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18.二人の接点

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「僕が生まれた頃、母が身体が弱く、床についていることが多かったんだ。
 だから、乳母がいたんだ。

 その人の子供も男の子で幼馴染の僕達は、乳母と三人でよく一緒に過ごしていた。
 僕は彼女にとても懐いていたよ。

 6歳の頃、目が覚めると馬車に揺られていて、乳母と二人だった。

 彼女は母が攫われたって言うんだ。

 僕も狙われているから、僕を一人孤児院へ隠すって。
 でも、話すとバレてしまうから、決して声を出してはいけない。
 話したら母が一生帰ることができなくなってしまうと言ったんだ。

 孤児院の前に置かれた僕は、孤児院の大人達に何を聞かれても決して話さず、彼女が迎えに来るのを待ったんだ。
 だけど、なかなか迎えは来なかった。

 それで、周りの子供達と馴染もうとするけれども、公爵子息の名を持たず、一言も話さない僕は、誰とも仲良くなれなかったんだ。

 ずっと一人で母のためとはいえ、寂しかった。

 そんな時だよ。
 ミラと出会ったのは。

 君は僕が話さないことも、まるで気にする風もなく、当たり前に遊びの中に入れてくれたんだ。

 その日から、徐々にみんなも、身振り手振りで仲間に入れてくれるようになったんだ。

 君はお母さんらしき女性に連れられて、孤児院にたまにしか来ないから、君が来るのをいつも楽しみに待っていたよ。

 でも、君は当たり前に僕を受け入れるだけあって、僕のことを特別には思ってくれてないことはわかっていた。

 それでも、僕にとっては君は特別で、君のフワフワの弾む髪の毛とアメジストの瞳を見るたびにドキドキしていたんだ。

 その間も、ずっと乳母を待っていたけど、結局彼女は現れなかった。
 でも、子供の僕は約束を守る以外に選択肢が無かった。

 半年後、邸の者が来た時も僕は話さず、知らないフリをした。
 けど、そのすぐ後、父が来て、初めて僕は声を出した。
 そして、父と共に邸に戻ったんだ。

 その後、父から僕は乳母に騙されていたと教えてもらったんだ。
 僕が邸に戻った頃には母は憔悴しきって、立ち上がることもできなくなっていたんだ。

 僕は乳母をとても信じていたから、その後、人間不信に陥ったよ。
 だから、母と僕は母がなくなるまでの一年間、別荘でひっそりと暮らしたんだ。

 後から知ったんだけど、乳母は綺麗な人で、父と一緒になりたかったそうだ。

 僕がいなくなったら、母を追い出し、父と再婚するつもりでいたみたいだけど、追ってが早すぎて、僕を孤児院に隠して、自分は逃げたそうだ。

 二人を探している父達は、なかなか一人でいる僕を探すことは出来なかったらしい。

 それでも、僕の碧眼は目立つから、孤児院を訪れた知人が、僕に似た子供が孤児院にいると邸の者に話したんだって。 

 まさか孤児院にいるとは思わないけれど、一応、邸の者が確認に来たら、本当に僕だったそうだ。

 でも、僕は信じず、その後、父が慌てて迎えに来たってわけ。

 この話は公爵家の醜聞になるから、秘されることになったんだ。
 乳母なんて、身内も同然だからね。

 それなのに、裏切られ、僕を見つけることもなかなかできず、僕は人間不信でもう人前に立つことも危ぶまれた。

 母を失った後、父も後妻をもうけることを拒否し、僕しか子供がいなかったから、僕が何とかならない場合には、遠縁から養子をもらう予定だった。

 でも、母が亡くなった後、僕が立ち上がらなけば、せっかく病弱ながら、僕を産んでくれた母に申し訳が立たないと思って、僕は邸に一人戻ったんだ。」

 ルークの子供の頃の話は、ミラが孤児院で会ったどの子供達にも負けないほど、悲しい過去だった。
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