112 / 120
第6章 剣聖剥奪
第112話 王都陥落
しおりを挟む
――ラグウェルがサウストンを発つ5日前
「おおお!!」
城壁の上に立つ兵士達から歓声が上がる。
王都の城壁に迫りくる木人形達。それに向けて投石機から放たれた巨石が弧を描いて着地しそこにいた木人形達は粉々になった。それを見て兵士達から歓声が上がったのだ。
しかしその投石機の投石を掻い潜り、木人形たちは街を囲む様に作られた円形の城壁に殺到する。
「油だ!油を使え!」
城壁にいる兵士達はその指示に従って城壁に油を垂らす。次々と城壁から転落する木人形。
戦況は膠着状態に陥る。
城壁近くの指揮所に座るセネバ王子に戦況を伝える騎士。
「セネバ王子! 戦況は膠着状態です。敵軍も攻めあぐねているようです」
我軍が上手く立ち回っているというのにセネバ王子の顔は浮かない顔をしている。
「まあ八百年間、戦争をしてない国だからね。攻城の技術は劣るだろうね」
ポツリとそう呟く。
ドーーンとドーンと数回、爆発する音が響く。
「な、なんだ今のは」
セネバ王子の側で兵を指揮している騎士がうろたえる。
そこに青い顔をした一人兵士が慌てて走ってきて、
「報告します! 敵は火球を城門にぶつけています。このままでは城門が持ちません」
「まさか……」
セネバ王子の横にいる騎士は青い顔をしている。
セネバ王子はその報告聞き顔色一つ変えずに呟く。
「そらそうだよな……連中は魔法が使えるんだ。俺達のような攻城戦をするわけがない」
騎士はその声を上ずらせながら
「……王子どうしましょう……城門が突破されれば我々は……」
「そうだね……白旗を上げるしか無いな」
「しかし……王子それだけは……降伏だけは……騎士の名が廃ります!それに降伏したことが国王陛下のお耳に入ればセネバ王子の身も……」
セネバ王子はハァとため息を一つつくと騎士を見ながらゆっくりと話し出す。
「君は城門が破られても戦うというのか? 王都50万の民を犠牲にしても戦うというのか?それよりも君は騎士の誇りが大事というのか? 国王か……あんなもんはただの飾りだよ。国民無くして国王無しだ。私の身などどうなろうが構わない」
その言葉の一つ一つに気圧されたのか騎士はうつむいて、はいと返事をすることしかできない。
「よし。では白旗を掲げ、門を開けよ」
「承知しました……」
そして城壁に白旗が掲げられ、固く閉ざされた城門は3日ぶりに開放されることとなった。
――数時間後
王都宮殿の大理石の床をカツカツと音を立てて歩くクロエ・ノーマンとその部下3名。絢爛豪華な部屋に通され、見事な彫刻が施された椅子に座る。
そこにセネバ王子が現れる。
「十王国代表のセネバです」
そういって右手を差し出す。
「賢明な判断でしたな。私はペンタグラム軍事顧問のクロエ・ノーマン。そして私の部下です」
挨拶とともに握手をかわすとセネバもクロエも椅子に腰掛ける。
そしてクロエはその眼光鋭い目でセネバ王子を値踏みするような目で見ながら口を開く。
「早速だが、我々の要求は唯一つ。ここゲルニカを明け渡すこと。何人たりともここに住まうことは許されない。住民全員の移動だ」
セネバは少し考える素振りを見せる。
「ええ。その覚悟はできています。ただ時間が……50万もの民をひとり残らず移動となると2ヶ月……いや3ヶ月はかかるかもしれません」
「ふむ……しかし3ヶ月は長すぎる。1ヶ月だ」
「……1ヶ月ですか……我々に選択権はありませんか……」
クロエは黙って頷く。
セネバ王子は疑問に思う。なぜ王都にこれほどこだわり、そして住民たちを排除しようとするのか……通常の戦争であれば王都を占拠したのちに住民たちを労働力として使う。奴隷として使役するのが一般的だ。
