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9.村の少年
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森の入り口で、もう魔獣もいなくなったので、そろそろ転移して、邸に戻ろうかと思っていると、少年が草を掻き分け、薬草を採っているのを見つける。
「ここは、浄化したけど、まだ、魔獣の取りこぼしがいるかもしれないから、子供はまだ立ち入り禁止だよ。」
浄化して、まだ、いっときも経っていない。
こんなところに子供がいるのは、危険過ぎる。
「私達と一緒にもう少し森の外まで、出ましょう。」
「いいの。
ここなら、みんな入って来ないから、薬草たくさんあるもん。」
少年はこちらを見ようともせず、せっせと薬草を採っている。
「魔獣にやられるかもしれないって、言ってるんだ。」
そうレオナルドが言うと、少年は手を止め、涙を浮かべながら、二人を初めて見る。
「ごめんね。
私達あなたが心配なだけなの。
親御さんもここにいるのを知ったら、悲しむわ。」
「ママは、もう僕がここにいても、わからないよ。
ママはもう三日も意識がないんだ。
お医者様ももう無理だって。
だから、僕、王都の治癒魔法師の人に来てもらえるように薬草を売って、お金を作るんだ。
ママが死んじゃったら、僕一人になっちゃう。」
「お母さんはそんなに悪いの?
だったら、私達も薬草を採るの手伝うわ。」
そう言って、キャロライナは少年と一緒に屈んで、薬草を採り始める。
「やっぱり言うよな。」
レオナルドはキャロライナが少年を見て見ぬふりができない人だと、薄々感じていたので、諦めて、薬草採取に加わる。
そして、少年の籠いっぱいに薬草が採れたので、二人は森の外の魔獣が出ない安全なところまで、少年を送ることにする。
村へ続く道を歩いていると、村の入り口で、中年のふくよかな女性が走り寄って来る。
「マルコ、お母さんが血を吐いたわ。
お医者様がもうダメだって。」
少年は薬草の入った籠を投げ出し、慌てて走り出した。
キャロライナは少年が心配で、後を追うと、小さな家のベッドに少年の母親と思われる青白く、痩せた女性が横たわっている。
その後をレオナルドが追いつき、女性を見つめる。
「ママ、僕をおいていかないで。」
少年はその女性の手を握りながら、涙を流している。
「レオ、私達で何とかならないかしら。
転移して、治癒魔法師の方を連れてくるのは、どうかしら。
費用は建て替えてくれたら、私が後から払うわ。」
キャロライナはレオナルドに頼み込む。
「治癒魔法師はそもそも人数が少なく、一日に治癒できる人数も限られる。
だからすぐに治癒魔法師に来てもらうことは王族でも難しい。
リーのつてを使って依頼したとしても、この状態だと間に合わないだろう。」
「そんな。
レオは治癒魔法は使えないの?」
「ほんの僅かならあるけど、治癒できるほどでは、ないと思う。」
「今私達は二人だわ。
二人の魔力を合わせて、ちょっとでも可能性があるなら、やってみましょう。
私はどうなってもいいから。
お願い、レオ。」
そう言って、キャロライナがレオナルドを見つめると、少年もレオナルドを見つめ、二人のウルウルした瞳に見つめられると、
「わかった。
やるよ。
でも、期待するなよ。」
と言いながら、レオナルドはキャロライナの手を握りながら、女性に手のひらをかざして、治癒魔力を流す。
すると、青白かった女性の顔色は、少しず良くなり、苦しそうだった呼吸も穏やかになっていく。
それと、反対にキャロライナは全身から力が抜けていき、めまいもどんどん強くなり、その場にぐったりとうずくまる。
「お姉さんっ、大丈夫?」
「私は大丈夫よ。」
何とか返事をするものの、もう立ち上がることさえできなくなっていた。
レオナルドもまた、青白い顔色をしながらも歯を食い縛って、なんとか耐えていた。
「もう心配はいらないから、後から邸の者をよこす。」
レオナルドは何とか言葉を発した後、ぐったりしたキャロライナを抱えて、最後の力を振り絞り、ローレンス邸に転移する。
そして、キャロライナをベッドに寝かせると、トラバスに指示を出し、レオナルド自身も自室のベッドになんとか辿り着き、深い眠りについたのだった。
「ここは、浄化したけど、まだ、魔獣の取りこぼしがいるかもしれないから、子供はまだ立ち入り禁止だよ。」
浄化して、まだ、いっときも経っていない。
こんなところに子供がいるのは、危険過ぎる。
「私達と一緒にもう少し森の外まで、出ましょう。」
「いいの。
ここなら、みんな入って来ないから、薬草たくさんあるもん。」
少年はこちらを見ようともせず、せっせと薬草を採っている。
「魔獣にやられるかもしれないって、言ってるんだ。」
そうレオナルドが言うと、少年は手を止め、涙を浮かべながら、二人を初めて見る。
「ごめんね。
私達あなたが心配なだけなの。
親御さんもここにいるのを知ったら、悲しむわ。」
「ママは、もう僕がここにいても、わからないよ。
ママはもう三日も意識がないんだ。
お医者様ももう無理だって。
だから、僕、王都の治癒魔法師の人に来てもらえるように薬草を売って、お金を作るんだ。
ママが死んじゃったら、僕一人になっちゃう。」
「お母さんはそんなに悪いの?
だったら、私達も薬草を採るの手伝うわ。」
そう言って、キャロライナは少年と一緒に屈んで、薬草を採り始める。
「やっぱり言うよな。」
レオナルドはキャロライナが少年を見て見ぬふりができない人だと、薄々感じていたので、諦めて、薬草採取に加わる。
そして、少年の籠いっぱいに薬草が採れたので、二人は森の外の魔獣が出ない安全なところまで、少年を送ることにする。
村へ続く道を歩いていると、村の入り口で、中年のふくよかな女性が走り寄って来る。
「マルコ、お母さんが血を吐いたわ。
お医者様がもうダメだって。」
少年は薬草の入った籠を投げ出し、慌てて走り出した。
キャロライナは少年が心配で、後を追うと、小さな家のベッドに少年の母親と思われる青白く、痩せた女性が横たわっている。
その後をレオナルドが追いつき、女性を見つめる。
「ママ、僕をおいていかないで。」
少年はその女性の手を握りながら、涙を流している。
「レオ、私達で何とかならないかしら。
転移して、治癒魔法師の方を連れてくるのは、どうかしら。
費用は建て替えてくれたら、私が後から払うわ。」
キャロライナはレオナルドに頼み込む。
「治癒魔法師はそもそも人数が少なく、一日に治癒できる人数も限られる。
だからすぐに治癒魔法師に来てもらうことは王族でも難しい。
リーのつてを使って依頼したとしても、この状態だと間に合わないだろう。」
「そんな。
レオは治癒魔法は使えないの?」
「ほんの僅かならあるけど、治癒できるほどでは、ないと思う。」
「今私達は二人だわ。
二人の魔力を合わせて、ちょっとでも可能性があるなら、やってみましょう。
私はどうなってもいいから。
お願い、レオ。」
そう言って、キャロライナがレオナルドを見つめると、少年もレオナルドを見つめ、二人のウルウルした瞳に見つめられると、
「わかった。
やるよ。
でも、期待するなよ。」
と言いながら、レオナルドはキャロライナの手を握りながら、女性に手のひらをかざして、治癒魔力を流す。
すると、青白かった女性の顔色は、少しず良くなり、苦しそうだった呼吸も穏やかになっていく。
それと、反対にキャロライナは全身から力が抜けていき、めまいもどんどん強くなり、その場にぐったりとうずくまる。
「お姉さんっ、大丈夫?」
「私は大丈夫よ。」
何とか返事をするものの、もう立ち上がることさえできなくなっていた。
レオナルドもまた、青白い顔色をしながらも歯を食い縛って、なんとか耐えていた。
「もう心配はいらないから、後から邸の者をよこす。」
レオナルドは何とか言葉を発した後、ぐったりしたキャロライナを抱えて、最後の力を振り絞り、ローレンス邸に転移する。
そして、キャロライナをベッドに寝かせると、トラバスに指示を出し、レオナルド自身も自室のベッドになんとか辿り着き、深い眠りについたのだった。
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