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第2章 騎士学校

第26話 ありがとう

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 扉を開けると中にいる男達が一斉に俺のことを見る。
「いち、に、さん、し、こりゃ百人ぐらいいるのかね。よくこんなに集めたもんだ。ありゃあそこにいるのはスタンツとマーフじゃないかなにやってんのこんなとこで」
 俺がそういうとスタンツは声を荒げる

「貴様はなんでこんなところにいるんだ!!」
「女の子が連れて行かれてと聞いてね。そりゃ大変だと探してたわけ。まさか女の子一人連れて行くのにこんだけの人数集めてるとは思わなかったけど」

 マーフが俺の姿をみて叫ぶ。
「ラグウェル逃げて!」

 俺はマーフの方をみて余裕な表情をしてみせる。
「お前をおいて逃げるわけにもいかないでしょ」
「このバカ!かっこつけてないで自分のことを考えなさいよ!!」
「もう逃してくれそうにもないけどな」
 男たちが俺を囲む。手には武器を持ち今にも襲いかかってきそうな勢いである。スタンツは余裕のある表情で俺のことを見ており
「お前の強さは聞いたしかし、いくらお前でもこの人数を相手に戦えるはずがない。俺の下僕になるようなら見逃してやる」

 俺は屈伸をし腕を伸ばしたりしながら話す。
「お前の下僕になるのだけは嫌だなぁ。まあこの程度の人数だったらまあ大丈夫でしょ」

 スタンツは苦虫を潰したような顔で
「殺せ!」
 一言そう発した。発した瞬間、斧を振りかぶり一人の男が斬りかかってくる。

 その男のみぞおちを木の棒突く。その男は胃液を吐きながら倒れる。
 それを合図に囲んでいた男たちが一斉に襲いかかってくる。最低限度の動きで攻撃をかわし敵の急所を確実突く。
 俺は囲まれている輪の中心で次々に相手をのして行く。しかし一人の男に背後を取られ羽交い締めにされる。
 羽交い締めにした男が叫ぶ。
「今だ!斬れ!!」

 別の男が斬りかかってくる。
「うりゃああ」
 俺は男を背負い投げをするような感じで前かがみになる。男はそのまま斬られ手を離す。
「ほらほら俺は全然余裕だぜぇ」
 俺は左手を前に出し手首をクイクイと曲げスタンツや男達を挑発する。

 スタンツの表情に若干の焦りが見られる。それもそのはずさっきの一瞬で10人は倒したからだ。焦ったスタンツはマーフを羽交い締めにしその頬にナイフを当て俺に向けて叫ぶ。
「おい!こいつがどうなってもいいのか?俺は本気だぞ」

 マーフはそんなことも気にせず口を開く。
「私のことは気にするな、存分に戦え」
「黙れ!このクソアマ!!」
 そういってスタンツはマーフの顔を殴る。

 俺は動きを止め、木の棒を床に放り投げる。

「気にしないわけにはいかないよな。お前を助けるためにここに来たんだし」
 そして両手を挙げ、戦う意思がないことを示す。

 ドフッとい音ともに後頭部に衝撃を感じ俺はその場で倒れ込む。男の一人が俺の後頭部を思いっきり殴ったのだ。
「このバカ!!」
 マーフの叫び声がだけが俺の耳に入った。

 俺が意識を失っていた間、周囲の男達から殴り蹴られていたのであろうか、口の中は血の味がし、まぶたが腫れているようで前が目を開けているのだが前が見えない。

 だれかに髪を引っ張られ持ち上げられている感じがする。
 スタンツの声が聞こえる。
「いくらお前が強くても無抵抗にボコボコにされるとこんな風になるんだなぁ愉快愉快」
「あああお前スタンツかクソみたいな声がすると思ったぜ」
「さあ、いつまでその強がりがもつかな」

 ドフっドカッという音がし
 このクソがという男の声が聞こえた。
「マーフ!!」
 スタンツが叫ぶ。

 俺はその瞬間察した。スタンツと変わってマーフを抑えていた男から逃げ出すことに成功したのだろうとそして俺は全身に力を入れ体が動くか確認をする。

 右手問題ない、左手問題ない、右足左足動く!

 スタンツや周囲の男はマーフに気を取られているようで俺の動きに気づいていない様子である。
 俺は全身の力を右の拳にこめ、スタンツの顔を殴る。

 ゴーン!!

 確実に捉えた手応えがあった。
 俺が全力を込めて殴ったのだ、おそらく数メートルは吹き飛んでいるはず。

「これを使って!」

 マーフの声とともにヒュンヒュンと空中をクルクルと回って飛んでくる棒状のような物の音がする。俺は右手を挙げそれを受け取る。

 両目は今は使い物にならない。そうなれば、今は見ることを諦め音で判断をする!
 俺は目を閉じ周囲の音に耳をすます。

 ドタドタドタドタと足音や敵の息遣いが聞こえる。
「おおおおおお」
 足音が止まり斬りかかって来たのだろう。音が止まった方向に棒を振る右手にズンと重みが加わる。

 マーフがいた方からは一定のリズムで床を蹴る音とともに、体に木剣が当たる鈍い音が聞こえる。

 スタンツが狼狽し叫ぶ。
「女と手負いのやつに負けるのかお前たちは!!」
「おおおおおおお」
 その檄に答えるかのように男たちが雄叫びを挙げる。

「そこまでだ!!!」
 突然レグルスの声がした。

「剣聖?」
 男たちが動揺しているのが伝わってくる。

「マーフ、ラグウェル大丈夫!!!」
 シャウラの声も聞こえる。

 その直後にカチャカチャと甲冑がぶつかり合う音が聞こえる。その音は20人前後はいそうな感じで男たちは一斉に武器を捨てたようでカランカランという音が聞こえてきた。

 おそらく甲冑姿の男が言ったのだろう。
「すげぇぇ50人は倒してやがる…」
 そう呟いたのが聞こえてくる。

 俺は全身に入れていた力がフッと抜けその場に座り込む。そして頭を傾けると何者かに頭を抱かれ、頭になにか柔なものが当たる。そして耳元でマーフの声が聞こえる。
「なにかっこつけてんのよ、私のせいで…こんなにボロボロになって」
「かっこつけてなんかねーよただの100人相手に勝てるかなってなって思っただけだから」
「それがかっこつけてるっていうのよでも…」

 シャウラの心配そうな声とマーフなにか言った声が被る
「ラグウェル!!マーフ!!」「あ……う」
「マーフなんて言ったの?」

シャウラは俺の姿を見たようで驚いたような声を挙げる。
「ひどい怪我じゃないか!」
「大丈夫だよ、1日寝たら治るから」
「そんな風にも見えないけど」
「大丈夫だって本人が言ってんだから」

 シャウラにそう言って安心させたつもりでマーフに話しかける。
「で、何んて言ったの?」
「このバカ!!って言ったのよ!!」
「まあバカじゃないと100人相手にしないわなアハハハ」

このバカっていったっけ?違うような気もするけどまあいいか。

 レグルスが俺に話しかけているようで声が聞こえる。
「ラグウェルくんには感謝してもしきれんな、もっとも私達が来なくても良かったみたいだがな」
「どうしてここに?」
「アリシア嬢から聞いてね、騎士団を連れて貧民街まで行くと入り口でシャウラ君がいてくれた」
「なるほど」
「もっとも私達の出番は殆どなかったようだがね」
「でも助かった…」
「後のことは私に任せてくれ、スタンツ・アタリアの所業についてもな」
「分かった。任せる」
 そう言って俺は右手を差し出し、レグルスと握手をした。
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