その住民を排斥する、まあ連中にはあの木人形があるから、労働力は必要としていないからと言われればそれで終わりだが……
しかしそれならば戦争をする必要がない。それは開戦をした時から疑問だった。あの国は魔法がつかえることで内部で全て完結している。それを証拠に800年もの間、戦争をしていない……
恐らく……ペンタグラムの内部で何かが起き、ペンタグラムから王都に遷都せざる負えなくなったというところか……なぜ王都なのか?それはわからないが……
とりあえず1ヶ月の猶予はできた……後はラグウェルに託すしかない……
◆◇◆
ペンタグラムの移動要塞に戻ったクロエは水晶玉の向こうにいる、霞んで映るアビゲイルに報告をする。
「1ヶ月でゲルニカを明け渡すことに同意した……が気になることがある」
「気になること?」
クロエは淡々とアビゲイルに報告をする。
「あまりにあっさりと降伏したということ、それに時間稼ぎをしている節がある」
「時間稼ぎか……」
「国王の姿が見えない。恐らく軍を再編し再び攻撃を加えてくる可能性が高いかもな」
「愚かだな……魔法が使えぬ者は」
「今のうちに全て焼き尽くしてしまおうか」
「いやそれは今はやめておけ。降伏した相手を虐殺するなど、スピカ様の耳に入れば何かと面倒なことになるかもしれん」
「なんだよ。手綱握ってんじゃねーのかよ」
「念には念を入れておかねばな」
「はい、はい分かったよ」
クロエは面白く無さげに返事をすると通信を切る。
「っち降伏なんか認めず焼き払っちまえばいいのになぁあんな連中がどうなろうが関係ねーしな。クソっ1カ月何もすることがねーじゃねーか」
苦虫を噛み潰したような顔をしたクロエはそう呟いた。
「おおお!!」
城壁の上に立つ兵士達から歓声が上がる。
王都の城壁に迫りくる木人形達。それに向けて投石機から放たれた巨石が弧を描いて着地しそこにいた木人形達は粉々になった。それを見て兵士達から歓声が上がったのだ。
しかしその投石機の投石を掻い潜り、木人形たちは街を囲む様に作られた円形の城壁に殺到する。
「油だ!油を使え!」
城壁にいる兵士達はその指示に従って城壁に油を垂らす。次々と城壁から転落する木人形。
戦況は膠着状態に陥る。
城壁近くの指揮所に座るセネバ王子に戦況を伝える騎士。
「セネバ王子! 戦況は膠着状態です。敵軍も攻めあぐねているようです」
我軍が上手く立ち回っているというのにセネバ王子の顔は浮かない顔をしている。
「まあ八百年間、戦争をしてない国だからね。攻城の技術は劣るだろうね」
ポツリとそう呟く。
ドーーンとドーンと数回、爆発する音が響く。
「な、なんだ今のは」
セネバ王子の側で兵を指揮している騎士がうろたえる。
そこに青い顔をした一人兵士が慌てて走ってきて、
「報告します! 敵は火球を城門にぶつけています。このままでは城門が持ちません」
「まさか……」
セネバ王子の横にいる騎士は青い顔をしている。
セネバ王子はその報告聞き顔色一つ変えずに呟く。
「そらそうだよな……連中は魔法が使えるんだ。俺達のような攻城戦をするわけがない」
騎士はその声を上ずらせながら
「……王子どうしましょう……城門が突破されれば我々は……」
「そうだね……白旗を上げるしか無いな」
「しかし……王子それだけは……降伏だけは……騎士の名が廃ります!それに降伏したことが国王陛下のお耳に入ればセネバ王子の身も……」
セネバ王子はハァとため息を一つつくと騎士を見ながらゆっくりと話し出す。
「君は城門が破られても戦うというのか? 王都50万の民を犠牲にしても戦うというのか?それよりも君は騎士の誇りが大事というのか? 国王か……あんなもんはただの飾りだよ。国民無くして国王無しだ。私の身などどうなろうが構わない」
