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チートがない

7 巻き込まないで

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それからの道中、プレストは考え事をしているようですっかり黙り込んでしまった。

「じゃ、ご飯美味しかったわ。ありがとう。同じ街にいたらまた会うこともあるだろうからその時はよろしくね」

 無事に街に到着して門をくぐったところでプレストにお礼とお別れの言葉を言ったら、腕をつかまれた。
「ヴィヴィアーチェ、ちょっと待ってくれ──「プレストっ!無事だったのね」
 プレストが何か言いかけたところで、何かが私に体当たりしてきた。倒れそうになったけど、ポチが小さい体を滑り込ませて私の体を支えてくれたので転倒は免れた。ポチってば、男前~って、雄であってたかしら?
「ヴィヴィアーチェ大丈夫か?」
「ポチが支えてくれたから大丈夫よ。ポチ、ありがとう」
 ポチにお礼を言ってから頭を撫で、顔をあげると、そこにはプレストを置いていった冒険者のひとりであるグラマラスな金髪女性が立っていた。
「心配したのよ。ずっとあなたの無事を祈ってたわ──」両腕を駆使して胸を強調しつつ、うつむいて泣きそうな声出してるけど、全く目、潤んでないわよ。私、見上げているから彼女の顔がよく見えるわ。
 あなたがプレストをほぼ即決で置いて帰ったところもバッチリみておりますしね。そもそも昨日の今日の出来事で・・・呆れるわ・・・ねぇ。

 きっと物語によく出てくる「商会専属冒険者のプレスト将来有望な男」目当てのアレだな。モテるだろうとは思っていたけど、面倒臭そうで全くうらやましくない。

「あぁ、マルカートさんか、心配かけて申し訳なかった。君たちも無事に街に着いたようで安心したよ。
 だが、人が話しているところに割り込んできた挙げ句にぶつかっておいて謝りもしないなんて失礼じゃないのかか?」
 おっと、鈍い男の正論パンチ。
 そう指摘され、まずいと思ったのか、私を見て「まぁ、気付かなくてごめんなさいね。」と全く感情の乗っていない声音で謝罪された。まるで子供はお呼びでないのよと言いたげな顔してるけど、あなた、脈無さそうよ(笑)
「いいえ、大丈夫ですよ。ポチが支えてくれましたから。──それじゃあ、私、失礼しますね」
 私の呆れ顔が気に入らないのか、マルカートさんとやらからすっごく睨まれた気がしたけど、邪魔者が立ち去ると分かったからか彼女は何も言ってこなかった。
 こんな子供をライバル視してどうするのよ。ライバルになりそうな女性なんて周りに五万といるでしょうに。
 プレストとは別れの挨拶は済んでいるので、軽く会釈して、巻き込まれる前に「ありがと、またね」とポチの頭を撫でて立ち去った。
「ヴィヴィアーチェ!」
と、私を呼ぶプレストの声は聞こえないふりをした。
 若者の面倒ごとに巻き込まないでちょうだい。
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