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第2章 王位継承

第26話 百

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「はぁはぁはぁ」
 勝った…斬れた…
 メーガスを見るとピクリとも動いていない。
 あの傷だ、もう立ち上がる事はないだろう…

 殿下とフリージアさん、ケフィア様が駆け寄ってきて、殿下が声をかけてくださる。
「レクシア、あの時はどうなるかと思ったけど、勝ててよかった」
 あのとき…
 私が夢を見ていた時…
 あの夢はいったいなんだったんだ、パパリモが見せた夢、それとも私の復讐の衝動が見せた夢なのか、とにかくあの夢がなければここに立っていたのはメーガスであったはず。
 メーガスは私の目的のために犠牲になったのだ、私の復讐のための…

 そう私は復讐のために生きるのだ。
 目的のためには、どんな犠牲を払い他人の命を奪ってでもなし遂げるという覚悟を決めたのだ。

 殿下が私の顔をみて話しかけてくる。
「どうしたのレクシア、勝ったのにそんな怖い顔をして」
「いえ、ちょっと昔のことを思い出したもので」
「そういえば、吹っ飛ばされてから表情がかわったような」
「ふっとばされて目が覚めたんですよ、目がね」
「ふーん、眠かったの?」
「そうですね、私は眠っていたのかもしれません」

 司会の男も私に駆け寄ってきて
「あの処刑人を処刑したのはレクシア!!!」
 叫ぶと静まり返っていた客席からまばらな拍手が聞こえる
「おっとこの国は勝者も称えることができなのかぁ?」
 司会の男が民衆を煽る。

 大歓声が巻き起こり
「レ・ク・シ・ア!、レ・ク・シ・ア!」
 民衆は私の名前をコールし、私の勝利を称えたのであった。

 そのコールの中、王は表情を変えずそのまま闘技場を後にした。


 勝利の余韻を味わう余裕もなく、私達は城の謁見の間に連れて行かれた。
 王がオオカミの玉座に座り、右側と左側に側近が座る。

 王の左手であるルーファウスが跪いている私たちに声をかける
「表をあげろ」
 それを合図に私達は王の方を凝視する。

 王はその表情を変えずに口を開く。
「決闘裁判の結果であるが」
 私達を代表して殿下が返事をする。
「はい」
「そなたらの勝ちである、よくメーガスに勝てたものだ」
「レクシアの力です」
「そなたはいい家臣を連れているのだな」
「はい、有難うございます」
「あれほどのものを持っているものを率いておるのだ、そなたが真なるザナビルの王ということだな」

 殿下は立ち上がり、胸を張り堂々とした格好で
「私がザナビルの国王です」
 その様子はまさに国王のそれであった。

 ポルトの王はそれをみて、目を細め
「となれば、私が上から話をするというのも失礼に当たるというもの」
 王は立ち上がり、ゆっくりと玉座から離れ下に降りてくる。

 そしてソルフィン殿下の前に立ち、跪いて
「ザナビルの王よ、此度の非礼を詫び、わがポルトはザナビルの支援を全力をもって行う」
 殿下は、王の手をとり
「ポルト王よ、御支援ありがたく頂戴いたすとともに、先の非礼は水に流しザナビルとポルトの繁栄に尽力いたします」

 王は立ち上がりソルフィン殿下の手を取り
「わがポルトとザナビルは真なる友人となった」
 王がそういうと、側近たちは拍手をする。

「我が右手ガロンよ」
 玉座の右側に座る筋骨隆々の男が返事をする
「はい、わが主よ」
「ザナビル攻略における我々の兵士の数はどれほど必要か」
「騎士団長の謀反ということですので、一枚岩ではなく全軍はまとめきれていないと判断します、騎士団単独の人数となれば攻めは守る側の3倍の兵力を有するというのが定理、さすれば1500は必要かと」

「ふむ、さすれば左手ルーファウスよ」
 左側の痩せ気味の男が返事をする
「はっ」
「わが軍に1500だせる余裕はあるか?」
「全軍で3000です、そのうち1500だすとなれば…兵站面やガレオン方面にも不安があります」
「ではいくらなら出せるというだ」
「しかし、わが真の友人が困っているのに1500の兵力もだせないというのはポルトにとって汚名となりえましょうし王の名を汚すことにもなります。」
「うむ」
「ですから1500全てを貸し与えてはいかがでしょうか?」

 王が殿下の方を見る

「我々も反フロイト陣営の集結を急いでおります、ポルト側にだけ頼るわけではありません無理のない範囲での支援、100ほどで構いません」
「ほう、100でとな」
 殿下がこちらをみる。

 ――先に100でいいといったのは私だった。
 決闘裁判終了後、城に向かう道中
「殿下、おそらくポルト国王の支援は大変ありがたいことなのですが」
「うん、これで支援がもらえるね」
「1000や2000の兵を借り受けるとなると、その恩は大きくなりすぎ、ポルトの傀儡となりうる可能性があります」
「なるほど…」
「そのまま王都が占拠されるという危険性もあると思われます」
「確かに、それはまずいな…」
「相手はあのアロルカ王この決闘裁判にもなにかのたくらみがあったのかもしれません」
「でもいくらぐらいなら影響力がすくないんだろう」
「100、100もあれば」
「100でいいの?」
「屈強なポルト兵であれば100でなんとかなります」

 王が笑う。
「あははは、たった100でよいのか?」
「ええ、あくまでも我々の手でザナビルを取り返さなければ意味がない」

王の顔は笑っているが、鋭い眼光で殿下のことを見ている。
「そなた本当に10歳か?」
「はい」
「負けた、負けた、ザナビルをそのまま我が手中に収めようとルーファウスと企んでおったが、そこまで読まれておるとは、余の負けじゃ」
「いえ、これはレクシアの知恵にてございます」

すると王は私の方を見る。
「剣をもたせば無双をし、知謀にも長けるとはなんとも羨ましい逸材よ」
「私の自慢の配下です」
「ソルフィン殿の配下でなければ、即刻余の右手として働いてもらうがな」
「そのようなお言葉をいただき光栄の至りです」

王は再びソルフィン殿下の方をむいて
「わかった、それでは100兵を貸与する好きに使ってくれ」
「はい、これでザナビルは取り返したも同然でございます」



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