その言葉の一つ一つに気圧されたのか騎士はうつむいて、はいと返事をすることしかできない。
「よし。では白旗を掲げ、門を開けよ」
「承知しました……」
そして城壁に白旗が掲げられ、固く閉ざされた城門は3日ぶりに開放されることとなった。
――数時間後
王都宮殿の大理石の床をカツカツと音を立てて歩くクロエ・ノーマンとその部下3名。絢爛豪華な部屋に通され、見事な彫刻が施された椅子に座る。
そこにセネバ王子が現れる。
「十王国代表のセネバです」
そういって右手を差し出す。
「賢明な判断でしたな。私はペンタグラム軍事顧問のクロエ・ノーマン。そして私の部下です」
挨拶とともに握手をかわすとセネバもクロエも椅子に腰掛ける。
そしてクロエはその眼光鋭い目でセネバ王子を値踏みするような目で見ながら口を開く。
「早速だが、我々の要求は唯一つ。ここゲルニカを明け渡すこと。何人たりともここに住まうことは許されない。住民全員の移動だ」
セネバは少し考える素振りを見せる。
「ええ。その覚悟はできています。ただ時間が……50万もの民をひとり残らず移動となると2ヶ月……いや3ヶ月はかかるかもしれません」
「ふむ……しかし3ヶ月は長すぎる。1ヶ月だ」
「……1ヶ月ですか……我々に選択権はありませんか……」
クロエは黙って頷く。
セネバ王子は疑問に思う。なぜ王都にこれほどこだわり、そして住民たちを排除しようとするのか……通常の戦争であれば王都を占拠したのちに住民たちを労働力として使う。奴隷として使役するのが一般的だ。
その住民を排斥する、まあ連中にはあの木人形があるから、労働力は必要としていないからと言われればそれで終わりだが……
しかしそれならば戦争をする必要がない。それは開戦をした時から疑問だった。あの国は魔法がつかえることで内部で全て完結している。それを証拠に800年もの間、戦争をしていない……
恐らく……ペンタグラムの内部で何かが起き、ペンタグラムから王都に遷都せざる負えなくなったというところか……なぜ王都なのか?それはわからないが……
とりあえず1ヶ月の猶予はできた……後はラグウェルに託すしかない……
◆◇◆
ペンタグラムの移動要塞に戻ったクロエは水晶玉の向こうにいる、霞んで映るアビゲイルに報告をする。
「1ヶ月でゲルニカを明け渡すことに同意した……が気になることがある」
「気になること?」
クロエは淡々とアビゲイルに報告をする。
「あまりにあっさりと降伏したということ、それに時間稼ぎをしている節がある」
「時間稼ぎか……」
「国王の姿が見えない。恐らく軍を再編し再び攻撃を加えてくる可能性が高いかもな」
「愚かだな……魔法が使えぬ者は」
「今のうちに全て焼き尽くしてしまおうか」
「いやそれは今はやめておけ。降伏した相手を虐殺するなど、スピカ様の耳に入れば何かと面倒なことになるかもしれん」
「なんだよ。手綱握ってんじゃねーのかよ」
「念には念を入れておかねばな」
「はい、はい分かったよ」
クロエは面白く無さげに返事をすると通信を切る。
「っち降伏なんか認めず焼き払っちまえばいいのになぁあんな連中がどうなろうが関係ねーしな。クソっ1カ月何もすることがねーじゃねーか」
苦虫を噛み潰したような顔をしたクロエはそう呟いた。
0
お気に入りに追加
688
あなたにおすすめの小説
ご隠居錬金術師のスウィーツタイム
藤島紫
ファンタジー
かつて、世界の半分を亡ぼす兵器を生み出した、天才錬金術師。
彼は契約によって王族の森で静かな隠居生活を送っている。
死者すらよみがえらせる、絶滅したはずの竜とともに。
2021/06/14
続きを執筆中です。
冒頭も少しばかり変わります。
もうしばらくお待ちくださいませ。
師匠はどんな輩に言い寄られても愛弟子しか目に入らない!
