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第1章

帰路の途中に

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 第2王子の宮は敷地が広くて、来た時みたいに乗り物に乗っけてくれると助かるけれど、今の状況ではそうも言ってられなかった。

 ようやっと出口に着くとなったときの事だった、兵士が門前に立っているのが見えて、会釈してそのままでようとしたが、両サイドの肩に手を置かれそうになった。それをユラが払ってテリアを引き寄せて怒りだす。


「テリア様にお手を触れようとするとは!」


 牽制するユラに兵士は冷静に言った。

「お言葉ですが、テリア皇太子妃は、セリウム王子暴行の容疑がかかっています。」


 それを聞いてユラは手の両袖からナイフをそれぞ一本ずつ取り出した。


「下がっていてください、テリア様。」

「え?何で?私に用事があるんでしょ。この人達。暴行?ビンタした事かしら?そりゃあ誰でも叩くわよあれは。」


   騒めく兵士達。ここまで堂々と言われると、かえってテリアに得体の知れなさを感じて兵士達は後退る。

 もうユラは無心になる事にした。
 戸惑いながら兵士は言う。


「そ、その言葉ー…「何をしている。」

 兵士のテリアを掴もうとする腕を掴み、言葉を遮ったカルロが険しい目で彼等を睨んでいる。その後ろにはアレンの姿もあった。

「こ、皇太子殿下…。」

「こんな所で、おまえ達は何をしている。」

「それが…。セリウム王子に、皇太子妃が暴行を加えたようで、事のあらましを調査するため監査部の方へ連れて行かねばならなくて。」

「監査部?誰の妃と心得て、誰の許可を得てこのような事をしているのか答えろ。」

「ですが…。」

「誰の妃だと心得ている?」


  カルロの目付きの悪さと、口の悪さは、普段とはまた一味違う。
 テリアが見たこともない威圧を含んでおり、兵士はたじろぎながらも、迷いの含む手を引いた。

 その姿を一瞥して、カルロはテリアの手を掴み、その場を去ろうとしてゆく。その後ろから、アレンと、ユラも続いてくる。最後に振り返ると、兵士達の戸惑っている姿を確認した。


ーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー


 テリアは黙々と歩くカルロに声をかけた。
「ねぇねぇ。何でカルロ皇太子があそこにいたの?何かセリウム王子に用事あったんじゃないの?いいの?」
「……。」
「ねぇってば。」


 そこで、やっとカルロは足を止めた。そして振り返って早々にテリアの額を突きながら言った。




「おまえ、何でわざわざセリウムの宮に行ってるんだよ!?」

「えぇ?だって…」

「おまえのいる宮はあいつと正反対の立地だろうが。」

「いや、遊びに来たの!あのセリウム王子が昨日私の所遊びに来て、明日は自分とこに遊びに来いって言うから。

それよりカルロは良いの?セリウム王子に用事じゃないの?」



「…っち。」

(なんか舌打ちされた…)



 そこへ、アレンが説明してくれた。

「皇太子はテリア様の宮に用事があって来た所、わたしが弟君の所へ行ったと報告致しましたら、血相変えて此処に走ってきたわけです。
…ていうか、何があったんですか?」

(そう言えば…何か汗で手が湿ってるわ。) 

 握られたままの手をじっと見ているテリアに気付いて、カルロは勢いよく離した。



 

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