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第2章 王位継承

第27話 王の存在

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「ソルフィンさん宛てに書簡です」
 城の係の者が、やってきて殿下に書簡を渡す。

 あれから1週間が経ったが、反フロイト陣営結集のために奔走しているリディムさんからの連絡待ちをずっとしていた。
 この書簡その待ちに待ったリディムさんからの連絡ということであり、3人で固唾をのんで書簡を開く。
 フリージアさんがそれを読み上げる

「親愛なるソルフィン殿下へ、この度は、大変お待たせして申し訳ございません、本題から入ります。
 我々はソルフィン殿下の旗印のもとに、諸侯らの同意を得て1000人からなる軍勢を手に入れることに成功しました。ポルト国境付近の、ムスタルの地に集結しており、ソルフィン殿下の到着を今や遅しと待っているところであります」
 殿下は私の顔を見て、涙を貯めている。
「殿下、殿下のために諸侯らが動いてくれました、これに答えるのが殿下の役割かと」
「うん…わかってる、僕が王だ」
 その顔はもう幼い少年ではなく、1000の軍勢を率いる王の顔をしていた。

 私達が城の門をでると、甲冑姿の100名の兵を率いた王の右手であるガロンさんが甲冑姿で馬にまたがっている。
「王より精鋭100名をとのことであったして王の右手である私を含めた101名、ただいまよりソルフィン殿の指揮下に入る」
 ガロンさんはそういって馬から降り、殿下に跪く。
 後ろの100名の兵も一糸乱れぬ動きで全員跪いた。

 殿下がその姿をみて
「それでは、ただいまよりポルト正規軍101名は我が配下に、そしてザナビル王都を取り返そうぞ!」
 そう言って右手を上げる。
 すると跪いた101名は一斉に立ち上がり「おおおおおおお」と勝鬨をあげた。

 104名のでの行軍が始まる。
 殿下は馬にまたがり、ちいさな体に甲冑を纏い馬を操っている、私とフリージアさんは同じ馬にまたがっているフリージアさんは馬に乗ったことないということなので私の後ろに乗ることになった。

 街の人々はその姿をみて、歓声を上げる。
 小さな少女や、老人たちが私達をみて手を振ってくれる。
 殿下はその一つ一つに馬上から手を振り、その声援に答えている。

 街を抜け、森を抜け、1日中移動が続く。

 私は殿下の姿を見る。
 小さな甲冑姿が滑稽にうつり、一生懸命馬を操っている。
 しかし、彼が声をだせば今や1000を超える軍が彼のために動き、働く。
 彼の帰りをまつ宮殿もある。

 これが終わったら、私は殿下のもとを去る。
 あのような少年を……私は復讐に取りつかれている、あの決闘裁判…あのときに克明に思い出した、私の生きる意味、そして覚悟、このままでは殿下を私の復讐の道具してしまう。

 以前は即位後の外遊に同行し、ガレオンに向かおうと考えていた、しかし今は…

 恐らく私はエイルを目の前にして正気を保つことはできないだろう、そんな姿を殿下やフリージアさんに見せたくはない。
 殿下やフリージアさんの前では、レクシアでいたい…

 それに国賓で招かれたものが、有力貴族の息子を殺すのだ、ガレオンとザナビルも一気に険悪となってしまう、下手すればソルフィン殿下にも危険が及ぶ。
 そんなことになる前に、私はザナビルを去る、ヘブンズワークスに所属しているということにしていれば誓約も問題ないはずだ。

 東の空が白くなってきているころ、目の前には岩を積み上げて作られたムスタルの砦が見え、夜通しの行軍が終わりを告げようとしている。

 ムスタルの砦は以前敵対していたときに、対ポルト用に作られたものであり敵対関係時代にはこの砦での攻防戦などが行われたりしていたとか、行軍中にガロンさんから聞いた話だけど、ポルトはこの砦を結局落とすことができず、ザナビルに攻め込むことができなかったということらしい。
 たしかにこの砦を攻め落とすのは大変そうに見える。

 両脇を険しい山に囲まれ、細い道の途中に大きな砦があるので、一気に道を通れるのは10人前後といったところであるため、大軍で包囲することもできない、山側から攻めるにも崖が急すぎておりることが難しい。
 ポルト正軍がこの砦に入るということは、歴史的にみても快挙であるとも言っていた。

 砦の門が開く。

 ポルト正軍も同行しているとは知らなかったため、兵士たちはジロジロと怪訝そうに見ているが、中に殿下がいることが分かると、一気に色めき立つ。

 建物の中からリディムさんがでてきて、私たちに駆け寄ってくる。
「殿下!よくご無事でしかもポルトの支援までうけられるとは」
「リディム、此度はよく私のために動いてくれた感謝する」
「いえ、私は当然のことをしたまでです、ホフナー商会も全力で支援させていただいております」
 兵站面はすべてホフナー商会の支援で賄っているということらしい
「殿下、ここにいるみな殿下の到着を待っておりました、ぜひ殿下のお口から檄をとばされては?」
「わかったでは準備を頼む」

 砦の中央の開けたところに1000人の人間が集まっており、熱気のため、湯気たちのぼり兵士たちは殿下の登場を今や遅しと待っている。

 私達は兵士たちのうしろにある塀の見張りの部分からそれを眺めている。

 甲冑姿の殿下が兵士たちの前に立つ
 ざわざわしていた兵士たちに緊張が走り、一気に静まり返る。
「私が正統なザナビルの王、ソルフィンである」
 やはり殿下は王の風格というものが備わっている、これはもう生まれ持ったものとしか形容できない。
 彼は10歳にして王であるのだ、こういった場面になると彼は王の威厳が現れる、普段私達と接しているときの少年のあどけなさは全くといっていいほど感じられない。

 彼があと10年たち20歳になったときにはザナビルは大きな飛躍を遂げるであろう、彼には王の器というものがある、後世の歴史家も名君として彼の事を称えるであろう、そしてこの演説は歴史に残るものになる。

「わが王、ガルシア亡きあと奸計により、世継問題が生じたこれは、私が王の後継者として亡き前王に指名されておきながら、その力を示すことができずにいた私の不徳の致すところである!」
 兵士たちは真剣なまなざしを殿下にぶつけている。
 殿下は2000の瞳を相手に怯みもせず、まっすぐに立ち話を続ける。

「その混乱に乗じて、フロイトの謀反、騎士団の寝返り…これは本当に許されることではない、わが父ガルシアの名を汚すばかりか、ザナビル王家200年の歴史に泥を塗る行為である、ここに集いし1000もの軍勢は我が王家の真なる家臣である、今こそ立ち上がり騎士団、フロイトの手から王都を取り戻そうぞ!!」
 殿下は右手を上げ、雄たけびを上げる
 その雄たけびとともに1000人の兵士たちは右手をあげ、「おおおおおおおおおおおお」と殿下の雄たけびに続いた。

 さすがだ、これで1000の兵士を一気にまとめ上げ、そして士気も一気に高まる、これが王なのだ。



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