ただ、愛を貪った

夕時 蒼衣

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私②

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 でも、それも思春期を迎えた頃には言われなくなった。進学校に通い出せば、その分私よりできる人はざらにいた。県大会進出、そんな垂れ幕が下げられ、数ヶ月もすれば校長が表彰する。これが日常茶飯事。
 この学校のみんながこう思っているのだ。表彰されるのが当たり前。学校の成績も良くて当たり前。だから誉められることなんて、もうなかった。
 「へー、すごいね。」と誰かがいう。でもそれは褒め称えている言葉でもなんでもない。ただの相づちだ。反射的に言うのだ。彼らにとっては、それさえも当たり前のことなのだ。笑える話だ。
 
 大人は社交辞令が好きだ。思っている言葉は言わない。思ってもいない言葉を、すらすらと唱える。年を重ねるごとに経験値を積み、最上の返答を暗唱するのだ。
 小学生のころ、そんな大人を見て、可哀想だと思っていた。会話の中に心は存在していなかった。口が喋っている。心はそこにない。どこかに落としてきたのだと、そう思って眺めていた。
 そして今や私は、可哀想な大人に成り上がった。本当に怖いはなし。

 可哀想な大人は心の空白を埋めてくれる、優しい誰かを求めた。
 そして彼を愛した。愛のない愛。これは愛されてはいけない、愛のはなし。
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