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13階段落ちは突然に
しおりを挟むいつもの読書室で話を聞いたショコラは落ち込んでいた。
「あぁ、第二のヒロインさん計画も頓挫かぁ。でもエクレール男爵令嬢には悪いことをしたわね」
シャルロットはショコラにあの時のフリュイ殿下の様子を細かくは伝えていない。
「俺のショコラ──」
正直フリュイ殿下があれほどショコラを想っているとは思っていなかった。
妃教育を終えているショコラは基本王宮には来ない。かといって、学園で会っているような気配はない。
「そういえばショコラがフリュイ殿下のことをどう思っているのか聞いたことなかったわよね?どうしてそんなに婚約破棄をしたいのかしら」
この話は一時期ショコラに第二王子攻略を勧められていたミルクも気になったようで、読んでいた本から顔を上げこちらに視線を向けた。
「そうね。私たち五歳の頃のお茶会で殿下達の婚約者に決まったでしょう?
私、あの時既に前世の記憶がよみがえっていたのよ。殿下も周りの令嬢も微笑ましく見えてしまって・・・その延長って感じかしら。あの時は殿下も6歳だったし、もし誰か好きな人が出来たのならその方と幸せになってくれたらと思っているのよ」
「ショコラは大人ね。一体何才だったのかしら?」
「さぁ、覚えてないけれど、少なくとも『アイラ』と言う名のお酒があることは知っていたわ」
「──それはお姉さんね」
そこにミルクが入ってきた。こういう話しにミルクが口を挟むのは珍しい。
「私、以前から気になっていたのですがお二人のいう物語って『ひろいん』に感情移入するモノなんでしょう?だとしたら──」
★★★
ドレス事件より少し経ったある日、私は差出人のない手紙にランチタイムに人通りの多いカフェに向かう階段の上に来るよう呼び出された。
まさかこんな人通りのあるところで階段落ちイベントでもするつもりなのかしら。
エクレール男爵令嬢は流れに任せる所はあっても証拠の手紙を残したり、こういう小細工はしたりしない子だと思っているので今回は無関係と踏んでいる。
第三者が介入してきたとか?
『一人目』の仕業とか?
ま、行けば分かるでしょうけど。
そんな風に気軽に構えていたのだけれど、
「きゃあああああああーーーっ」
目的の場所にたどり着く前に、ランチに向かう令息令嬢で盛り上がるカフェ前のホールに突如令嬢の悲鳴が複数響き渡った。
「人が落ちたぞ!」
場が騒然とする。
「ちょっと、通してくださる?!」
私が慌てて呼び出された場所に向かい下を見ると、階段中央の踊り場で身体を張ってなんとか受け止めたらしいグランと、それに協力し巻き込まれたらしい数人の令息が、エクレール男爵令嬢と共に転がっていた。
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