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第2章 銅ランク

第14話 ギルド本部

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 ――王都、冒険者ギルド本部の一角、副ギルド長執務室。

 それ程の広さがある部屋ではないが立派な机が置かれ、本棚には製本された資料なとが詰まっている。

 応接室のようにソファーに机も置かれている。

 コール副ギルド長は執務室の机に向かいながら、手元にある資料に目を落とす。それはベリルの街のギルドから上がってきた双頭のオーク討伐に関する報告書だ。

「デーモンの目に涙は全員死亡によって解散……ね」
「残念ですね」
 報告書を持参した職員がそれに答える。

「残念……まあこれは仕方ないことだと思う。彼らは銅になる実力がないのになってしまったんだからね……」
「はい……」

「しかし今回の件、責任を負うべきは、実力を見極めることもできず、銅ランクに彼らを推挙した、ベリルの街のギルドとそれを認めたギルド長!! 私は懐疑的だったにも関わらず、実績が文句なしだと銅ランクに認めたのは誰だ? ギルド長だろ!! 責められるべきはギルド長とベリルの街のギルド」

コールは感情的になり捲し立てた。

職員もたじろいで一言返事をする。
「ですね….…」

 コールはなおも不機嫌に話しをする。
「なのにこれはどういうことだ!」

 バンッと机の上に報告書を投げつける。

 職員はそれに目をやると『アンコロールを銅ランクに推薦いたします。よろしくお願いします。ベリルの街、冒険者ギルド、支配人フロド・タナカス』と記されている。

 コールの怒りは収まらないようでさらに捲し立てる。
「厚顔無恥も甚だしい!! 」

 ざっと資料をみた職員が問い掛ける。

「しかし副ギルド長、彼らの実績はゴブリンキング討伐に双頭のオーク討伐と銅ランクに相応しいものでは?」

「君はいつから実績成果主義になったのかね? 彼らのこのステータスを見てみろ! 」

 職員は慌てて、ステータスを確認する。

「……一番高くてCランクですか……確かにこれでゴブリンキングと双頭のオークを撃ち破るとは……とても信じられません……」

「だろ? 少なくとも双頭のオークに関しては前任者が少なからずダメージを与えていただろうしな……それで漁夫の利を得たんだろう。それにゴブリンキングに関しても何かしら理由が必ずあるはず」

「しかし……冒険者達が納得しますかね? それにギルド長はどうします?」

「ああ……ギルド長の実績成果主義は困ったものだよ。私のステータスの主義の方が理に適っているというのにな」

「はい。副ギルド長のおっしゃる通りです……それでは昇格は却下と……」

 コールは目を細め何かを思案しているように見える。

「いや……彼らが適切な能力があるのか審査官を送ろう……必ずメッキが剥がれるはず、上手くいけばギルド長を追い落とすことができるかもしれん」

「なるほど、実績成果において銅ランク相当の彼らに、その実力がないとすれば、デーモンの目に涙の件も含めてギルド長にとっては痛手になりますね」

「ああ……そういうことだな」

 コールはその推薦状にサインをする。条件付き賛成。本部からの審査官の審査の後、適正があれば昇格可と言う一文を加える。

「これでギルド長に回してくれ」
「はい」

 職員はその推薦状を受け取ると副ギルド長の部屋を後にした。



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