上 下
14 / 39

14.馬で遠出

しおりを挟む
「馬に乗ったことある?」

 キャロが乗馬服に着替えると、二人は厩舎に来ていた。

「ないわ。
 この服も、あるなんて知らなかった。」

 キャロライナが乗馬に行くと話すと、エイダはすぐにクローゼットから乗馬服を用意してくれた。

「じゃ、俺の相棒に乗せてやるよ。」

 レオナルドは黒い毛並みの整った軍馬にキャロライナと自分が乗ると、走り出した。

 軍馬の上は、スピードが速く、目線も高いことから、最初は怖がっていたキャロライナは、レオナルドにガッチリと支えてもらい、次第にリラックスして、景色を楽しんでいる。

 王都を見渡せる小高い丘に着くと、レオナルドは軍馬から降りて、キャロライナを側に座らせ、軍馬に水をやる。

「ここは、王都を見渡せる俺の癒しの場所なんだ。
 ほら、あそこに王宮も見えるだろ。

 ここにいると、リーと俺達は、この景色を守るために、頑張ってきたなって、思えるんだ。

 まあ、今も続いているけどな。」

 王宮は王都の中心にあり、八方に広がるように道路は整理され、そこを中心に街が広がっているのが、一望できる。

 レオナルドはキャロライナの隣に座る。

「この国は私が以前住んでいた国より、とてもいいところだし、その中でも、ここは空気がいいし、素敵なところね。」

 キャロライナは丘から見える王都の街並みの景色を楽しむ。

「よし、ここなら誰もいないから、俺への不満を言っていいぞ。」

「私は、レオに不満なんてないわ。
 むしろ、今は人生で一番充実感があるもの。
 自分が少しは人の役に立てていると感じるから。」

「じゃあ、何で泣いた?」

「レオ、見てたの?
 恥ずかしいわ。

 私は今とても幸せだけど、レオは反対に、私がいない方が魔獣討伐をもっとやって、活躍できるのにって思って。

 私に付き合って、治癒魔法をしてくれているけど、本来なら、あなたは魔獣討伐をメインでやって来たんでしょ。

 でも、今は治癒魔法を使っているから、討伐には、ほとんど行けていないでしょ。

 だったら、私は、いない方がいいのかなって思ったの。」

「人の気持ち勝手に決めて傷つくなよ。
 確かに以前は魔獣討伐をメインでしていた。

 でも、それは好きでやってたわけじゃない。
 妹を何としても、不自由なく、暮らさせてやりたかったからだ。

 だから、どんな時も歯を食い縛って、生きて帰って来た。

 でも、今はもう、妹は好きな男と結婚して、子供もいる。

 もう俺の役割はなくて、後は甥っ子を見れたら、それでいいかなぁって思ったから、捕まるかもしれないけど、オーブリー王国に行ったんだ。

 甥っ子には会えたけど、まんまと役人に捕まって、その後のことはキャロも知ってるだろ。

 でも、キャロと出会って、昔見た夢、治癒魔法で、病気治すっていうやつ叶ったんだよ。

 骨折程度で、しょぼいけど。
 リーも言ってただろ?」

「うん。」

「だから、キャロは俺の夢を叶える大切なパートナーだよ。
 助手とか言って悪かった。

 俺は今、自分のやりたかったことができて、毎日そんな自分に満足しているんだよ。」

「私は、レオの助手でいいの。
 実際できてるのは、レオの魔力高めてるだけだし。

 それでも、みんなに感謝されて、毎日幸せなの。
 自分もできることがあるって思えて。

 私はこのまま、ここにいてもいいのね。
 それが、心配だったの。

 今日は、レオの話を聞けて嬉しかった。
 ここに連れてきてくれてありがとう。」

「俺は、自分の気持ちを言うのをやったことないから、今まで、キャロに何も言ってなかったけど、自分がいない方がいいとか、絶対に違うからな。 

 それに、わからない時は、俺の気持ち、ちゃんと聞いてほしい。

 俺だって、リーに言われたら、渋々魔獣討伐にも行くけど、活躍できるからって、いつも命かけるの、しんどいんだよ、本当は。」

「うん、わかった。

 レオも知っての通り、私、婚約者にも家族にも、見捨てられてるから、時々悪い方に考えてしまうの、多分。」

「まぁ、それは仕方ないな。
 俺が何度でも、キャロへの気持ちを答えてやるから、話をしよう。」

「ありがとう。」

