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第2章
皇帝に恋している大臣の娘の思惑《ケスラー公爵令嬢side》
しおりを挟む私はケスラー公爵家に生まれたリリィ・ケスラー。先日この国の皇帝になったカルロ陛下とは2歳違い。
私は皇太子だったカルロ様の婚約者最有力候補だったのに、一度子供同士で会わされた直ぐ後に、第2王子が生まれて王宮の情勢がゆっくりと、変わっていった。
カルロ様とは三度顔合わせをしたけれど、最初婚約に前向きだったお父様は最終的に婚約をさせてくれなかった。
私は初めて出会ったころから、カルロ様に好意を抱いていたのに。泣いて嫌だ、カルロ様と結婚すると駄々をこねると、いつも私に甘いお父様は困り果てて、カルロ様の敵にはならない事で精一杯だと言った。
本当は第2王子派につこうとしていたお父様を、中立に引き止めたのは私がいたからだ。
なのに、皇妃となったのはあろう事か貧乏子爵家のご令嬢。話を聞いた当時はそれこそ絶望したけれど、直ぐに気分は晴れた。
聞くところによると寵愛を受けていないどころか2人の仲は険悪なのだとか。それもそうだ。前皇妃が私のようにカルロ様に力を与えてしまう人物を遠ざけた嫌がらせ同然の人選なのだから。
今では無事カルロ様は皇帝になった。
後盾も無く、ましてやカルロ様を苦しめた前皇妃の策略で用意された寵愛もない皇妃が、いつどんな理由で廃されてもおかしくは無い。 その時は、今度こそ私が皇妃となる出番がきた。
私こそが寵愛を受けるに相応しい。カルロ様も昔会った私の事を覚えているだろう。我家門はずっとカルロ様の敵にはならなかった数少ない名門。
早く、皇妃には退いてもらわないとって考えているうちに皇妃主催のお茶会が開かれた。
とんだ面の皮の厚さに、驚いたけれど、この際だから思いっきり嘲りの笑みを浮かべてやった。
全然動じる様子のない皇妃に苛立ちを覚えた。
(まさか、自分の方が立場が上だからと、己に力があると勘違いしている阿呆では?)
余裕の表情で皇妃活動に前向きになっている様子に先日お父様と会話した事を思い出す。
『今度おまえが皇妃様の茶会に出席している間、皇帝におまえとの縁談話を持っていこうと思う。
表向きは側妃と打診はするが、今の皇妃は、皇帝を貶める為あてがわれた者、もう少しすると理由をつけて廃される筈だ。
そうしたら次はリリィ、やっとおまえの出番だ。
その美貌と後盾を見れば直ぐにでも、〝是非おまえを皇妃に〟とお考えくださるだろう。』
(ふ…これから自分がどうなるかも分かって居ないのでしょうね。間抜けなこと。)
そう思っていたのに、お茶会から3日後お父様からは信じられない言葉が出てきた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
「どうやら、皇帝は皇妃のことは動かす気配がない。それどころか、暫くは側妃を置くつもりもないようだ。」
「え?何故なのですか?カルロ様とて早く身を固め安定する必要があるはず、特に皇妃は今後公務を担う者で…」
「わからん。皇帝はおいそれと考えている事を表には出さない。現皇帝は尚更、未だ周囲に警戒を怠っていないからな。
だがもしかすると…今の皇妃を気に入っているのかも知れん。」
「そんなまさか。カルロ様を貶める為に用意された何のメリットもなく、自分の立ち位置を理解できずお茶会など悠長に開く愚鈍な女ですよ?」
「…うむ、考えすぎなら良いが…。とにかく、あの皇妃は邪魔な事この上ない。そろそろ、不相応な地位から退いてもらわなくてはならない時期だな。」
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