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デリヘルスタッフの日常

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 僕の勤務するお店は夕方の5時から電話受付を開始して、案内枠は夜6時からとなっている夜型店。

 最初の1時間で色々と準備をしてスタート枠である夜6時に間に合うようにキャストを送り出す。

 割と繁盛している方だと思うが他店の勤務経験も無いのでよくわからない。

 繁華街アルアルなのが空予約をされる営業妨害だ。昨今では1週間くらい前からネット予約が出来たりするが空予約の被害もたまにある。

 店長と話し合い僕の提案で事前予約は本指名のみとして本指名以外は当日予約のみとした。

 多分かなり独自なやり方だ。そもそも事前予約で圧倒的に多かったのが瑠璃るりちゃんと茉莉まつりだった。

 この2人に空予約されると中々きつい。他の子もちょこちょこ事前予約は入るがほとんどが本指名だったので、大した混乱も無く移行できた。

 さて、今日も平和に平常運転だ。と思っていると、ドカドカと足音を響かせながら茉莉まつりが事務所に入って来た。

佐々木ささっちどーゆー事?」
 と、激おこプンプン丸状態だ。

「うーん。どーゆー事とは?」
 と質問に対して質問で返した。

 すると
「は?ももの生乳揉みしだいてたってどーゆー事?」
 と茉莉まつりが質問し直した。

 それを聞いた隣りに居た店長がケタケタ笑いながら

「確かに生乳揉んでたわwww」

 と僕の代わりに茉莉まつりに答えていた。

 それを聞いた茉莉まつり
「はぁー????」
 と鬼の形相で僕を睨みつけた。

「いやー違うよ・・・。うーん。違くは無いけど・・・。」

 と僕がしどろもどろに答えながら説明を始めた。

「いやさ、ももちゃんが自分のおっぱいはお客さんにめっちゃ評判がイイって自慢してたから、凄いね!よっぽどイイおっぱいなんだろうね!って言ったらさ、揉んでみる?って言うからちょっと揉んだんだけどさ。普通は服の上から揉むとか知らなくてさ、服の中に手を入れて揉んじゃったんだよね・・・。」
 と僕は苦笑いしながら答えた。

 すると茉莉まつり
「いやいやいや。え?おかしくない?え?おかしいよね?そもそもさ、服の上から揉むのも普通じゃないからね!」
 と強い口調で言った。

 そして店長を睨みながら
「隣に居てなんで止めないのよ!」
 と今度は店長に文句を言い始めた。

「えー?飛び火?」
 と店長は苦笑いしながら

「でもさ、自分の欲も出さないで素直にそーゆー事が出来ちゃうのが佐々木さんの良い所じゃない?俺には到底真似出来ないよw」
 とフォローしてくれた。

「でもさ、ももは男見るとあんな感じで直ぐアプローチするから心配でさ・・・。」
 と口ごもる茉莉まつり

 店長は
「大丈夫だよ。佐々木さんは天然のたらしなだけで、欲に溺れる事は無いしさ、案外身持ち固いよ。それは茉莉まつりちゃんも本当はわかってるでしょ?」
 と言ってくれた。

「わかってるけどさー・・・。」
 と茉莉まつりも渋々ながら引いてくれた。

 童貞つかまえて天然のたらしとか何言ってんだ?とか思いながらも丸く収まってホッとしました。

 最近入店した香澄かすみちゃんという女の子がいる。年齢は23歳でおとなしめな子だ。

 以前在籍していたお店であまり稼げずにこの店に転籍して来た。

 色々悩んだりしてるようだったので話しを聞いてみた。

 まず気になったのが、自分はお仕事を一生懸命やっているのに結果に結びつかないと言っている点と出勤日数を増やしたいが接客がしんどいという点だった。

香澄かすみちゃんは、お仕事頑張ってるって言ってたけどさ、この仕事って事務仕事な訳じゃないからさ、それだけじゃダメっていうのは分かるかな?」
 と話すと

「分かるんですけど、どうすれば良いか分からないんです。」
 と素直に自分の心境を教えてくれた。

「男というか、お客さんの立場からいうとさ、楽しく遊びに来る訳じゃん?」

「はい」

「そこにさ、私お仕事頑張ります!ってテンションで接客しても楽しくないじゃん?」

「???はい・・・。」

「だからさ、楽しく遊べそうなお客さんを探せばいいんじゃないかな?」

「どういう事ですか?」

「本指名ってさ、お客さんがキャストを選ぶんじゃなくてさ、実はキャストがお客さんを選んでるんだよ!」

「え?」

「実際さ、本指名が多くて稼いでる子ってさ、楽しそうに稼いでるし、本指名で埋まってる少しの隙間に新規のお客さん入れようとするとさ、疲れるから嫌って嫌がるんだよね。」

