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6.盗賊の壊滅作戦
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「アリシア様、盗賊のアジトを掴みました。」
私達四人は、いつもの作戦会議のために、応接室に集合している。
「よくやったわ。
これからどうするの?」
「はい、やはり賊達は以前見回りをした領地境の街に潜伏していたので、僕とバーナードと後は私兵、当局の者を連れて、一気に押し入り確保します。
それから当局の牢に入れてから、一人ずつ僕達が尋問して、全体を把握します。」
「危険ではないの?」
「多少はありますけれど仕方ないです。
放置して邸を襲われる方が厄介なので。」
「そうね。
エイデンもバーナードも気をつけてね。
もちろん報酬を上乗せするわ。
当局の者達にも。
そのように伝えて。」
「アリシア様は僕達を心配してくれるのですか?」
「当たり前よ。
大切な仲間じゃない。
あなた達と出会えなかったら、こんなに毎日安心して暮らせなかったわ。
私はいつも感謝しているけれど、同時に二人のことも心配しているの。
忘れないで。」
「アリシア様、一つ聞いていいですか?」
「何かしら?
エイデン。」
「もし結婚する相手が、ダニエルさんが常にそばにいることを嫌がったらどうしますか?」
「そんな人とは結婚しないわ。
私はダニエルとは絶対に離れないの。」
「でも大概の男は、ダニエルさんがそばにいるのを嫌がりますよ。」
「そうなの?」
「そうですよ。
夫よりも明らかに長い時間そばにいる幼馴染の男性ですからね。
結婚する時は、そのことも忘れないでください。」
「わかったわ。」
「話を脱線させてしまってすまない。
では明日の夜、アジトへ向かいます。
ダニエルさん、アリシア様を頼む。」
「わかった。」
その後、予定通りバーナード達は盗賊達のアジトを制圧して、尋問しているのかなかなか戻らなかった。
「遅いわね二人。」
「そうですね。
でも一人ずつ尋問するとなると、相当な時間を要します。
今まで僕達が何もできていなかったせいで、盗賊の人数が膨れ上がってしまっているから。」
「そうね。
私達のせいね。」
「まだ彼らが戻るのにしばらくかかるだろうから、アリシア様は先に湯あみをしてください。
僕は今夜はここにいますから。
もし二人が戻ったとしても、話は明日聞きましょう。
アリシア様は、寝室から出ないでください。」
私の居室で、バーナードとエイデンの帰りをダニエルと待っていた。
「ありがとう、そうするわ。」
ダニエルは知っていて言ってくれているのだ。
こんな夜は私が湯あみを怖がり、その後精神が不安定になるのを。
そんな姿は部下達には見せられない。
私の両親が賊に襲われて亡くなった時、私は湯あみの最中だった。
邸の者達の悲鳴が響く中私は、裸のまま慌てて汚れた洗濯物の中に体を沈めて、いつの間にか気を失っていた。
普段から襲撃された時は身を潜めるように言わられていて、私は裸だったので、隠し部屋まで行けなかったのだ。
次の日、目を覚ました私は、両親が賊に襲われて亡くなったことを、ダニエルから知らされた。
ダニエルは私を必死で探していたけれど、洗濯物の中にいる私を見つけられず、一人で隠し部屋に身を潜めていたのだ。
だから私は、湯あみしている時に何も起こらないと頭では理解しているのに、怖くなってしまうのだ。
最近では平常心を保てるようになったけれど、今日のようにバーナード達を案じている時は特に動揺してしまう。
だからダニエルは、湯あみをした後は、私は誰にも合わず、寝室で潜んでいればいいと言い、代わりに居室で二人を待つと言ってくれている。
