうですねぇ』
(……なるほど、だからガイルとルークが居ないのか。全然気が付かなかったな)
光太朗はリーリュイに向き直り、何となく怪訝そうな顔を覗き込む。
「リュウ? なんか怒ってる? っていうか、明日のために休んでおかなきゃ駄目だろ?」
「………問題ないし、明日も出場する君に言われたくない。……問題は別にあるだろう?」
「……問題?」
光太朗が首を傾げると、リーリュイの眉根がこれでもかと寄る。
同時に試合開始の合図が鳴り響き、2人は走り出した。
闘技場のあちこちから一斉に、騎士らがこちらへ走ってくる。光太朗が短剣を抜こうとすると、リーリュイが前へと躍り出た。
彼は目が追えないほどの速さで抜刀し、向かってきた騎士の胴を斬り払う。
くぐもった声を漏らしながら身体を折る騎士を蹴りつけ、リーリュイはその腕から腕章をむしり取った。
その手つきは、いつものリーリュイからは考えられないほど乱暴だ。
「リュウ? ほんとにどうしたんだよ!? 何を怒ってる?」
「怒ってる? 怒ってるに決まってる!」
リーリュイは光太朗を振り返り、鼻梁に皺を寄せた。そして剣で、今にも襲いかからんとする騎士らを指し示す。
「こいつらを見てみろ! みんな君と一晩過ごしたいと思っているんだぞ!」
「……ああ、その事か……。いや、俺男だし……こんなに反応を頂けるとは……」
「本当に君は! 何度言ったら分かってくれる!?」
リーリュイは叫びつつ振り返り、また騎士を薙ぎ払う。
光太朗も脇から来た騎士に肘鉄を喰らわせた。バランスを崩した側頭部に短剣を叩き込んで、腕章をむしり取る。
「だって俺は、抱いてやるって言ったんだぞ! こんなに興味があるやつが居るとは思わねぇし!」
「抱かれる方に決まっているだろう!!」
「……やっぱ、そっち?」
既に腕章を3つ手にしているリーリュイが、信じられないといった目を光太朗へ向けた。
76
お気に入りに追加
2,890
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
出来損ないの次男は冷酷公爵様に溺愛される
栄円ろく
BL
旧題:妹が公爵家との婚約を破棄したので、代わりに出来損ないの次男が売られました
サルタニア王国シャルマン子爵家の次男であるジル・シャルマンは、出来損ないの次男として冷遇されていた。しかしある日父から妹のリリーがライア・ダルトン公爵様との婚約を解消して、第一王子のアル・サルタニア様と婚約を結んだことを告げられる。
一方的な婚約解消により公爵家からは『違約金を払うか、算学ができる有能な者を差し出せ』という和解条件が出されたため、なぜか次男のジルが公爵家に行くことに!?
「父上、なぜ算学のできる使用人ではなく俺が行くことに......?」
「使用人はいなくなったら困るが、お前は別に困らない。そんなのどちらをとるか明確だろう?」
こうしてジルは妹の婚約解消の尻拭いとして、冷酷と噂のライア・ダルトン公爵様に売られたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物(作中で年齢上がります)
ジル・シャルマン子爵令息(20▶︎21歳)
本作の主人公、本人は平凡だと思っているが頭は悪くない。
ライア・ダルトン公爵(18▶︎19歳)
ジルの妹に婚約破棄された。顔も良く頭もきれる。
※注意事項
後半、R指定付きそうなものは※つけてあります。
※お知らせ
本作が『第10回BL小説大賞』にて特別賞をいただきました。
このような素晴らしい賞をいただけたのも、ひとえに応援してくださった皆様のおかげです。
貴重な一票を入れてくださり、誠にありがとうございました。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話
いんげん
BL
僕の運命の番は一見もっさりしたガテンのおっさんだった。嘘でしょ!?……でも好きになっちゃったから仕方ない。僕がおっさんを幸せにする! 実はスパダリだったけど…。
おっさんα✕お馬鹿主人公Ω
おふざけラブコメBL小説です。
話が進むほどふざけてます。
ゆりりこ様の番外編漫画が公開されていますので、ぜひご覧ください♡
ムーンライトノベルさんでも公開してます。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる