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はじまりの章
第17話 たった一行に
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(おいおい、まじかよ……)
酒場に着くなりゲイラスを蹴とばしたリーリュイを、ウルフェイルは呆然と見つめた。周りにいた人間も同様で、聖人君子の暴挙に唖然としている。
しかしゲイラスには身に覚えがあるのか、膝をついて許しを乞いていた。そんな彼に、リーリュイは無慈悲に剣を突き付ける。
「お前が何故、ここにいる」
「ち、違うんです……! 俺は、第7騎士団長の指示で……!」
「……どういう事だ?」
声は荒げないものの、リーリュイの声は殺気に満ちている。ゲイラスはごくりと喉を鳴らし、口を開いた。
「俺がランパルに着いた直後、第7騎士団長から遣いが来て……。この裁判は騎士団の名折れだから、不問にする、と……」
「不問だと……?」
「だ、第10騎士団の団長という地位は剥奪されました。だから俺には拝謁も……」
「そんな事は聞いていない!」
テーブルに乗っていた料理を全て払い退け、リーリュイは怒りを露わにした。あまりの殺気にウルフェイルすらも呑まれ、肌がちりちり粟立つ。
「では彼だけが……ランパルにいるのか?」
「か、彼? ああ、奴隷兵士の事ですか? ……確か投獄されると、聞きました……」
その言葉に、リーリュイの顔色が変わった。そして目を見開き、信じられないといった顔を浮かべる。
「投獄……? あんな身体で投獄されれば、どうなるか分かってるのか!」
「ひぃっ! お、俺の指示じゃありません! 第7騎士団長の命令です……!」
「叔父上が……? どうして……」
第7騎士団の団長は、リーリュイの叔父に当たる。騎士道を貫く戦士で、リーリュイが目標とする人物だった。
ランパルでの裁判は、騎士団長である叔父にも話を通していた。あの時は納得していた叔父が、なぜ考えを曲げたのか。
(……理由は明確だ。彼がフェンデで、それに肩入れする私に危機感を覚えたんだろう。そして私に伝えないまま……彼を……)
吐き気が込み上げてきて、リーリュイは口を覆った。ぐらりと傾ぐ身体を支えるために、テーブルに手をつく。
リーリュイのあまりの動揺ぶりに、ウルフェイルはその側へと駆け寄った。
「リーリュイ……! 落ち着け。どうしたんだ!?」
「……ウルフ、お前ランパルに連絡取れるか?」
「ああ、うちの通信士なら連絡がとれる。宿舎へ行こう」
ゲイラスの頭を力いっぱい蹴り飛ばし、リーリュイは踵を返す。本来なら斬り殺してやりたかったが、今は急がなくてはならない。
リーリュイはウルフェイルについて店を出て、宿舎へと向かった。
(やはり、ランパルにまで付いて行くべきだった……!)
リーリュイは移送官に、光太朗を丁重に扱うように指示していた。裁判を待つ身だが、彼は被害者だ。
しかしその指示は受け入れられず、彼は投獄されてしまった。
あれから2週間が経っている。光太朗がどんな状態になっているか、想像もしたくない。
通信結果を待つ時間は、狂いそうなほど長かった。しかし伝達魔法によって知らされた事実は、更にリーリュイを絶望に引きずり込む。
『第10騎士団の奴隷兵士は、6日前に衰弱死しました。死体は処理済み』
伝達魔紙に書かれたたった一行の報告に、光太朗の終わりが記されていた。
リーリュイは膝を折り、己を責め立てた。
共にランパルへ行けばよかった。
いや、都に連れ帰って、保護すれば良かったのだ。
皇子と言う体裁を守るために、彼を犠牲にした。
その日、ウルフェイルは初めてリーリュイの涙を見た。それは血が混じるほどの、怒りと絶望に満ちた涙だった。
(おいおい、まじかよ……)
酒場に着くなりゲイラスを蹴とばしたリーリュイを、ウルフェイルは呆然と見つめた。周りにいた人間も同様で、聖人君子の暴挙に唖然としている。
しかしゲイラスには身に覚えがあるのか、膝をついて許しを乞いていた。そんな彼に、リーリュイは無慈悲に剣を突き付ける。
「お前が何故、ここにいる」
「ち、違うんです……! 俺は、第7騎士団長の指示で……!」
「……どういう事だ?」
声は荒げないものの、リーリュイの声は殺気に満ちている。ゲイラスはごくりと喉を鳴らし、口を開いた。
「俺がランパルに着いた直後、第7騎士団長から遣いが来て……。この裁判は騎士団の名折れだから、不問にする、と……」
「不問だと……?」
「だ、第10騎士団の団長という地位は剥奪されました。だから俺には拝謁も……」
「そんな事は聞いていない!」
テーブルに乗っていた料理を全て払い退け、リーリュイは怒りを露わにした。あまりの殺気にウルフェイルすらも呑まれ、肌がちりちり粟立つ。
「では彼だけが……ランパルにいるのか?」
「か、彼? ああ、奴隷兵士の事ですか? ……確か投獄されると、聞きました……」
その言葉に、リーリュイの顔色が変わった。そして目を見開き、信じられないといった顔を浮かべる。
「投獄……? あんな身体で投獄されれば、どうなるか分かってるのか!」
「ひぃっ! お、俺の指示じゃありません! 第7騎士団長の命令です……!」
「叔父上が……? どうして……」
第7騎士団の団長は、リーリュイの叔父に当たる。騎士道を貫く戦士で、リーリュイが目標とする人物だった。
ランパルでの裁判は、騎士団長である叔父にも話を通していた。あの時は納得していた叔父が、なぜ考えを曲げたのか。
(……理由は明確だ。彼がフェンデで、それに肩入れする私に危機感を覚えたんだろう。そして私に伝えないまま……彼を……)
吐き気が込み上げてきて、リーリュイは口を覆った。ぐらりと傾ぐ身体を支えるために、テーブルに手をつく。
リーリュイのあまりの動揺ぶりに、ウルフェイルはその側へと駆け寄った。
「リーリュイ……! 落ち着け。どうしたんだ!?」
「……ウルフ、お前ランパルに連絡取れるか?」
「ああ、うちの通信士なら連絡がとれる。宿舎へ行こう」
ゲイラスの頭を力いっぱい蹴り飛ばし、リーリュイは踵を返す。本来なら斬り殺してやりたかったが、今は急がなくてはならない。
リーリュイはウルフェイルについて店を出て、宿舎へと向かった。
(やはり、ランパルにまで付いて行くべきだった……!)
リーリュイは移送官に、光太朗を丁重に扱うように指示していた。裁判を待つ身だが、彼は被害者だ。
しかしその指示は受け入れられず、彼は投獄されてしまった。
あれから2週間が経っている。光太朗がどんな状態になっているか、想像もしたくない。
通信結果を待つ時間は、狂いそうなほど長かった。しかし伝達魔法によって知らされた事実は、更にリーリュイを絶望に引きずり込む。
『第10騎士団の奴隷兵士は、6日前に衰弱死しました。死体は処理済み』
伝達魔紙に書かれたたった一行の報告に、光太朗の終わりが記されていた。
リーリュイは膝を折り、己を責め立てた。
共にランパルへ行けばよかった。
いや、都に連れ帰って、保護すれば良かったのだ。
皇子と言う体裁を守るために、彼を犠牲にした。
その日、ウルフェイルは初めてリーリュイの涙を見た。それは血が混じるほどの、怒りと絶望に満ちた涙だった。
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★コメントの返信は遅いです。
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♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
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