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25、サンマ
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「やい、子分」
「へい、親分」
「何食ってるんだ」
「何って、サンマの缶詰ですよ」
「バアロウ、サンマは今が旬じゃねえか。缶詰じゃなくて生のを食えよ」
「いやいや、この味付けが好きなんですよ。それに缶詰はすぐ食えるから、あっしみたいな面倒くさがりには楽なんでさぁ。親分も缶詰、食ってみたらどうです」
「缶詰なんざ、何十年も食ってねえよ。ん?なんだこのフタは…、おめえ、缶切り使わずにどうやってこの缶開けたんだ」
「どうって…プルトップが付いてるに決まってますぜ。まさか親分、知らねえんで?缶ビールとかもそうでしょう?」
「バアロウ、俺は瓶ビール専門だ。それにな、缶詰が出来たばっかの時は缶切りはまだ出来てねぇ。銃でぶっぱなして開けてたんだよ」
「そんなことしたら中身も壊れちまいますぜ」
「そうだよ。だから缶切りはありがてぇんだ。それよりもおめえ、魚屋でサンマ買ってこい。俺が七輪で焼いてやるよ」
「そんなことしたら煙たくて苦情が来ますよ。それに、魚屋は遠いんです」
「行商は来ねえのか」
「都会には来ませんよ。聞くところによると、東京では肉の行商は禁じられてるらしいし」
「へっ、寂しいもんよ。最近まで鮮魚列車も走ってたっていうのに」
「ははあ」
「京には奥八兵衛っつう偉い魚売りもいたのになあ」
「ははあ。誰です、それ?」
「江戸時代のな、御所にも出入りした魚屋だよ。天皇の埋葬方法を火葬から土葬に変えさせた、凄腕の魚屋だ」
「ははあ、魚屋が天皇を動かしたとはそりゃすげぇ。それよりも親分、缶詰食うんですか、食わねえんですか。全部食っちまいますよ」
「バアロウ、おめぇの食いかけのサンマなんざ食えるか。やい、子分、俺のために世界一旨ぇ缶詰を盗んでこい」
「えぇっ、まったく急だなぁ…、わかりました、ちょっくらスウェーデンに行ってきます」
「おっ、スウェーデンに旨いのがあるのか」
「えぇ、シュールストレミングっていう、とびきり旨い魚の缶詰ですよ」
・・・・・・
〈缶切り〉
1810年、イギリスのピーター・デュラントが、軍用の保存食として画期的な缶詰を発明した。しかし、缶詰を容易に開ける手段までは発明した本人も考えていなかった。そのため缶詰はハンマーとのみで叩いて開けるか、道具がない戦地では銃剣やナイフを缶に突き立てて無理やりこじ開けたり、銃で撃ち飛ばして開封されていた。しかし、この方法は銃剣が破損したり怪我をしたり中身が飛散したりし、あまりにも不便であった。そのため缶を開く道具が工夫され、缶詰の発明から数十年たった1858年、アメリカ合衆国のエズラ・J・ワーナーにより、引き廻して開ける方式の缶切りが発明された。その約10年後、缶の縁を切る方式が発明された。(Wikipediaより抜粋)
〈行商〉
日本における現代の職業としての行商は都道府県の条例によって、その営業の届出が必要とされ、行商の営業品目などの規制がなされている。(中略)ただし、東京都では特異的に肉類の行商を認めていないが、かわりにゆでめん類の行商があるなど都道府県や政令指定都市ごとにかなり変化がある。(Wikipediaより抜粋)
〈鮮魚列車〉
鮮魚列車(せんぎょれっしゃ)とは、近畿日本鉄道(近鉄)が運行していた行商のための団体専用列車(行商専用列車)。鮮魚電車とも。1963年から2020年まで57年に渡り運行され、伊勢湾の海産物を都市に届ける役割を果たした。(Wikipediaより抜粋)
〈奥八兵衛〉
