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ヒロインと絶対零度の王子2 〜そして結局嫁にあまい〜

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「……でもその後、マーガレットが目を覚ましてから直ぐに君を擁護した。

 そして陛下はそれに応じた。

それでも、何かしらのペナルティーは陛下から伯爵に伝えられているだろうが…表立った制裁は加えない事になった。」


「……。」

「この意味、わかるよね?」

「…はい。」


「陛下は〝事件を無かった事として扱う〟と仰せになったよ。
事件を知る顔触れを考えたら可能な事だ。

だけどね、意見を聞かれた僕は反対しようと思ったよ。

だって君はマーガレットを危険に晒し怪我を負わせた者だ。君の愚かさのせいでね。意図的な者より尚たちが悪い。そんな輩に処罰がないなどあり得ない事だ。」

「……。」


「でもね、マーガレットを見ていたら、君を罰した時、マーガレットの方が倒れて寝込むのは容易に想像ついたよ。

君の何をそんなに気に入ったかは理解出来ないけれどね。
そうは思っていても、僕は口を閉ざすしかなかった。

そんな僕は今日君にがあってここに呼び出したんだ。」


「……。」



 先程から押し黙っているユリシアに、見る者の心を凍えさせてしまう冷たい眼差しを宿して目を細めた。



「僕はね、マーガレットの交友関係に口を出す気は無かったよ。だけど、君は駄目だ。言ってる事、わかるだろう?」



 ユリシアは平伏しながら、マーガレットの言葉を思い出していた。




『お茶会、楽しかったです』
『いつかまた、お茶会を致しましょうね、ユリシア様。』

  


  そして、地面についた自分の手をじっと無言で見つめた後、諦めたように目を閉じて答えた。




「…はい。今後マーガレット様からお手紙がきても、自然に、傷付けないよう最大限の配慮をし、お断りする様に致します。」

「わかったのなら、話は以上だ。もう下がっても良いよ。」

「はい、御恩情、有難うございました。」

「君に掛けたものではないから、僕は君に感謝されても煩わしいだけだよ。
感謝するならマーガレットにするんだね。」
 
 王子の作り笑顔の限界がきて本音が漏れ始めていたので、従者や召使は冷や冷やしながら2人の様子を見ていた。

 しかし自分のした事を痛感したユリシアはそれを当然と冷静に受け止め、もう動じる事なく部屋を出ようとした。

 部屋を出る前に、1度足を止めて王子に言った。

「王子、私がこんな事を言うのも何ですが、私は、マーガレット様が好きです。

おこがましいですが…だから…。」



  言い淀むユリシアに、王子は返事をせず沈黙が流れたが、覚悟を決めて言葉の続きを紡いだ。



「もし。王子がマーガレット様を大事に思うのなら…。

この先、マーガレット様がどの様な決断をしても受け止めてあげてください。」


「……。」

「…お時間頂き光栄でした。お手前失礼させていただきます。」



  スカートを摘んで丁寧にお辞儀をするとユリシアは召使によって開けられた部屋から出て行った。
 

 ーーーーーーーーーーーーー


☆後日談☆

 それから数日後、マーガレットは届いた手紙を見て溜息をつき落ち込んでいた。

 お付きの侍女が何か悩みがあるのか聞くと、マーガレットは躊躇いがちにこう答えた。

「ユリシア様にご都合つく日取りを決めたいと、手紙をお送りしたのですが……お忙しいみたいでお会い出来ないと。

私…。嫌われてしまったのかしら……」

     浮かない顔をしてシュンとしている。
 

 こうしてマーガレットの様子が何処となく元気の無い日々が続いた。


 ーそれから更に数日が経った頃ー

 マーガレットの手元に届いた手紙には、忙しさが落ち着いたのでお茶会をしようと言うユリシアからのお誘いが記されていたとか。



 ※結局何処までもお嫁様にあまい王子は条件付きでの交流を許可する事になりました。

※次は番外編ですが、本編完結してません






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