今までどんなに兵が減って行って、ダニエルの負担が増しても、領主としてしっかりしてほしいなどと、ダニエルに言われたことはない。
私が何度も怖がるのを克服しようとして、ダメだったのを多分ダニエルは気づいていて、そんな私を受け入れてくれている。
私は急いで湯あみをして、寝室に戻った。
「バーナード達は?」
ドア越しに居室のダニエルに聞く。
「まだですよ。
今日は帰らないかもしれないですね。
アリシア様は先にお休みください。
僕はここにいますから。」
「ありがとう。
ダニエルはいつも私の思っていることをわかっているのね。」
「いえ、わかっているわけではないですよ。
僕がこうしたいと思っているだけですから。
湯あみをした後の女性は男達に会わない方がいい。」
ダニエルはいくら新しい塀や警備体制があっても、私が無意識にバーナードとエイデン達がいないことに不安がっていることに気づいている。
そして、不安定になる私の心を守ってくれる。
「じゃあ、おやすみ。」
「お休みなさい。」
私は安心してベッドに入る。
ダニエルが居室にいてくれるなら、大丈夫。
私はすべてを受け入れる。
この先何が起きても起きなくても。
「アリシア様、おはようございます。
バーナード達が戻りました。
急がないでいいので、準備をしたら応接室へ行きましょう。」
朝目が覚めると、部屋越しにダニエルの声が聞こえた。
「おはよう。
すぐ準備をするわ。」
「お疲れ様。
二人は大丈夫?」
いつもの四人で応接室に集まった。
「アリシア様、俺達はこれしき何ともないさ。」
「いや、バーナードと違って僕は疲れたよ。
だけど頑張ったおかげで、尋問は捗った。
マルノという伯爵が、アリシア様を欲しがったんだ。」
「やっぱりそうなのね。
何度も結婚の打診を受けているわ。
マルノ伯爵は二十も年上なのよ。
でも、私には領地と豊富な資源のある山があるから欲しがるの。
私を攫おうと画策する男性なんて、結婚したら何をされるかわからないわ。
だから、彼とは絶対結婚したくない。
でも、爵位が上だから賊達の証言だけでは、その方自体を罰することができないわ。
悔しいけれど。」
「王の前で盗賊達に証言させても、自作自演と言われてしまえば、それまでですからね。」
「今回のことで、少しは懲りてくれればいいけれど。
それに、私を狙っているのは彼だけじゃないわ。
もうどの方がまともであるかも、だんだんわからなくなってしまったわ。
それぐらいなら、いっそのこと一生独身でいるのはどうかしら?」
「それは、大胆な考えですね。
今後も警備を強くして行きますけれど、結局一生狙われ続けますよ。」
「そうよね。
私は今の状態が気に入ってるのに。
本当に迷惑な話だわ。」
私達四人は、いつもの作戦会議のために、応接室に集合している。
「よくやったわ。
これからどうするの?」
「はい、やはり賊達は以前見回りをした領地境の街に潜伏していたので、僕とバーナードと後は私兵、当局の者を連れて、一気に押し入り確保します。
それから当局の牢に入れてから、一人ずつ僕達が尋問して、全体を把握します。」
「危険ではないの?」
「多少はありますけれど仕方ないです。
放置して邸を襲われる方が厄介なので。」
「そうね。
エイデンもバーナードも気をつけてね。
もちろん報酬を上乗せするわ。
当局の者達にも。
そのように伝えて。」
「アリシア様は僕達を心配してくれるのですか?」
「当たり前よ。
大切な仲間じゃない。
あなた達と出会えなかったら、こんなに毎日安心して暮らせなかったわ。
私はいつも感謝しているけれど、同時に二人のことも心配しているの。
忘れないで。」
「アリシア様、一つ聞いていいですか?」
「何かしら?
