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第4章 21代目の剣聖
第84話 決心
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あれから3日が経った。俺はレグルスへの返答を戸惑っている。
任務を終え騎士団本部から出る。
「ラグウェル!」
背後から声を掛けられ振り返る。
「リリカさん」
そこには鴉の隊長であるリリカの姿があった。
「久しぶりに王都に来たからお前の顔でも見ようかと思ってな」
「久しぶりに会えて嬉しいです」
「今大丈夫か?」
「はい」
近況などを話しながら二人で歩く。
小高い丘になった広場に着く。陽は大分傾き西の空を赤くしている。
「ちょっといいか?」
リリカは立ち止まり改まったような雰囲気で口を開いた。
「聞いたよ。レグ……いや剣聖から」
「……はい」
「どうするつもりだ? 受けるのか?」
「それを今悩んでまして……俺の師匠は俺が剣聖になるのは反対というか……この国のために尽くすことができるのかって……陰の部分も含めてって」
「なるほどね、陰か……確かにな。貴族や王族に理不尽に振り回され消費されるそれが剣聖であり騎士だからな」
「ええ。成り行きで騎士になったお前にそこまでの覚悟はあるのかって」
「あははは、よく弟子のことを分かってる師匠じゃないか」
リリカはそう言って笑うと広場から街を見渡しながらこういった。
「この国はどうしようもなく腐ってるところもある。しかし私達が仲間達の犠牲を払い祖人達から守ったのはこの景色やここにいる人々の生活や笑顔なんだ。王や貴族の生活を守るために戦ったわけじゃない」
「……守るため……」
「そう守るためだ……ふふふ。騎士の誓いを立てた私達が言っていいセリフじゃないがな」
そう言って微笑えみ話を続ける。
「剣聖はその時代に相応しい者がなるべきだと私は考えている。お前はこの国のために死力を尽くしたんだその資格はあるし、散っていった仲間やここで暮らす人の為に剣聖になればいい」
「散っていった仲間やここで暮らす人の為……」
「そうだ」
リリカはすっと踵を返し俺に背中を向けて歩き始める。
「ありがとうございます!」
俺がそう云うと背中越しに右手を上げ去っていった。
そうか……王や貴族の為じゃなく散っていった仲間やここで暮らす人の為……リリカさんが言ったのはアルファルドとは反対の意味。つまり陽の部分を信じるべきだということ……
決めた。もう一度アルファルドに会おう。もう一度師匠に合って話をしよう!
俺はその日のうちにアルファルドの宿泊している場所に向かう。アルファルドの宿泊場所についたころにはすっかり陽は落ちあたりは薄暗くなっている。
「おっ来たな。随分と清々しい顔になったじゃないか」
アルファルドは俺が来ることを予期していたのか、俺が扉を開けて顔をみせるとそう言った。
少しの間を置き、俺は心を決めて話し出す。
「ちょっといいか?」
「ああ、立ち話もなんだ入れ」
狭い部屋だがテーブルと椅子はあり、そこに向き合って座る。
「飲むか?」
アルファルドは酒の入った瓶を持ってきて俺に勧める。俺は軽く首を振りそれを断るとすっ息を吸って口を開く。
「アルファルドあんたは19代剣聖になり、国に裏切られ弟子を亡くし傷ついて国を捨てた」
アルファルドは酒の入ったコップに口をつけながら言った。
「そうだな……この国は腐ってるどうしようもなくな……」
「俺もそんな思いをしたこともあるし、あんたが弟子を思う気持ちもわかる。あんたは全てを捨て世界の果てをさまよってたのはその弟子のため」
「ああ……」
「でも、あんたも心どこかでこの国が好きなところもあったんだろ? だから俺を弟子の俺をこの国に導いた」
「それは……」
「俺も……俺もこの国が好きだよ。どうしようもなく腐ってるところもある。そんな部分は俺も体感してきた……でも、俺はこの国を守る為に戦った。ここで暮らす人達の生活を守る為に……そして傷つき倒れた仲間もいる。そんな人達の為に俺は胸を張って剣聖になりたいと思う!! 」
「それがお前の答えか?」
「ああ!」
アルファルドは一瞬だけ寂しそうな表情をみせると真っ直ぐに俺の目を見つめながら口を開く。
「いい顔をしてるじゃないかラグウェル。そんな顔を見せられて俺が止める理由はないな。分かったよお前とレグルスとの戦い立ち会ってやる」
「ありがとう!師匠」
俺がそう言うと顔を伏せ頭を掻きながら照れくさそうに言う。
「なんだよ。改まって急に師匠とか言うな!」
「だって師匠は師匠だろ? 俺のためにわざわざ世界の果てからやってきて俺のことを思って剣聖になるのを止めてくれた最高の師匠だよ」
