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3.私を探す人 ①

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「ユリウス様、ここを開けてもいいでしょうか?」

 夜中に側近がドアをバンバン叩く音で起こされる。

「いいよ、何?」

 走り込むように部屋に入って来た側近ワトスをメインデルト王国の若き王、ユリウスはぼんやりと見る。

「大変です。
 西国がマイルズ王国に攻め入った模様。
 砦を越えられ、王都に進んでいるとのこと。」

「何故そんなことが?」

「バーンハルト王子とセシーリア王女の結婚にむけた合同訓練をフェルミノ王国側で行うために、手薄になったところを突かれたそうです。
 こうなることは誰も想定しておらず。」

「何てことだ。」

 ユリウスは頭を抱えた。

 この平穏な時代に武力で侵略するとは、誰も想定していないのはその通りで、それぞれの国に軍はあるが、本当の戦闘なんて、ユリウスも起こるはずがないと思っていた。

 軍は国を守るための象徴みたいなもので、実質上、ならず者達を相手にするのがせいぜいだった。

「マイルズ国に加勢に向かう。
 軍を集めよ。」

 こうしてマイルズ王国に入り、セシーリアの母国のフェルミノ国軍のイーサン王子と共に、マイルズ国軍と自国軍で西国を制圧した時にはすでに遅く、マイルズ国王と王妃はすでに亡くなった後であった。

「バーンハルトとセシーリアはどこだ?」

 ユリウスはセシーリアが心配で苛立つ。
 ユリウスとセシーリアとその兄のイーサンは子供の頃からの幼馴染だった。

「ただ今確認したところ、マイルズ王が王宮に攻め入られる直前に二人を逃したそうです。

 制圧した西国軍はバーンハルト王子達を追っていたところだった模様。」

「二人はフェルミノ国へ続く森か?」

「はい、そちらにマイルズ王国の軍がいたため、そちらにむかわれたようです。」

「ではイーサン、この国は君が治めておいてくれ。
 私はバーンハルト達を探す。」

「ああ、わかった。
 セシーリアを頼む。」

 マイルズ王国のことはこのたびの結婚により、義兄弟になる予定のイーサンに任せて、ユリウスはセシーリアをなんとしても探したかった。

 ユリウスは元々セシーリアが好きで、結婚したいと考え、何度もフェルミノ王国へ結婚の打診をしていた。

 しかし、ユリウスの国とは元々親交国なので、結婚は利がないと断られていた。

 だから、彼女との結婚はもう諦めた。

 それでも、彼女に命の危機が迫っていることには、ユリウスは耐えられそうもなかった。

 バーンハルト、何としてもセシーリアを守るんだ。

 そう思いながら、馬を駆る。

 森は広大で身を隠すのは容易だが、同時に迷い易く、遭難者が多発している。

 マイルズ王国からフェルミノ王国へと続く道は基本的には一本道だが、人を避けながら進むと、入り組んだ道を選ぶことが多く、細かな道は鬱蒼とした森の難しさを生み、さらに夜間になると判断を間違え易い。

 しばらくすると、人の騎乗していない馬を見つける。

 愛馬から降り確かめると、マイルズ王国の馬だった。

 もしかしたら、この馬にバーンハルトが乗っていた可能性がある。

 そうなると何らかのトラブルを示唆する。

 二人が馬に乗ってないとするなら、まだ、この森のどこかにいるのか?

 依然セシーリア達は消息不明のまま、二人を探すため、ユリウス達は森の中で、野営することとする。
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