 二人はしばらくぼんやりと景色を楽しんだ後、邸に戻り、日課の骨折を治す治癒魔法をかけに行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ
恋愛
 母は私を「なんて彼ににているのかしら、髪と瞳の色が同じならまるで生き写しだわ」そう言って赤い長い爪で私の顔をなぞる仕種をしている。  父は私に「お前さえいなければ、私は自由でいられるのだ」そう言って詰る。  私は両親に愛されていない。生まれてきてはいけない存在なのだから。  だから、屋敷でも息をひそめる様に生きるしかなかった。  父は私が生まれると直ぐに家を出て、愛人と暮らしている。いや、彼の言い分だと愛人が本当の妻なのだと言っている。  母は父に恋人がいるのを知っていて、結婚したのだから…  父の愛人は平民だった。そして二人の間には私の一つ下の異母妹がいる。父は彼女を溺愛していた。  異母妹は平民の母親そっくりな顔立ちをしている。明るく天使の様な彼女に惹かれる男性は多い。私の婚約者もその一人だった。  母が死んで3か月後に彼らは、公爵家にやって来た。はっきり言って煩わしい事この上ない。  家族に愛されずに育った主人公が愛し愛される事に臆病で、地味な風貌に変装して、学園生活を送りながら成長していく物語です。  ※旧「先生、私を悪い女にしてください」の改訂版です。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】その手を放してください~イケメンの幼馴染だからって、恋に落ちるとはかぎらない~

紺青
恋愛
辺境の村に住むルナには、幼馴染がいる。 幼馴染のダレンは体格よし、顔よし、剣も扱えるし、仕事もできる。その上愛想もよく、村の人気者。 村になじまない色彩をもつため、家族からも村人からも遠巻きにされるルナを唯一かまうのはダレンだけだった。 しかし、ルナは自分にだけ、意地悪な面を見せるダレンが苦手で嫌いだった。 村やダレンから逃げ出したいと思いつつ、そんなことは無理だと諦めていた。 しかし、ルナはある日、「人喰い魔女」と呼ばれる薬師のおばあちゃんと出会って…… 虐げられてもくじけない頑張り屋の女の子×美人なチート魔術師の冒険者ギルド職員のカップルが紆余曲折を経て幸せになる物語。 ※外見による差別表現、嘔吐表現がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

ひとりぼっち令嬢は正しく生きたい~婚約者様、その罪悪感は不要です~

参谷しのぶ
恋愛
十七歳の伯爵令嬢アイシアと、公爵令息で王女の護衛官でもある十九歳のランダルが婚約したのは三年前。月に一度のお茶会は婚約時に交わされた約束事だが、ランダルはエイドリアナ王女の護衛という仕事が忙しいらしく、ドタキャンや遅刻や途中退席は数知れず。先代国王の娘であるエイドリアナ王女は、現国王夫妻から虐げられているらしい。 二人が久しぶりにまともに顔を合わせたお茶会で、ランダルの口から出た言葉は「誰よりも大切なエイドリアナ王女の、十七歳のデビュタントのために君の宝石を貸してほしい」で──。 アイシアはじっとランダル様を見つめる。 「忘れていらっしゃるようなので申し上げますけれど」 「何だ?」 「私も、エイドリアナ王女殿下と同じ十七歳なんです」 「は?」 「ですから、私もデビュタントなんです。フォレット伯爵家のジュエリーセットをお貸しすることは構わないにしても、大舞踏会でランダル様がエスコートしてくださらないと私、ひとりぼっちなんですけど」 婚約者にデビュタントのエスコートをしてもらえないという辛すぎる現実。 傷ついたアイシアは『ランダルと婚約した理由』を思い出した。三年前に両親と弟がいっぺんに亡くなり唯一の相続人となった自分が、国中の『ろくでなし』からロックオンされたことを。領民のことを思えばランダルが一番マシだったことを。 「婚約者として正しく扱ってほしいなんて、欲張りになっていた自分が恥ずかしい!」 初心に返ったアイシアは、立派にひとりぼっちのデビュタントを乗り切ろうと心に誓う。それどころか、エイドリアナ王女のデビュタントを成功させるため、全力でランダルを支援し始めて──。 (あれ? ランダル様が罪悪感に駆られているように見えるのは、私の気のせいよね?) ★小説家になろう様にも投稿しました★

処理中です...