上 下
17 / 121
第1章

王宮を歩き回ってみた3

しおりを挟む
 さっきの訓練場で見た兵士達の様子は、もうベテランの域にたっしているので、自分には真似できないと思ったが、歳が一つしか違わないカルロならば、参考になるものもあるだろうと思っての事だった。

 幸い何故かいつもカルロの周りにいる付き人も誰1人としていない。

 カルロはテリアの存在など忘れているかのように、永遠と素振りをし続けた。
 1時間ほどたったころ、カルロはタオルで汗を拭いながら休憩すべく、水の置いてある方に歩みを進めると、そこにはテリアがまだいた。
(まだ居たのか。)

無言で、テリアの隣に置いてある水に手を伸ばす。

「ねぇ、お付きの人達は?」

「……。」

「素振りやってたら強くなれるの?」

「……。」

「ねぇねぇ、騎士とも一緒に練習したりする?」

「煩いな!質問は一個にしろ!」


 無視を決め込もうとしたが、疲れて動く気も起きないし、あまりに隣で煩いので怒鳴ると、テリアは少し考えたあと1つに絞ってみた。

「私に、剣を教えて。」


 質問ではなかった。だけどカルロはその声が何故か無視できなくて、テリアの方へ顔を向けて、その顔を初めて意図的に視界に入れた。

 黄金色の瞳は枝の隙間から漏れ出る光に、不思議な色合いをしていた。


「…俺は人に教えられる程に上達しているわけじゃない。」

「だけど、小1時間ずっと素振り続けられるって多分凄いよね?」

「やろうと思えば出来るだろそんなもん。
俺は、ぁあするしか鍛え方を知らない。」

「皇子でしょ?誰か教えてくれる人居るんじゃないの?」

 テリアの質問に、カルロが息を飲んだのがわかった。

(何かまずい事聞いちゃった気がする。)

 長い沈黙が流れたが、ひとまずテリアは黙っている事にした。

「ー…それでも俺は 絶対に生き残り、絶対に 守る。」

 やっと返ってきた言葉は、返事かどうかも分からないほど意味が分からなくて、直ぐには理解出来ない内容だった。それはテリアの質問に答えたと言うより、自分に言い聞かせているようだった。

しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

お姉ちゃん今回も我慢してくれる?

あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」 「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」 「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」 私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。 代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。 お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。 ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい? お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?

【完結】夫が愛人と一緒に夜逃げしたので、王子と協力して徹底的に逃げ道を塞ぎます

よどら文鳥
恋愛
 夫のザグレームは、シャーラという女と愛人関係だと知ります。  離婚裁判の末、慰謝料を貰い解決のはずでした。  ですが、予想していたとおりザグレームとシャーラは、私(メアリーナ)のお金と金色の塊を奪って夜逃げしたのです。  私はすぐに友人として仲良くしていただいている第一王子のレオン殿下の元へ向かいました。  強力な助っ人が加わります。  さぁて、ザグレーム達が捕まったら、おそらく処刑になるであろう鬼ごっこの始まりです。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

処理中です...