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いざ、競技会!
第146話 第4皇子の憂鬱
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◇◇
_____ まったくもって無駄ばかりだ。
競技会の打ち合わせに参加しているリーリュイは、眉一つも動かさない。しかし心中は毒を吐き続けていた。
他の皇子は側近で済ませる打ち合わせも、リーリュイは律儀に参加する。毎年そうだった。彼には側近がいなかったのだから。
しかしリーリュイにも初めて側近が出来た。彼の事を思うと、頬が緩みそうになる。
(光太朗は、今どの辺だろうか。早く会いたい。10日なんて長すぎる……)
リーリュイはポータルで王都に来ているが、光太朗含めた本隊は陸路での移動となる。彼らが出立して、今日で8日目だ。
ランパルから王都ラグロまで早くて10日。幌馬車も共に移動するため、もっと遅くなるかもしれない。
10日以上も、光太朗と会えないのだ。その前も多忙ですれ違ってばかりいた。ロワイズで想いが通じ合った筈なのに、彼との関係は未だ何の進展もしていない。
「殿下。……リーリュイ殿下!」
「聞いている」
「本当に全ての競技に、フェンデを参加させるつもりですか?」
「そうだ。名簿にも彼の名があるはずだ」
競技会の役員たちは、揃って困惑の表情を浮かべる。中には口端がヒクついている者もいた。恐らく、魔導騎士団が勝つことに賭けている者たちだろう。
「脆弱なフェンデなど出せば、足手まといに決まっております! 競技会に参加させる意味が分かりません! 消極的な態度は良くありませんぞ!」
「毎年恒例の事だろう。競技会に積極的でない私は、過去にもこういう事をしてきたはずだ。……今年になって、なぜそのような事を聞く?」
「……っ!」
賭け事をしているからと、彼が言えるはずもない。
その役員は口を噤むが、別の役員からも抗議の声が上がる。
「魔法技会にも参加させるおつもりですか!? フェンデは魔法が使えぬでしょう? そのフェンデが危険なのでは?」
「……魔法を使えない者は参戦不可、とは規則にない」
「ですが……!」
「属性を持たせた武器で戦わせる。問題はない」
光太朗は、魔法を使えない。これは変わらなかった。
しかし彼は、対魔法戦闘も磨き上げている。
最近は、晄露を使った戦法も組み入れているようだ。競技会では使わないかも知れないが、キースも太鼓判を押している。
(しかし、キースや騎士らばかり狡いな……。私はいつも除け者だ……)
光太朗の側にいるために動いているのに、どんどん離れていく気がする。最後にキスをしたのはいつだったか。
顔を真っ赤に染める光太朗が、リーリュイの脳裏に浮かぶ。
その頬を両手で挟むと、彼は瞼を固く閉じる。顎に手を当てて上を向かせると彼は驚き、目を潤ませる。
光太朗はキスだけで、色んな表情を見せるのだ。これだけ可愛い人は、他にはいない。
「殿下!!」
またもや思考が打ち消され、リーリュイは今度こそ眉を顰めた。
鋭い目線で入口を見遣ると、声を掛けた衛兵が気圧され仰け反っているのが見える。彼は顔を真っ青に染め、姿勢を正した。
「ま、魔導騎士団の……キース隊長が、ガゾン村を通過しました。もうじき、王都に到着するかと……」
「何? 本隊が出発してから、まだ8日だぞ?」
「は、はい! キース隊長が一騎で先行しているようです。幌馬車で進んでいる本隊は、予定通り進んでいるようで……」
「……キースが、一騎で……? 急ぎ、馬を用意せよ」
衛兵は敬礼すると、脱兎のごとく会議室を出て行った。
キースが単独で来ているという事は、本隊に何か問題があったという事だろう。
リーリュイは立ち上がり、役員たちに背を向けた。
用意された馬に乗り、リーリュイは門へと急いだ。王都からガゾン村までは、馬を飛ばせば数分だ。
光太朗に何かあったかもしれない。そう思うだけで息が止まりそうになる。
襲撃の対策は完璧だったはずだ。光太朗も、そう簡単に襲撃者の手におちる男ではない。
自分に言い聞かせながら、門前まで走る。すると遠くから砂塵を舞いあげながら走ってる馬が見えた。キースの愛馬だ。
リーリュイが馬を急停止させると、馬上のキースも手綱を引くのが見える。同時に、キースの愛馬の後ろから、人影が飛び出してくるのが見えた。
黒い戦闘服に、他の騎士とは違う臙脂色の外套。防塵ゴーグルを上へと引き上げ、彼は満面の笑みを浮かべる。
「こ……光太朗……?」
そこに立つ人物は、紛うことなく光太朗だ。
慌てて馬を降りるリーリュイに、光太朗は飛び跳ねながら抱きついた。
_____ まったくもって無駄ばかりだ。
競技会の打ち合わせに参加しているリーリュイは、眉一つも動かさない。しかし心中は毒を吐き続けていた。
他の皇子は側近で済ませる打ち合わせも、リーリュイは律儀に参加する。毎年そうだった。彼には側近がいなかったのだから。
しかしリーリュイにも初めて側近が出来た。彼の事を思うと、頬が緩みそうになる。
(光太朗は、今どの辺だろうか。早く会いたい。10日なんて長すぎる……)
リーリュイはポータルで王都に来ているが、光太朗含めた本隊は陸路での移動となる。彼らが出立して、今日で8日目だ。
ランパルから王都ラグロまで早くて10日。幌馬車も共に移動するため、もっと遅くなるかもしれない。
10日以上も、光太朗と会えないのだ。その前も多忙ですれ違ってばかりいた。ロワイズで想いが通じ合った筈なのに、彼との関係は未だ何の進展もしていない。
「殿下。……リーリュイ殿下!」
「聞いている」
「本当に全ての競技に、フェンデを参加させるつもりですか?」
「そうだ。名簿にも彼の名があるはずだ」
競技会の役員たちは、揃って困惑の表情を浮かべる。中には口端がヒクついている者もいた。恐らく、魔導騎士団が勝つことに賭けている者たちだろう。
「脆弱なフェンデなど出せば、足手まといに決まっております! 競技会に参加させる意味が分かりません! 消極的な態度は良くありませんぞ!」
「毎年恒例の事だろう。競技会に積極的でない私は、過去にもこういう事をしてきたはずだ。……今年になって、なぜそのような事を聞く?」
「……っ!」
賭け事をしているからと、彼が言えるはずもない。
その役員は口を噤むが、別の役員からも抗議の声が上がる。
「魔法技会にも参加させるおつもりですか!? フェンデは魔法が使えぬでしょう? そのフェンデが危険なのでは?」
「……魔法を使えない者は参戦不可、とは規則にない」
「ですが……!」
「属性を持たせた武器で戦わせる。問題はない」
光太朗は、魔法を使えない。これは変わらなかった。
しかし彼は、対魔法戦闘も磨き上げている。
最近は、晄露を使った戦法も組み入れているようだ。競技会では使わないかも知れないが、キースも太鼓判を押している。
(しかし、キースや騎士らばかり狡いな……。私はいつも除け者だ……)
光太朗の側にいるために動いているのに、どんどん離れていく気がする。最後にキスをしたのはいつだったか。
顔を真っ赤に染める光太朗が、リーリュイの脳裏に浮かぶ。
その頬を両手で挟むと、彼は瞼を固く閉じる。顎に手を当てて上を向かせると彼は驚き、目を潤ませる。
光太朗はキスだけで、色んな表情を見せるのだ。これだけ可愛い人は、他にはいない。
「殿下!!」
またもや思考が打ち消され、リーリュイは今度こそ眉を顰めた。
鋭い目線で入口を見遣ると、声を掛けた衛兵が気圧され仰け反っているのが見える。彼は顔を真っ青に染め、姿勢を正した。
「ま、魔導騎士団の……キース隊長が、ガゾン村を通過しました。もうじき、王都に到着するかと……」
「何? 本隊が出発してから、まだ8日だぞ?」
「は、はい! キース隊長が一騎で先行しているようです。幌馬車で進んでいる本隊は、予定通り進んでいるようで……」
「……キースが、一騎で……? 急ぎ、馬を用意せよ」
衛兵は敬礼すると、脱兎のごとく会議室を出て行った。
キースが単独で来ているという事は、本隊に何か問題があったという事だろう。
リーリュイは立ち上がり、役員たちに背を向けた。
用意された馬に乗り、リーリュイは門へと急いだ。王都からガゾン村までは、馬を飛ばせば数分だ。
光太朗に何かあったかもしれない。そう思うだけで息が止まりそうになる。
襲撃の対策は完璧だったはずだ。光太朗も、そう簡単に襲撃者の手におちる男ではない。
自分に言い聞かせながら、門前まで走る。すると遠くから砂塵を舞いあげながら走ってる馬が見えた。キースの愛馬だ。
リーリュイが馬を急停止させると、馬上のキースも手綱を引くのが見える。同時に、キースの愛馬の後ろから、人影が飛び出してくるのが見えた。
黒い戦闘服に、他の騎士とは違う臙脂色の外套。防塵ゴーグルを上へと引き上げ、彼は満面の笑みを浮かべる。
「こ……光太朗……?」
そこに立つ人物は、紛うことなく光太朗だ。
慌てて馬を降りるリーリュイに、光太朗は飛び跳ねながら抱きついた。
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★コメントの返信は遅いです。
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