俺がそう言うとアルファルドは椅子から立ち上がるとぐいっと酒を口に含み背中越しに
「師匠の言うことを全く聞かないクソ弟子だけどな」
ボソッと寂しげにそういった。
任務を終え騎士団本部から出る。
「ラグウェル!」
背後から声を掛けられ振り返る。
「リリカさん」
そこには鴉の隊長であるリリカの姿があった。
「久しぶりに王都に来たからお前の顔でも見ようかと思ってな」
「久しぶりに会えて嬉しいです」
「今大丈夫か?」
「はい」
近況などを話しながら二人で歩く。
小高い丘になった広場に着く。陽は大分傾き西の空を赤くしている。
「ちょっといいか?」
リリカは立ち止まり改まったような雰囲気で口を開いた。
「聞いたよ。レグ……いや剣聖から」
「……はい」
「どうするつもりだ? 受けるのか?」
「それを今悩んでまして……俺の師匠は俺が剣聖になるのは反対というか……この国のために尽くすことができるのかって……陰の部分も含めてって」
「なるほどね、陰か……確かにな。貴族や王族に理不尽に振り回され消費されるそれが剣聖であり騎士だからな」
「ええ。成り行きで騎士になったお前にそこまでの覚悟はあるのかって」
「あははは、よく弟子のことを分かってる師匠じゃないか」
リリカはそう言って笑うと広場から街を見渡しながらこういった。
「この国はどうしようもなく腐ってるところもある。しかし私達が仲間達の犠牲を払い祖人達から守ったのはこの景色やここにいる人々の生活や笑顔なんだ。王や貴族の生活を守るために戦ったわけじゃない」
「……守るため……」
「そう守るためだ……ふふふ。騎士の誓いを立てた私達が言っていいセリフじゃないがな」
そう言って微笑えみ話を続ける。
「剣聖はその時代に相応しい者がなるべきだと私は考えている。お前はこの国のために死力を尽くしたんだその資格はあるし、散っていった仲間やここで暮らす人の為に剣聖になればいい」
「散っていった仲間やここで暮らす人の為……」
「そうだ」
リリカはすっと踵を返し俺に背中を向けて歩き始める。
「ありがとうございます!」
俺がそう云うと背中越しに右手を上げ去っていった。
そうか……王や貴族の為じゃなく散っていった仲間やここで暮らす人の為……リリカさんが言ったのはアルファルドとは反対の意味。つまり陽の部分を信じるべきだということ……
決めた。もう一度アルファルドに会おう。もう一度師匠に合って話をしよう!
俺はその日のうちにアルファルドの宿泊している場所に向かう。アルファルドの宿泊場所についたころにはすっかり陽は落ちあたりは薄暗くなっている。
「おっ来たな。随分と清々しい顔になったじゃないか」
アルファルドは俺が来ることを予期していたのか、俺が扉を開けて顔をみせるとそう言った。
少しの間を置き、俺は心を決めて話し出す。
「ちょっといいか?」
「ああ、立ち話もなんだ入れ」
狭い部屋だがテーブルと椅子はあり、そこに向き合って座る。
「飲むか?」
アルファルドは酒の入った瓶を持ってきて俺に勧める。俺は軽く首を振りそれを断るとすっ息を吸って口を開く。
「アルファルドあんたは19代剣聖になり、国に裏切られ弟子を亡くし傷ついて国を捨てた」
アルファルドは酒の入ったコップに口をつけながら言った。
「そうだな……この国は腐ってるどうしようもなくな……」
「俺もそんな思いをしたこともあるし、あんたが弟子を思う気持ちもわかる。あんたは全てを捨て世界の果てをさまよってたのはその弟子のため」
「ああ……」
「でも、あんたも心どこかでこの国が好きなところもあったんだろ? だから俺を弟子の俺をこの国に導いた」
「それは……」
「俺も……俺もこの国が好きだよ。どうしようもなく腐ってるところもある。そんな部分は俺も体感してきた……でも、俺はこの国を守る為に戦った。ここで暮らす人達の生活を守る為に……そして傷つき倒れた仲間もいる。そんな人達の為に俺は胸を張って剣聖になりたいと思う!! 」
「それがお前の答えか?」
「ああ!」
アルファルドは一瞬だけ寂しそうな表情をみせると真っ直ぐに俺の目を見つめながら口を開く。
「いい顔をしてるじゃないかラグウェル。そんな顔を見せられて俺が止める理由はないな。分かったよお前とレグルスとの戦い立ち会ってやる」
「ありがとう!師匠」
俺がそう言うと顔を伏せ頭を掻きながら照れくさそうに言う。
「なんだよ。改まって急に師匠とか言うな!」
「だって師匠は師匠だろ? 俺のためにわざわざ世界の果てからやってきて俺のことを思って剣聖になるのを止めてくれた最高の師匠だよ」
俺がそう言うとアルファルドは椅子から立ち上がるとぐいっと酒を口に含み背中越しに
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