やなぎ怜
恋愛
半隠遁生活を送る天才錬金術師ヴィルトは純情と不純の狭間にいた。ひょんなことから拾った、今は愛弟子のチルルに対する愛の種類の狭間にだ。だがヴィルトが頭を悩ませているあいだにも、トラブルは彼のもとに舞い込んでくる。なにせヴィルトは「愛欲の神」の加護を持ち、だれかれ構わず魅了する能力を持っているからだ。
※他投稿サイトにも掲載。
アルケミスト・スタートオーバー ~誰にも愛されず孤独に死んだ天才錬金術師は幼女に転生して人生をやりなおす~
エルトリア
ファンタジー
孤児からストリートチルドレンとなり、その後も養父に殺害されかけたりと不幸な人生を歩んでいた天才錬金術師グラス=ディメリア。
若くして病魔に蝕まれ、死に抗おうと最後の研究を進める彼は、禁忌に触れたとして女神の代行者――神人から処刑を言い渡される。
抗うことさえ出来ずに断罪されたグラスだったが、女神アウローラから生前の錬金術による功績を讃えられ『転生』の機会を与えられた。
本来であれば全ての記憶を抹消し、新たな生命として生まれ変わるはずのグラスは、別の女神フォルトナの独断により、記憶を保有したまま転生させられる。
グラスが転生したのは、彼の死から三百年後。
赤ちゃん(♀)として生を受けたグラスは、両親によってリーフと名付けられ、新たな人生を歩むことになった。
これは幸福が何かを知らない孤独な錬金術師が、愛を知り、自らの手で幸福を掴むまでの物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
後輩が惚れてる⁉それは惚れ薬のせい……違う⁉ 〜惚れ薬で発情した聖獣たちのせいでもてはやされてるけど俺は女の子にモテたいだけなんだ!〜
すかいふぁーむ
ファンタジー
作り上げた惚れ薬で理想の美少女とエッチなことがしたい天才錬金術師、セレト。
だが惚れ薬を人間の女の子に飲ませられず気づけば聖獣使いとしてもてはやされていた!
そんな様子を後輩は頬を染めて眺める。
「お前まさか、あれを飲んだのか⁉」
「えっ⁉」
天才錬金術師と後輩のラブコメとファンタジー。
意味のないスピンオフな話
韋虹姫 響華
キャラ文芸
意味が分かったとしても意味のない話────。
噂観測課極地第2課、工作偵察担当 燈火。
彼女が挑む数々の怪異──、怪奇現象──、情報操作──、その素性を知る者はいない。
これは、そんな彼女の身に起きた奇跡と冒険の物語り...ではない!?
燈火と旦那の家小路を中心に繰り広げられる、非日常的な日常を描いた物語なのである。
・メインストーリーな話
突如現れた、不死身の集団アンディレフリード。
尋常ではない再生力を持ちながら、怪異の撲滅を掲げる存在として造られた彼らが、噂観測課と人怪調和監査局に牙を剥く。
その目的とは一体────。
・ハズレな話
メインストーリーとは関係のない。
燈火を中心に描いた、日常系(?)ほのぼのなお話。
・世にも無意味な物語
サングラスをかけた《トモシビ》さんがストーリーテラーを勤める、大人気番組!?読めば読む程、その意味のなさに引き込まれていくストーリーをお楽しみください。
・クロスオーバーな話
韋虹姫 響華ワールドが崩壊してしまったのか、
他作品のキャラクターが現れてしまうワームホールの怪異が出現!?
何やら、あの人やあのキャラのそっくりさんまで居るみたいです。
ワームホールを開けた張本人は、自称天才錬金術師を名乗り妙な言葉遣いで話すAI搭載アシストアンドロイドを引き連れて現れた少女。彼女の目的は一体────。
※表紙イラストは、依頼して作成いただいた画像を使用しております。
※本作は同列で連載中作品「意味が分かったとしても意味のない話」のスピンオフ作品に当たるため、一部本編の内容を含むものがございます。
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
惚れ薬(偽物)を売る錬金術師の少女〜路地裏で醜男達に高額で売っていると王子に薬の効果を試したいと無理矢理飲まされる〜
もう書かないって言ったよね?
恋愛
17歳のティエラ・ホーエンハイムは一人旅の途中の大きな街の路地裏で、いつものように旅費を稼いでいた。
天才錬金術師を名乗り、偽物の惚れ薬(安酒)をモテない醜男達に日本円で百万円の価値がある、百万ギルで販売する。
たった一本の惚れ薬欲しさに醜男達は、我先にと知り合いや金貸しにお金を借りに路地裏から走り出していった。
ティエラがやる事はあとは戻ってくるのを待つだけだ。
だけど、醜男達が戻ってくる前に黒いフード付きコートで顔を隠した男が路地裏にやって来た。
汚れた靴やコートでティエラは金持ちではないと判断したが、男は惚れ薬の説明を聞くと大金貨を一枚渡してきた。大金貨は一枚で百万ギルの価値がある。
ティエラは大金貨を喜んで受け取ると、急いで街から逃げようとした。
だけど、その前にフードの男に惚れ薬を無理矢理に飲まされてしまった。
当然、ただの酒に惚れ薬の効果はない。ティエラは覚悟を決めると惚れている演技を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる