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大規模襲撃イベント バハムート編

第12話 アプデの前に

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 ――翌日

「よっ! デバフの王!」
 学校の廊下でタケシが会うなり声を掛けてくる。

 デバフの王に関しては無視しておこう。
「なんだよ。タケシ」
「なんだよじゃねーよ。お前のおかげで勝ったんだろ? 俺も胴上げに参加してたんだぜ」
 そう言ってタケシは笑いながらワッショイ、ワッショイっと再現をしてみせる。

「まあな」
 ちょっとかっこつけて言ってみた。

「やっぱり貢献度上位じゃなかったな」
「うん。どうしてだろ?」
 腕を組んで少し考える素振りをするタケシ。

「まあ、これは俺の考えだけど、お前が使ったデバフとしてカウントされてないんだろ。スキルだし」
「あーそっか。自分が使用したデバフとしてカウントされてなかったのか」
「そういうことだろ。そうじゃなきゃお前が1位にならなきゃおかしいだろう」

 それでヘパイスが2位になったんだからなまあそれで良かったんだろ。そうそうヘパイスのことタケシに話しておくか。

「それでヘパイスも2位になってカイネス達に1億も払ってほんとにスッキリしたわ」

「あのヘパイスが2位になったのに金を払ったのか?」
「うん。カイネスが寝マクロの動画取ってて、それでね。一応動画は消したってことにしてあるけど、バックアップ取ってるからあいつが何か嫌がらせしてきたら、運営に動画を送りつけたらいいよ」

 俺がそう言うとタケシは少し眉をひそめる。

「多分、その動画送りつけてもあいつはBANにはならねーよ」
 それ聞いて少しムッとして
「どうしてだよ! 寝マクロしてる動画だよ? 規約違反だろ?」
「動画は証拠にならねーんだよ。編集して改ざんできるし」

「……確かに……」
「寝マクロはやってるとこを現行犯で通報しないと捕まらない。もう暫くは寝マクロする必要もないからな……あったとしてもしないだろうし」
「あー確かにそうだわ……」
 残念そうにそういうとタケシが続ける。

「冷静に考えればすぐ分かることなんだけど、損して相当焦ってる証拠だよ。今、あいつは冷静な判断ができてない。FXで財産溶かしたみたいな奴になってるってことだ」

「FXで財産溶かしたことないから分かんないけど、だいぶ金はつぎ込んでるみたいだったからなぁ」
「多分全財産の半分ぐらいはつかってんじゃね?」
「だろうねぇぇ」

 こうして話を終え、別れようとした時、タケシから話しかけてくる。

「今日空いてるか?」
「うん。何の用?」
「ヘパイスをハメる罠を作る」

 学校を終え、アルターにINする。

 フレリストからタケシがログインしてるのを確認し、TELをする。
「入ってきたぞ」
「あー分かったそっちへ行く」

 数秒後タケシが転移してくる。手に虹色に輝く綺麗な石を持って。

「これでヘパイスを罠にハメる」
 そう言って手に持った石を俺に差し出す。

 まあ綺麗な石だが……

「これ?」
 俺がその石を手に持って訝しんでいるとタケシが話し出す。

「これは精霊石っていう石だ」

「これでどう罠にはめるんだよ?」
「明後日、アルターのアプデがあるだろ?」
「うん」

 バハムートを倒したあと急に1.2へのアップデートがアナウンスされた。まるでバハムートが倒されるまで待っていたというタイミングで。

「アプデでこの石を使った新装備が作れるようになるってヘパイスに嘘の情報を流して、俺達が買い込んでたこの石をヘパイスに買い取らせる」
「え? そんなの上手くいくの?」

「ああ、この石、自分で掘らないと取れないのに何の価値もない。他のプレイヤー達の間ではアプデで価値がつくかもと思ってる連中も少なからずいる」

「ふーん。でもそれはヘパイスも知ってるんでしょ?」
「うん。生産職やってて、がめつい奴だから情報には敏感だしな」
「だったら無理なんじゃね?」

「ふふふ。大損して取り返そうと躍起になってるからなヘパイスは、少しでも儲かる情報なら飛びつくだろう。それに装備は初動で作らないと儲けは少ない」

「まあ……確かに……」
「お前まだヘパイスに貰った1500万持ってるんだろ?」
「うん。使い道がなくてね」
「その1500万を使って、精霊石を買い込め、あいつから残りの半分せしめようぜ」

 俺はタケシに言われた通りに、1500万をタケシに渡す。タケシが精霊石9000個を買い込む。

 そしてタケシに言われた通りにヘパイスにメッセージを出す。

『ごめんね。ヘパイス。俺のせいで1位に成れなくて……その代わりにGMから聞いた儲け情報を教えようかと思って……精霊石がアプデ後の新しい装備で必要になるみたい』

 そのメッセージをヘパイスに送った瞬間、すぐにTELがある。

「おい! エイジ! 嘘ばっか教えてんじゃねーよ! そんな儲かる情報、俺に教えるんてありえねーし! なんでお前がGMと知り合いなんだ!! ばーか!!」

「ばかでもなんでもいいけど……俺が闘技場でGMに斬りかかったの知ってるだろ? それでその後にそのGMから連絡がきて、君、面白いねーって話になって仲良くなったんだよ……信じてくれないなら別にいいけど……。ちょっと俺も悪いなと思ってね……それに、この情報って漏れてるみたいで買い込んでる人がいて、俺はもう買えなくてさ……それで大損したヘパイスに教えてあげようと思っただけだよ」

 ヘパイスは何も言わず、そのままプツンとTELが終了する。

「これで良かったのか?」
 そう聞くとタケシはうんと頷く。

「まあ、見てなってすぐにヘパイスから俺に連絡が来るから」
 その数分後タケシは俺に親指を立ててみせる。

 そして話始める。

「精霊石? いくつ欲しいの? 全部!?……ここだけの話……これでアプデ後の新装備に使うって話があってね……それで俺は全財産をはたいて買ったってわけなんだけど」

 さすがヘパイスすぐに石を持ってるタケシに連絡してきやがった。大量購入したものをすぐに調べたんだろうな……

「1億? そんな値段じゃあ売れない。6億だ6億!9000個6億だ。アプデ後は倍になるぜ」
 そう啖呵を切るタケシ。

 みていると面白くなってくる。

「そんな金はない? 秒速で3000万稼げるんならすぐだろ? すぐ……手持ちがない? バハムートで使って今2億しか持ってない? 天下のヘパイス様がそれっぽっちしかもってないことはないだろ? 分かった4億でどうだ?」

 え? ほんとに買うつもりなの? ヘパイス……

「……しょうがねぇなぁ3億5000万。これ以上はまけられん。俺も儲けたいからな……え3億?……ったくしょうがねぇなぁ3億で手を打つわ。毎度あり!!」

「え! 3億で売れたの!? あの石……」
「こんなに上手く行くとは思ってなかった……あいつ相当焦ってバカになってるわ……」
「ここまでバカだとは思わなかったよ……」

 タケシが空中を操作しなが俺に話しかけてくる。

「一応取り分はお前が2億、俺が1億でいいか?」
 俺が頷くとハリー・ボルダーからメッセージとともに2億が添付されている。

「あとヘパイス、ブロックリストにいれとけよ? アプデ後あいつから鬼電がかかってくるぞ」
 そう言ってたタケシが笑う。

 言われた通りにヘパイスをブロックリストにぶち込んでやった。

 こうして2日が経ち運命のアップデートを迎えたのであった……


 大規模襲撃イベント バハムート編 完

 スキルを使って生き残れバトロワ編に続く。

 
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