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3.手紙

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 翌日の朝、ライナートは寝室で、いつものようにオーレリアが起こしに来るのを、待っていた。

 だか、オーレリアは、いっこうに起こしに来ない。

 仕方ないので、ライナートは自分で起きて、用意されてある服に着替える。

 オーレリアが寝坊なんて、珍しい。

 昨日ちょっとだけ様子が変だったし、何かあるのかな。

 その時、部屋をノックをして、側近のヤンセンが入って来た。

「ライナート様、まだこちらでしたか、本日は準備ができましたら、公爵家にキアーラ様をお迎えに上がる予定です。」

「なんだって。」

 ライナートは青ざめた。
 今日は婚約者を迎えに行き、その後はその女性がライナートの婚約者として、王宮に住む予定だ。

 ライナートは忙しくて、すっかり忘れていた。

 その事をどのようにオーレリアに話せばいいのか分からずに、無意識に考えないようにしていたらしい。

 だか、無常にも、時は流れ、今日を迎えた。

「リアの姿が見えないんだ。
探してくれ。」

 とりあえずは、オーレリアと話さねばと思い、ヤンセンにオーレリアを呼ぶようにと指示を出すが、いっこうにオーレリアは現れない。

 結局そのまま、キアーラを王家の馬車で迎えに行く。
 公爵家の父君と話し、キアーラを無事に連れて王宮に戻るが、頭の中はオーレリアでいっぱいだった。

 なので、キアーラが王宮に着くと、ゆっくり休むように告げ、今度は乳母を呼び出す。

「朝から、オーレリアの姿が見えないんだ。
 何か聞いている?
 用事があって、休むって言ってたかなぁ。」

「ライナート様、こちらを預かっております。
 ご覧になってください。」

 そう言うと乳母は、ライナート宛の手紙を渡して、すぐに出て行ってしまう。

 ライナートは言われた通り、封を開けて、手紙を読み出した。

 そこには、オーレリアの字で、昨日限りで王宮を出て、一人で生きていくと書いてあった。
 ライナートの幸せを祈っているとも。

 ライナートはその手紙を見て、驚きに目を見開いた。
 そして、頭を抱え、崩れるようにその場にうずくまる。

 オーレリアは、この手紙を書くまでに、しっかりと考えて、ここを離れる決心をしたのであろう。

 彼女が突発的に大切な判断をする人ではないことは、僕が一番わかっている。

 僕が現実逃避している間に、考え抜いてのことなのだ。

 自分が恥ずかしい。

 オーレリアがこうしなければいけなかったのは、すべて自分のせいで。
 だからと言って、ライナートには、どうにもできなかった。

 自分は何をしているのだろう。

 オーレリアを思うならば、自ら身を引く彼女を、尊重しなければならない。

 自分は結局、何もできなかったのだから。

 その夜、わかってはいるけれど、前を向く気持ちになれず、その手紙を何度も読み返し、ワインを飲んだ。

 涙を流しながら。
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