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前代未聞のとある大問題が、ここロータスルート王立学園を騒がせている。
その中心人物が、アリス・キャロットという美しい男爵令嬢である。
彼女はその美貌で学園の男子生徒からの熱い視線を独り占めしているというのだ。そして最近ではその噂を聞いた高位の令息までが彼女に興味を示すようになったという。
これには彼らに憧れる令嬢たちが黙っていられるはずもない。巷で流行している娯楽小説のように、嫌がらせをする令嬢がいるという噂を聞かないのは、まだ視線を集める程度で済んでいるのと、淑女教育の賜物だろうか。
アリス・キャロット男爵令嬢のことはよく知らないが、最近男爵家に引き取られた愛人の娘であるらしい。愛人云々というのは、不愉快極まりないがこの国ではよくあることで、容姿や頭脳、《ギフト》によっては実際に引き取って正妻との子として育てることは、珍しいことではあるが全く無いわけではない。特に《ギフト》持ちはこの世界の人口の中でも一握りで、こと貴族であれば結婚に有利に働くからである。
《ギフト》とはその名の通り女神から与えられる「贈り物」であり、それは生まれながらのものであったり、後天的に授かったものであったりする。貴族平民なども関係がなく、もちろん《ギフト》持ちから《ギフト》持ちが生まれる訳でもない。神のみぞ知る、というヤツである。調べる術もない。
その《ギフト》も、《どの国の言語も理解する》《植物の生長》といったものから《幸運》《何でも美味しく食べられる(しかしこのギフト持ち主は、味オンチの烙印を押されていた)》など様々である。そのため自分が《ギフト》を持っていることに気付いていない人も多数存在する。
そして、何故一握りと言われている《ギフト》持ちのことを多数いると断言出来るのかというと、クレア・オリーブ伯爵令嬢が《他人のギフトが何か分かる》という一見使えそうで全く使えないギフトの持ち主だからである。
他人の、というからには自分の《ギフト》は分からないのだが、調べる術のないはずの他人の《ギフト》が分かるのだからそういうことなのだろうと判断している。ちなみに前述の《何でも美味しく食べられる》味オンチさんは、もちろん自分のギフトのことを知らない。
ギフトに届け出の義務はない。知る方法がないというのが一番の理由だ。
能力の高さから明らかに《ギフト》を持っていると思われる者は存在するが、《植物の生長》や《空間収納》等本来あり得ない能力であれば《ギフト》と認定することも可能だが、こと技術系に関しては本人の努力によるものか《ギフト》によるものかは判断が難しく、過去《ギフト》保持者を狙った誘拐や恐喝などの被害が相次いだため、秘匿するもよし、利用して稼ぐもよし。しかし自己責任で、となったのである。
ちなみに《ギフト》を公開して生業にしている人に恐喝、強制等した場合の罰則は一応あるが、それが《ギフト》であると証明するのも難しいので、通常の犯罪として扱われる。
クレアも「あなたの《ギフト》、教えます」と、この《ギフト》を利用した荒稼ぎを考えたことはある。しかし《ギフト》はただでさえ神様から与えられたものといわれており判別の手段が全くないというのに、そんなことをすれば最悪教会か王家に取り込まれ、荒稼ぎどころか王命で他人の《ギフト》を調べるだけの一生になる可能性もでてきてしまう。
両親はクレアの《ギフト》のことを知っているが、家は幸運なことに裕福で、クレアが一人娘で嫡女なため政略結婚の必要は無く、面倒ごとはごめんだと家族会議の結果、公にはしない方針となった。
その中心人物が、アリス・キャロットという美しい男爵令嬢である。
彼女はその美貌で学園の男子生徒からの熱い視線を独り占めしているというのだ。そして最近ではその噂を聞いた高位の令息までが彼女に興味を示すようになったという。
これには彼らに憧れる令嬢たちが黙っていられるはずもない。巷で流行している娯楽小説のように、嫌がらせをする令嬢がいるという噂を聞かないのは、まだ視線を集める程度で済んでいるのと、淑女教育の賜物だろうか。
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《ギフト》とはその名の通り女神から与えられる「贈り物」であり、それは生まれながらのものであったり、後天的に授かったものであったりする。貴族平民なども関係がなく、もちろん《ギフト》持ちから《ギフト》持ちが生まれる訳でもない。神のみぞ知る、というヤツである。調べる術もない。
その《ギフト》も、《どの国の言語も理解する》《植物の生長》といったものから《幸運》《何でも美味しく食べられる(しかしこのギフト持ち主は、味オンチの烙印を押されていた)》など様々である。そのため自分が《ギフト》を持っていることに気付いていない人も多数存在する。
そして、何故一握りと言われている《ギフト》持ちのことを多数いると断言出来るのかというと、クレア・オリーブ伯爵令嬢が《他人のギフトが何か分かる》という一見使えそうで全く使えないギフトの持ち主だからである。
他人の、というからには自分の《ギフト》は分からないのだが、調べる術のないはずの他人の《ギフト》が分かるのだからそういうことなのだろうと判断している。ちなみに前述の《何でも美味しく食べられる》味オンチさんは、もちろん自分のギフトのことを知らない。
ギフトに届け出の義務はない。知る方法がないというのが一番の理由だ。
能力の高さから明らかに《ギフト》を持っていると思われる者は存在するが、《植物の生長》や《空間収納》等本来あり得ない能力であれば《ギフト》と認定することも可能だが、こと技術系に関しては本人の努力によるものか《ギフト》によるものかは判断が難しく、過去《ギフト》保持者を狙った誘拐や恐喝などの被害が相次いだため、秘匿するもよし、利用して稼ぐもよし。しかし自己責任で、となったのである。
ちなみに《ギフト》を公開して生業にしている人に恐喝、強制等した場合の罰則は一応あるが、それが《ギフト》であると証明するのも難しいので、通常の犯罪として扱われる。
クレアも「あなたの《ギフト》、教えます」と、この《ギフト》を利用した荒稼ぎを考えたことはある。しかし《ギフト》はただでさえ神様から与えられたものといわれており判別の手段が全くないというのに、そんなことをすれば最悪教会か王家に取り込まれ、荒稼ぎどころか王命で他人の《ギフト》を調べるだけの一生になる可能性もでてきてしまう。
両親はクレアの《ギフト》のことを知っているが、家は幸運なことに裕福で、クレアが一人娘で嫡女なため政略結婚の必要は無く、面倒ごとはごめんだと家族会議の結果、公にはしない方針となった。
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