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第五節
夜の息づかい(22)
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「私は、生きてるんだ」
血に溺れた声で言う。
時折、血液が気管に入り、むせる。
「だって、ほら、血が出ているよ」
篠生は薄笑いを続けている。
私は、妻に視線を向けた。
その妻の姿に言葉を失った。
衣服が、びりびりに破れ、はだけている。
妻は両腕を胸に抱き寄せて、体を内側に縮こませている。
体は強張り、大きく震えている。
その妻の横で、倒れて動かない娘。
郷珠は白杖で細かく床を突きながら、妻へ、一歩一歩、近づいていく。
白状を持っていない手を前に出して、手探りで、妻を探している。
「弾かせてくれよ!」
篠生が大声を出すも、血液に溺れて、むせる。
むせる度に、ごぼっと、多量の吐血をする。
「もうすぐ、会いに行くから待っててね」
篠生は、以前の恋人の幻覚が見えているようだ。
「そんな事ないよ。初めから、死のうと思って、山に来たんだから」
篠生は、微笑みながら幻覚と話している。
篠生の顔から足まで全身が、血みどろに染まっている。
何を思ったのか、妻が突然、立ち上がった。
妻は、破れた衣類を身を覆い、篠生に近づく。
破れた隙間から、妻の柔肌が見える。
篠生の前で、妻は立ち止まる。
篠生は、立ち止まる妻を見上げた。
喉仏を掻きむしる手が止まる。
篠生の目の前で、しゃがみ込み、目線を合わせる。
妻の行動が予想外だったのか、篠生の瞳孔が泳ぐ。
血に溺れた声で言う。
時折、血液が気管に入り、むせる。
「だって、ほら、血が出ているよ」
篠生は薄笑いを続けている。
私は、妻に視線を向けた。
その妻の姿に言葉を失った。
衣服が、びりびりに破れ、はだけている。
妻は両腕を胸に抱き寄せて、体を内側に縮こませている。
体は強張り、大きく震えている。
その妻の横で、倒れて動かない娘。
郷珠は白杖で細かく床を突きながら、妻へ、一歩一歩、近づいていく。
白状を持っていない手を前に出して、手探りで、妻を探している。
「弾かせてくれよ!」
篠生が大声を出すも、血液に溺れて、むせる。
むせる度に、ごぼっと、多量の吐血をする。
「もうすぐ、会いに行くから待っててね」
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「そんな事ないよ。初めから、死のうと思って、山に来たんだから」
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何を思ったのか、妻が突然、立ち上がった。
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破れた隙間から、妻の柔肌が見える。
篠生の前で、妻は立ち止まる。
篠生は、立ち止まる妻を見上げた。
喉仏を掻きむしる手が止まる。
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妻の行動が予想外だったのか、篠生の瞳孔が泳ぐ。
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