愛され女は、秘されたギフトを惜しまない

３.ギフトに気づくきっかけ

　幼馴染の二人はお互いの屋敷で小さな頃からよく遊んでいた。

　アリスは無意識のうちにミスが多く、馴染めずにいる庭師や料理人、侍女に

「おじさん。
　おじさんは庭の手入れをするよりもお金の計算をした方があってるよ。」

　とか

「お姉さんは皿洗いより、服作りがとぉっても上手にできるのに。」

　などとアリスは意識せずにに言っていた。

　悩んでいた人達は最初は子供の言うことだからと受け流すが、次第に合わない仕事がつらくなり、ダメ元で言う通り仕事の内容に変えるとたちまち力を発揮して、その部門のエキスパートになっていった。

　アリスは幼いので、自分にそのようなギフトがあることはわからないでいる。

　しかし、アリスより３歳年上のレイモンドは幼い頃から頭が良く、アリスの発言と周りの大人達の変化でアリスのギフトの存在に一人だけ気づいて、それとなく、アリスの両親に告げた。

「アリスはその人がどんな仕事がピッタリなのか、わかるようだよ。
　アリスの言った通りに仕事を変えるとみんなニコニコで働いているよ。」

　それを聞いたアリスの両親は、時々アリスの言動をいたく感謝されることがあったため、急いで神殿に行き、そのギフトを確認する。

　そして、両親は人生に深く影響を与えるギフトが、他者に利用される恐れがあり、想像もつかない恐ろしい事件に巻き込まれる可能性を懸念した。

　そのため、適職がわかるというギフトのことをレイモンドに口止めした。

「レイモンド君、アリスのこと、君の言った通りだったよ。　

　でもね、その力を使いたくて、アリスを連れて行ってしまう大人がいたら困るから、内緒にしてくれるかなぁ。
　アリスを守りたいんだ。」

「うん、僕誰にも言わないよ。
　約束する。」

「頼んだよ。
　ありがとう。」

　聡明なレイモンドはアリスのギフトについて誰にも話さず、アリスを両親と共に守った。

　アリスがそのことを知ったのは大分先のことであった。