奥八兵衛(おく はちべえ、生年不詳 - 寛文9年1月23日(1669年2月23日))は、江戸時代、京都の魚屋である。屋号は河内屋。代々の家業である魚商にたずさわり、鮮魚を調進するため皇居にも出入りしていた。承応3年(1654年)、後光明天皇の崩御に際して、先例により葬儀は仏教の式とし、玉体(天皇の身体)は荼毘に付す(火葬)ことと朝議で決した。これを聞いた八兵衛は、火葬が仏教に基づく葬制であるところ、かねて天皇は儒学に専心して「火葬は不仁である」と嘆き、仏教を信仰していなかったことから、火葬することは天皇の意思に沿わないと考えた。そこで八兵衛は、仙院(上皇の御所)から関白の屋敷、後宮、官吏の役宅まで訪ね回り、数日にわたって号泣して火葬の中止を建言懇請した。ついに朝議は八兵衛の建言を採納し、持統天皇から千年近くにわたって断続的に行われていた天皇の火葬を停止した。以後、昭和天皇に至るまで歴代天皇は土葬された。(Wikipediaより抜粋)
〈シュールストレミング〉
シュールストレミング(スウェーデン語: surströmming [sʉ̌ːʂtrœmːɪŋ] は、主にスウェーデンで生産・消費される、塩漬けのニシンの缶詰。その強烈な臭いから、世界一臭い食べ物と評されることもある。通常、缶詰は保存食として製造されるため、内容物は滅菌される。しかしシュールストレミングは、日本の漬け物のように発酵状態を保ったまま缶詰にされ、缶の中で発酵が進行する。密封状態で発酵させるため、発生したガス(二酸化炭素など)圧によって丸く膨らむ。こうした状態の缶はスウェーデン各地のスーパーマーケットでよく見られる。殺菌を行わないことから日本では缶詰の定義から外れ、JAS法などに基づき「缶詰」と標記できない。開封する際は、そのガスによって汁が噴出すると臭いが広範囲に拡散するため、屋外で開けることが推奨されている。噴出を抑える手段として、水中で開封することも行われるなど開け方はいくつかあるが、缶を傾け内部にガスだまりを作ってそこに缶切りを突き立てる方法が最も一般的である。(Wikipediaより抜粋)
「へい、親分」
「何食ってるんだ」
「何って、サンマの缶詰ですよ」
「バアロウ、サンマは今が旬じゃねえか。缶詰じゃなくて生のを食えよ」
「いやいや、この味付けが好きなんですよ。それに缶詰はすぐ食えるから、あっしみたいな面倒くさがりには楽なんでさぁ。親分も缶詰、食ってみたらどうです」
「缶詰なんざ、何十年も食ってねえよ。ん?なんだこのフタは…、おめえ、缶切り使わずにどうやってこの缶開けたんだ」
「どうって…プルトップが付いてるに決まってますぜ。まさか親分、知らねえんで?缶ビールとかもそうでしょう?」
「バアロウ、俺は瓶ビール専門だ。それにな、缶詰が出来たばっかの時は缶切りはまだ出来てねぇ。銃でぶっぱなして開けてたんだよ」
「そんなことしたら中身も壊れちまいますぜ」
「そうだよ。だから缶切りはありがてぇんだ。それよりもおめえ、魚屋でサンマ買ってこい。俺が七輪で焼いてやるよ」
「そんなことしたら煙たくて苦情が来ますよ。それに、魚屋は遠いんです」
「行商は来ねえのか」
「都会には来ませんよ。聞くところによると、東京では肉の行商は禁じられてるらしいし」
「へっ、寂しいもんよ。最近まで鮮魚列車も走ってたっていうのに」
「ははあ」
「京には奥八兵衛っつう偉い魚売りもいたのになあ」
「ははあ。誰です、それ?」
「江戸時代のな、御所にも出入りした魚屋だよ。天皇の埋葬方法を火葬から土葬に変えさせた、凄腕の魚屋だ」
「ははあ、魚屋が天皇を動かしたとはそりゃすげぇ。それよりも親分、缶詰食うんですか、食わねえんですか。全部食っちまいますよ」
「バアロウ、おめぇの食いかけのサンマなんざ食えるか。やい、子分、俺のために世界一旨ぇ缶詰を盗んでこい」
「えぇっ、まったく急だなぁ…、わかりました、ちょっくらスウェーデンに行ってきます」
「おっ、スウェーデンに旨いのがあるのか」