「え?」

「つまりさ、本指名で好んで来てくれるお客さんってキャストにとっては楽なんだよ。逆にいえば、嫌なお客さんは絶対に本指名にならないように対応してるんだよね。」

「選ばれるんじゃなくて選ぶんですか?」

「そうだよ!だって嫌なお客さんに通われたら嫌でしょ?だから皆んな手を抜くんだよ。そして良いお客さんには全力で接客するんだよ。その接客で本指名取れなきゃ2度目は無いから他のキャストに持ってかれちゃうからね。」

「えー、じゃあ皆んなそうやってるんですか?全てのお客さんを平等に接客しなくて良いんですか?」

「別に平等にする必要ってないよね。」

「以前在籍してたお店では、同じ料金払ってるんだから選り好みしないで平等に接客するようにって言われました。」

「そのお店ってさ、多分入客に対して本指名の割合って少なかったんじゃない?」

「うーん、詳しくは分からないですが、このお店みたいに事前予約で完売してる子って居なかった気がします。」

「だよね。平等に接客してたら本指名取れないよねw」

「え?何でですか?」

「だってさ、お客さんが本指名になるって事は特別な何かを感じたからだよ?皆んなに平等にしてたら特別感なんて感じないじゃんw」

「!!!!」

「だからさ、真面目に考える必要なんてないんだよ?お客さんが付いたら遊びに行ってきます!ってくらいに不真面目でいいんだよ。実際に稼いでる子がそんなに真面目な子に見える?むしろ皆んな自由人じゃない?」

「え、凄い!佐々木さんって凄いですね!ちょっとこの仕事が分かった気がしました!」

「まー、いってもさ、僕もスタッフ始めてまだ数ヶ月だから分からない事だらけなんだけどね。ただキャストの子達と話してて稼ぐ子と稼げない子の違いが少しだけ分かっちゃってさw」

「凄い!ちゃんと具体的に分析出来るとか佐々木さんって仕事出来る人っぽいw」

「ありがとwだからさ、香澄かすみちゃんもさ、仕事を頑張るんじゃなくて、どうすれば楽して稼げるかって頑張れば良いんじゃないかな?」

「やってみます!」

 と香澄かすみちゃんも笑顔になったし、ガンガン稼げるようになるのを期待して待ってようと思った。

 仕事が終わって帰宅後に茉莉まつりと話していると

「そーいえばさ、お店終わる間際に佐々木ささっち香澄かすみちゃんにアドバイスしてるのチラっと聞いてたけどさ、佐々木ささっち偉いよね!ちゃんと仕事してて格好良かったよw」
 と褒めてくれた。

「まーあれもさ、茉莉まつりと色々仕事の話したりさ、待機の女の子とかと話しをしていてさ、なんか違いを感じたんだよね。やる気とかじゃなくてさ、お客さんに対しての考え方とかさ」

「それでもさ、多分店長なんてそんな考え出来ないよw」

「てかさ、佐々木ささっちさ、新しいスタッフが入るまでって約束だったじゃん?」

「あー確かにw」

「店長さ、スタッフの求人止めちゃったみたいよw」

「え?なんで?」

佐々木ささっちの評判良いし、佐々木ささっちが入ってから実際売り上げ伸びてるらしいよw」

「えー知らなかったわwまー居心地良いし別にいいけどねwそれに仕事一緒にやるようになって改めて茉莉まつりの凄さもわかったしね!」

「えーホント?嬉しい!よし!私頑張ってナンバー1獲るわ!ナンバー1なったらいっぱい褒めてねw」

「おーw凄い意気込みwじゃあさ、ナンバー1獲ったらさ、お祝いになんかご褒美用意するよ!」

「え?マジ?ちょっと本気でがんばる!」

 と、何気ない会話だったが、これが起爆剤になるとはこの時は思いもしなかった。
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