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チートじゃない

4 お姉様じゃない

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「ありがとうございます。申し遅れましたが、私アレグレットと申します。あの、名前をお伺いしても?」
 さっきも即決してたし、護衛を撒いて抜け出すようなお嬢様だからもう少し高圧的か、気の強い女性かと思ったけど、そうではないみたい。
「ヴィヴィアーチェよ」
「ヴィヴィアーチェ様、改めましてありがとうございます。不思議と痛みも和らいだ気がします」
 手当てをして落ち着いたからかもね。私も前世、コレを貼ったら痛みが消えていたもの。
「さて、あなた宿まで送っていくわ。抜け出してきたのでしょう?朝、あなたの跡を追っている護衛さんらしき人を見かけたわ」
「でも──」
 彼女は人を探して宿を抜け出したらしい。しかし護衛を撒き、迷子になってしまった挙げ句、大きな犬に追いかけられてしまい転倒したそうだ。
「人捜しを手伝ってあげたいのは山々だけど、駄目よ。きっとご家族も心配しているのではない?
 護衛もあなたを見失い、そのせいであなたが傷の残る怪我を負ったのであればお咎めがあるのでは?その護衛に家族はいるの?その護衛とご家族はあなたの行動のせいで人生が狂うかもしれないわ。
 あなたにとってその人捜しは護衛の人生より大切なことなの?」
 少し回復していたアレグレットの顔色が再び悪くなる。分かってくれた様で結構です。
「今あなたがすべきなのは、人捜しではなくて、みんなに無事を知らせることよ。きっと今もあなたを探しているわ」
 お嬢様はしばらく私を見つめて言った。
「──申し訳ありませんわ、お姉様。私、考えが足りませんでしたわ。戻って護衛に謝ります。お咎めもないよう尽力しますわ」
 ん?お姉様って、なんか変なスイッチでも入ったのかしら。
「お姉様って、私、ピチピチの16歳よ」
「2つも年下ですの?!」──お話の感じから年上の方かと。
 口に手を当てて、一体なにに驚いているのかしらね。


   ★


「まず入浴は通常通り行って貰って構わないけれど、決してこれらは剥がさないように」
──結界施してるんで、何やったって剥がせませんけどね。
「そして、白くふやけてくるけれど、それは正常な変化なの。心配しないでね。
 あと、傷をきれいに治すためにも必要に応じて張り替える必要があるのだけれど、明日また会えない?」

 結局宿泊先に送ることになった。
 薬師でもない私が処置をしたと聞いたらおうちの方がびっくりする──というか、不安を与えることになるだろうから、アレグレットに必要事項を説明した後明日の約束をして、宿泊先の前の公園で別れた。
 怪我までして今頃怒られているだろうけど、ちゃんと明日出てこられるかしら。
 そう思いながら私も帰途についた。
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