「えぇ、シュールストレミングっていう、とびきり旨い魚の缶詰ですよ」
・・・・・・
〈缶切り〉
1810年、イギリスのピーター・デュラントが、軍用の保存食として画期的な缶詰を発明した。しかし、缶詰を容易に開ける手段までは発明した本人も考えていなかった。そのため缶詰はハンマーとのみで叩いて開けるか、道具がない戦地では銃剣やナイフを缶に突き立てて無理やりこじ開けたり、銃で撃ち飛ばして開封されていた。しかし、この方法は銃剣が破損したり怪我をしたり中身が飛散したりし、あまりにも不便であった。そのため缶を開く道具が工夫され、缶詰の発明から数十年たった1858年、アメリカ合衆国のエズラ・J・ワーナーにより、引き廻して開ける方式の缶切りが発明された。その約10年後、缶の縁を切る方式が発明された。(Wikipediaより抜粋)
〈行商〉
日本における現代の職業としての行商は都道府県の条例によって、その営業の届出が必要とされ、行商の営業品目などの規制がなされている。(中略)ただし、東京都では特異的に肉類の行商を認めていないが、かわりにゆでめん類の行商があるなど都道府県や政令指定都市ごとにかなり変化がある。(Wikipediaより抜粋)
〈鮮魚列車〉
鮮魚列車(せんぎょれっしゃ)とは、近畿日本鉄道(近鉄)が運行していた行商のための団体専用列車(行商専用列車)。鮮魚電車とも。1963年から2020年まで57年に渡り運行され、伊勢湾の海産物を都市に届ける役割を果たした。(Wikipediaより抜粋)
〈奥八兵衛〉
奥八兵衛(おく はちべえ、生年不詳 - 寛文9年1月23日(1669年2月23日))は、江戸時代、京都の魚屋である。屋号は河内屋。代々の家業である魚商にたずさわり、鮮魚を調進するため皇居にも出入りしていた。承応3年(1654年)、後光明天皇の崩御に際して、先例により葬儀は仏教の式とし、玉体(天皇の身体)は荼毘に付す(火葬)ことと朝議で決した。これを聞いた八兵衛は、火葬が仏教に基づく葬制であるところ、かねて天皇は儒学に専心して「火葬は不仁である」と嘆き、仏教を信仰していなかったことから、火葬することは天皇の意思に沿わないと考えた。そこで八兵衛は、仙院(上皇の御所)から関白の屋敷、後宮、官吏の役宅まで訪ね回り、数日にわたって号泣して火葬の中止を建言懇請した。ついに朝議は八兵衛の建言を採納し、持統天皇から千年近くにわたって断続的に行われていた天皇の火葬を停止した。以後、昭和天皇に至るまで歴代天皇は土葬された。(Wikipediaより抜粋)
〈シュールストレミング〉
シュールストレミング(スウェーデン語: surströmming [sʉ̌ːʂtrœmːɪŋ] は、主にスウェーデンで生産・消費される、塩漬けのニシンの缶詰。その強烈な臭いから、世界一臭い食べ物と評されることもある。通常、缶詰は保存食として製造されるため、内容物は滅菌される。しかしシュールストレミングは、日本の漬け物のように発酵状態を保ったまま缶詰にされ、缶の中で発酵が進行する。密封状態で発酵させるため、発生したガス(二酸化炭素など)圧によって丸く膨らむ。こうした状態の缶はスウェーデン各地のスーパーマーケットでよく見られる。殺菌を行わないことから日本では缶詰の定義から外れ、JAS法などに基づき「缶詰」と標記できない。開封する際は、そのガスによって汁が噴出すると臭いが広範囲に拡散するため、屋外で開けることが推奨されている。噴出を抑える手段として、水中で開封することも行われるなど開け方はいくつかあるが、缶を傾け内部にガスだまりを作ってそこに缶切りを突き立てる方法が最も一般的である。(Wikipediaより抜粋)
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