エイデン。」
「もし結婚する相手が、ダニエルさんが常にそばにいることを嫌がったらどうしますか?」
「そんな人とは結婚しないわ。
私はダニエルとは絶対に離れないの。」
「でも大概の男は、ダニエルさんがそばにいるのを嫌がりますよ。」
「そうなの?」
「そうですよ。
夫よりも明らかに長い時間そばにいる幼馴染の男性ですからね。
結婚する時は、そのことも忘れないでください。」
「わかったわ。」
「話を脱線させてしまってすまない。
では明日の夜、アジトへ向かいます。
ダニエルさん、アリシア様を頼む。」
「わかった。」
その後、予定通りバーナード達は盗賊達のアジトを制圧して、尋問しているのかなかなか戻らなかった。
「遅いわね二人。」
「そうですね。
でも一人ずつ尋問するとなると、相当な時間を要します。
今まで僕達が何もできていなかったせいで、盗賊の人数が膨れ上がってしまっているから。」
「そうね。
私達のせいね。」
「まだ彼らが戻るのにしばらくかかるだろうから、アリシア様は先に湯あみをしてください。
僕は今夜はここにいますから。
もし二人が戻ったとしても、話は明日聞きましょう。
アリシア様は、寝室から出ないでください。」
私の居室で、バーナードとエイデンの帰りをダニエルと待っていた。
「ありがとう、そうするわ。」
ダニエルは知っていて言ってくれているのだ。
こんな夜は私が湯あみを怖がり、その後精神が不安定になるのを。
そんな姿は部下達には見せられない。
私の両親が賊に襲われて亡くなった時、私は湯あみの最中だった。
邸の者達の悲鳴が響く中私は、裸のまま慌てて汚れた洗濯物の中に体を沈めて、いつの間にか気を失っていた。
普段から襲撃された時は身を潜めるように言わられていて、私は裸だったので、隠し部屋まで行けなかったのだ。
次の日、目を覚ました私は、両親が賊に襲われて亡くなったことを、ダニエルから知らされた。
ダニエルは私を必死で探していたけれど、洗濯物の中にいる私を見つけられず、一人で隠し部屋に身を潜めていたのだ。
だから私は、湯あみしている時に何も起こらないと頭では理解しているのに、怖くなってしまうのだ。
最近では平常心を保てるようになったけれど、今日のようにバーナード達を案じている時は特に動揺してしまう。
だからダニエルは、湯あみをした後は、私は誰にも合わず、寝室で潜んでいればいいと言い、代わりに居室で二人を待つと言ってくれている。
今までどんなに兵が減って行って、ダニエルの負担が増しても、領主としてしっかりしてほしいなどと、ダニエルに言われたことはない。
私が何度も怖がるのを克服しようとして、ダメだったのを多分ダニエルは気づいていて、そんな私を受け入れてくれている。
私は急いで湯あみをして、寝室に戻った。
「バーナード達は?」
ドア越しに居室のダニエルに聞く。
「まだですよ。
今日は帰らないかもしれないですね。
アリシア様は先にお休みください。
僕はここにいますから。」
「ありがとう。
ダニエルはいつも私の思っていることをわかっているのね。」
「いえ、わかっているわけではないですよ。
僕がこうしたいと思っているだけですから。
湯あみをした後の女性は男達に会わない方がいい。」
ダニエルはいくら新しい塀や警備体制があっても、私が無意識にバーナードとエイデン達がいないことに不安がっていることに気づいている。
そして、不安定になる私の心を守ってくれる。
「じゃあ、おやすみ。」
「お休みなさい。」
私は安心してベッドに入る。
ダニエルが居室にいてくれるなら、大丈夫。
私はすべてを受け入れる。
この先何が起きても起きなくても。
「アリシア様、おはようございます。
バーナード達が戻りました。
急がないでいいので、準備をしたら応接室へ行きましょう。」
朝目が覚めると、部屋越しにダニエルの声が聞こえた。
「おはよう。
すぐ準備をするわ。」
「お疲れ様。
二人は大丈夫?」
いつもの四人で応接室に集まった。
「アリシア様、俺達はこれしき何ともないさ。」
「いや、バーナードと違って僕は疲れたよ。
だけど頑張ったおかげで、尋問は捗った。
マルノという伯爵が、アリシア様を欲しがったんだ。」
「やっぱりそうなのね。
何度も結婚の打診を受けているわ。
マルノ伯爵は二十も年上なのよ。
でも、私には領地と豊富な資源のある山があるから欲しがるの。
私を攫おうと画策する男性なんて、結婚したら何をされるかわからないわ。
だから、彼とは絶対結婚したくない。
でも、爵位が上だから賊達の証言だけでは、その方自体を罰することができないわ。
悔しいけれど。」
「王の前で盗賊達に証言させても、自作自演と言われてしまえば、それまでですからね。」
「今回のことで、少しは懲りてくれればいいけれど。
それに、私を狙っているのは彼だけじゃないわ。
もうどの方がまともであるかも、だんだんわからなくなってしまったわ。
それぐらいなら、いっそのこと一生独身でいるのはどうかしら?」
「それは、大胆な考えですね。
今後も警備を強くして行きますけれど、結局一生狙われ続けますよ。」
「そうよね。
私は今の状態が気に入ってるのに。
本当に迷惑な話だわ。」
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